ヴォイドフェアリー(終劇)

手の平クルクル

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最初の勇気 𝐺𝑜𝑜𝑑 𝑚𝑜𝑟𝑛𝑖𝑛𝑔

サボり

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 結果から言えば間に合った。
 死ぬ気で漕いだのとトラックの急ブレーキが奇跡的に噛み合って追突はギリギリで避けられた。
 お陰でゲートが閉まる前に学校に突っ込む事が出来たが目撃者がいた。門を閉めていた体育教師だ。
 かくして水瀬悠真と小さな少女、リリャーカは体育教師の熱烈な怒号と共に職員室にぶち込まれた。
 しかもちょうどホームルームが終わったらしい担任も帰って来て事情を知ってダブルでの説教タイム。無論、遅刻扱いとなったし反省文の枚数が2桁枚数に増量となった。

 悠真が解放されたのは、それから暫く後。
 1時限目の授業が始まる10分前だった。

 教室に向かう足取りは重く、数歩歩く度にため息を吐きながら廊下を進む。

「……起こしてって言ったじゃん、リリャーカさぁ……」

 ぼやくと、胸ポケットがゴソゴソと動いた。
 次の瞬間、悠真の目の前に手のひらサイズの少女――妖精のリリャーカがひょいっと飛び出した。
 黒髪をセミロングにまとめた彼女は、小さな体にきちんと制服を着込み、背中には丸みを帯びた、つややかな羽を揺らしている。
 人懐こいというより、どこか呆れたような目で悠真を見上げた。

「なにさ、起こしてあげたってのに随分な言い草じゃない?」

 リリャーカは腕を組み、小さくため息をつく。

「アンタのお陰で私もお説教食らったんだから、ホントいい迷惑だと思わない? えぇ?」

 そうぼやきながら、リリャーカは悠真の肩に軽やかに腰を下ろした。

「悪かった、悪かったって」

 悠真が片手で彼女を支えつつ、苦笑混じりに謝る。
 それでも、教室へ向かう気力はわかなかった。
 そのまま無言で、階段の方へと歩き出す。

「また屋上に行っちゃうの?」

 リリャーカが呆れた声で問いかける。

「寝る。サボるわ。」

「アンタねぇ……」

 呆れ声を背に、悠真は人気のない屋上への階段を上がる。
 鍵は形だけで、今は開放されているのを知っていた。
 ドアを押し開けると、少し強めの風が顔に吹きつける。

 無言のまま屋上の隅、フェンス際にあるベンチまで歩き、倒れる様に寝転んだ。。
 リリャーカも「仕方ないなぁ……」と小さく呟きながら、悠真の制服の胸ポケットにするりと潜り込んだ。

「あんたって本当ダメ人間だよね」

「うるせーやい」

 悠真はそのまま目を閉じ、静かにまどろみ始めた。
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