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第2話 ゲームセンター山田 (コメディ回)
『私の戦闘力は53万です』とか言いそう
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仕切り直して――三本目【対戦パズル】
村井はパズルゲームが得意なようだった。さっさと席について、指を慣らすようにアーケードコントローラーをカチャカチャといじっていた。
その隣に、自信満々の面持ちで席につくクロウ。
それを視界の端で確認した村井は、プロアスリートのような動作で腕や肩を回して脱力をする。それから目を閉じて大きく深呼吸をした。
「……少しはやれるみたいだね」目を開き背筋を伸ばして、モニターを真っ直ぐに見つめながら言った。
「村井さんも“自信”……あるんですよね。“気配”で分かりました」クロウも彼女には目もくれず、指を鳴らしゲーム筐体とだけ向かい合う。
ふよふよとした可愛らしいスライムとは全く合わない雰囲気が漂う。
二人の目は合わないまま、メニュー画面から対戦という形式が選択されていった。
「やっとゲームセンターらしい楽しみ方になってきたね」
「ああ、この実力者同士がぶつかりあう前の緊張感は、たまらんな」
山田は最初からこれをやりたかった。それは心からゲームを楽しむこと。そして、対戦ゲームで楽しいのは勝つことだが、全力を出した上で『接戦』になった方が何倍も楽しいと山田は知っていた。
接戦であれば実は、負けても楽しかったりする。そんな感覚を彼女達に味わって欲しかった。
――レディ……ゴー!
カチャカチャカチャ!! 二人の素早い操作によってアーケードコントローラーが激しく音を鳴らす。
「ちょっ! あははは! めっちゃカチャカチャ言ってる」
「北原うっさい、かちゃすな! ……茶化すな!」
「あっはははは。『大乱闘』やってる時のキューブコントローラーよりうるさいよ」
北原のどこにツボが入ったか分からなかったが、大笑いをしながら村井と話す。それを見ていた山田は、楽しそうで微笑ましいと思っていた。
「シ、シホちゃん! かちゃかちゃ激しくしないで!」ガイアが言う。「うるさいですね……」激しく音を出しながらもクロウは返答する。
このやり取りで、今までは笑いを耐えていたクロウも、ガイアに誘われ笑い出してしまった。
しかし人の名前を使ってチノちゃんネタは最低だろと山田は思った。
三本目 ○●○チーム《北村》 ●○●チーム《ビギニング・オブ・ザ・ワールド》
「お前、名前は?」軽く息を整えながら、覚えておいてやるよ、と村井は満足そうに言った。
「光栄ですね、私は永田。みなさんからは――クロウと呼ばれています」彼も満足そうに言った。「……次は負けませんよ」
「『私の戦闘力は53万です』とか言いそう」北原はぼそっと呟く。
いつの間にか漫画のキャラクターみたいな口調になっているクロウに対して、そのつっこみはずるい。一同は失礼だと分かりながら隠すようにくすくすと笑っていた。
しかし山田は思い出していた。先程の、勝利した瞬間に立ち上がって、体を縮めるようにガッツポーズをした村井は本当に熱かった。
そしてポニーテールを振り回してうしろに振り返り、北原と力強くハイタッチをする光景は、山田が思い描いたゲームセンターの姿だった。
「ビギニング・オブ・ザ・ワールド。これが世界の始まりだ……」
「おっ山田大丈夫か、急に何を言ってるんだ?」
ガイアが思いっきり空気を冷やした。
続く
村井はパズルゲームが得意なようだった。さっさと席について、指を慣らすようにアーケードコントローラーをカチャカチャといじっていた。
その隣に、自信満々の面持ちで席につくクロウ。
それを視界の端で確認した村井は、プロアスリートのような動作で腕や肩を回して脱力をする。それから目を閉じて大きく深呼吸をした。
「……少しはやれるみたいだね」目を開き背筋を伸ばして、モニターを真っ直ぐに見つめながら言った。
「村井さんも“自信”……あるんですよね。“気配”で分かりました」クロウも彼女には目もくれず、指を鳴らしゲーム筐体とだけ向かい合う。
ふよふよとした可愛らしいスライムとは全く合わない雰囲気が漂う。
二人の目は合わないまま、メニュー画面から対戦という形式が選択されていった。
「やっとゲームセンターらしい楽しみ方になってきたね」
「ああ、この実力者同士がぶつかりあう前の緊張感は、たまらんな」
山田は最初からこれをやりたかった。それは心からゲームを楽しむこと。そして、対戦ゲームで楽しいのは勝つことだが、全力を出した上で『接戦』になった方が何倍も楽しいと山田は知っていた。
接戦であれば実は、負けても楽しかったりする。そんな感覚を彼女達に味わって欲しかった。
――レディ……ゴー!
カチャカチャカチャ!! 二人の素早い操作によってアーケードコントローラーが激しく音を鳴らす。
「ちょっ! あははは! めっちゃカチャカチャ言ってる」
「北原うっさい、かちゃすな! ……茶化すな!」
「あっはははは。『大乱闘』やってる時のキューブコントローラーよりうるさいよ」
北原のどこにツボが入ったか分からなかったが、大笑いをしながら村井と話す。それを見ていた山田は、楽しそうで微笑ましいと思っていた。
「シ、シホちゃん! かちゃかちゃ激しくしないで!」ガイアが言う。「うるさいですね……」激しく音を出しながらもクロウは返答する。
このやり取りで、今までは笑いを耐えていたクロウも、ガイアに誘われ笑い出してしまった。
しかし人の名前を使ってチノちゃんネタは最低だろと山田は思った。
三本目 ○●○チーム《北村》 ●○●チーム《ビギニング・オブ・ザ・ワールド》
「お前、名前は?」軽く息を整えながら、覚えておいてやるよ、と村井は満足そうに言った。
「光栄ですね、私は永田。みなさんからは――クロウと呼ばれています」彼も満足そうに言った。「……次は負けませんよ」
「『私の戦闘力は53万です』とか言いそう」北原はぼそっと呟く。
いつの間にか漫画のキャラクターみたいな口調になっているクロウに対して、そのつっこみはずるい。一同は失礼だと分かりながら隠すようにくすくすと笑っていた。
しかし山田は思い出していた。先程の、勝利した瞬間に立ち上がって、体を縮めるようにガッツポーズをした村井は本当に熱かった。
そしてポニーテールを振り回してうしろに振り返り、北原と力強くハイタッチをする光景は、山田が思い描いたゲームセンターの姿だった。
「ビギニング・オブ・ザ・ワールド。これが世界の始まりだ……」
「おっ山田大丈夫か、急に何を言ってるんだ?」
ガイアが思いっきり空気を冷やした。
続く
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