個人授業は放課後に

須藤慎弥

文字の大きさ
146 / 195
15

15一6※

しおりを挟む



   橘の中で、もうプレイらしきものが始まっているのだろうか。

   恥ずかしいから見るなと言っているのに、由宇が脱ごうとする様を瞬きもせずジッと見てきて恐怖だった。

   視線に耐えながら時間を掛けて制服のスラックスと下着を脱いでしまうと、橘はニヤリと笑ってまた由宇の腕を掴んだ。

   羞恥で赤面した由宇を見て、何とも嬉しそうに笑う。


「先生……恥ずかしいんだけど……」
「分かったから洗え」
「………………」


   ──これが人にものを頼む態度か。

   バスチェアにドカッと腰掛けた橘が、由宇に向かって三白眼を寄越し、「早く」と洗髪を急かす。


(先生に情緒ってもんはないのかよっ)


   由宇一人が舞い上がって照れているのがバカらしくなり、無心で頭を洗い終えた。

   橘はロン毛だった髪を切ったせいか、とても洗いやすかった。


「荒いな。  明日はもっと優しくやれ」


   立ち上がった橘に見下されてドキドキしながら、今日だけではないのかとスポンジを泡立てながら面食らう。


「明日……!?  俺明日も泊まんのっ?」
「手が治るまで看病しろ。  お前の親にはもう根回し済みだ」
「そんなぁぁっ」
「背中」
「…………はいはい」


   ビニール袋が巻かれた左手を前腕ごと壁について背中を向けられ、由宇は背伸びをして、泡立てたスポンジで肩から背中を少しずつ丁寧に擦っていく。

   慄く間も与えられず、荒い、と言われたので少し気を付けた。


(えーっと……)


   腰まで泡が到達し、由宇の動きが止まる。

   ……問題の下半身はどうするのだろう。


「手止まってんぞ」
「あっ、いや、あの……下は自分で洗ってよ」
「なんで」
「じ、自分で洗えるだろっ」
「スポンジ貸せ」
「あっ……!」


   モタモタしていた由宇の手からスポンジを奪った橘は、見事な手付きで自身を洗い始めた。

   何の苦もなさそうなそれに、わざわざ不慣れな由宇が駆り出される事は無かったように思う。


(なーんだ。  先生、自分で洗えんじゃん)


   あのゾーンを洗うなんて無理なので、自分の事は自分でしてもらおうと由宇は背を向けた。

   橘をほったらかした由宇はしゃがんで、読めない英語が書かれた四種類のボトルを見比べる。

   さっき橘の髪を洗うために使ったばかりなのに、どれがどれなのかもう忘れた。


(日本語で書いてほしいよなぁ、なんでこんなお洒落なもん使ってんの。  ふーすけ先生のくせにぃ)


   橘は「石鹸一つで事足りる」と言いそうなキャラなので、実際に石鹸だけで全身を洗っている姿を想像して吹き出した。


「何か面白い事書いてあんの」
「へっ?」


   洗い終えたらしい橘が背後から抱き竦めてきた。

   濡れている体を密着させられると、否応なしに心臓がうるさくなる。

   ドキドキして持っていたボトルを落としそうになった由宇の耳元で、橘がそれを指差しながらいつもの調子で囁いた。


「それ。  何て書いてあんだ」
「えぇっ?  先生、分からないで使ってたのっ?」
「あぁ。  たまにボディーソープで頭洗ったりとかしてんじゃね。  どれがどれか分かんねーし。  日本語で書けっつーの」
「う、ウケる……!  先生たまにド天然だよな!」
「あぁ?」
「ヒィっ!  ごめんなさいっ、そんな恐ろしい顔しないでよ!」
「誰が恐ろしい顔だコラ」
「わっ、やぁっ……っ!」


   ちょっと軽口を叩いただけで、橘の右手に由宇の性器を鷲掴まれた。

   驚いた拍子にぺたんと浴室の床に尻を付けると、そのまま背後からふにふにと性器を弄ばれてしまう。


「んっ……ちょっ、先生っ、やめ……っ!」
「前戯開始」
「……えっ……?  き、急に……っ!?」
「性欲は突然やって来る」
「やって来ないって……!  あっ、も、……っ……触んない、で……っ」


   耳たぶを甘噛みしながら由宇の性器を握る橘は、ひどく楽しげだ。

   顔を見なくても彼が今何を考えているか分かる。

   これでもかといやらしい行為に酔わせて、由宇を存分に泣かせてやろう。

   きっと、そんな意地悪な事を考えているに違いない。


「まだ扱いてねーのにビンビンじゃん。  俺に触られて喜んでんの」
「……っ!  い、言わない……でよっ……そんな!  や、やば、いって……先生、……っ」
「お前一回イくと眠くなんだっけ」
「……え、っ?  わ、分かんな……あっ……」
「去年イかせた時すぐ寝ちまったろ。  て事でイくの禁止な」
「えぇぇ……っ!  う、嘘……っ、もう、出そ、……なのに……っ」


   射精するのが禁止なら、触るのをやめてほしい。

   由宇の小ぶりな性器は、橘の長く綺麗な指で挟まれていて、しかもくにくにと動かして明らかに快感を引き出そうとしている。


(こ、これやめてくれたら、我慢出来るのにー……っっ)


「後ろ洗うか」
「んっ、……ちょっ、何、を……え、何っ?  なんでそんなとこ……!」


   性器への刺激が無くなって、詰めていた息を吐こうとした由宇の後孔に橘の指先が触れた。

   触れられた瞬間、ヒッと喉を鳴らす。

   何故そんなところを…?

   訳が分からない由宇が恐る恐る橘を振り返ると、悪魔は片方の唇の端だけを上げてニヤリと笑った。


「前戯開始っつったろ。  俺も未知だし、まぁ……予習だな」
「よ、予習……?  予習って……だ、だから何でそんなとこ触って……っ!」


   予習ならさっき玄関先でしたはずだ。

   あの深いキスよりもさらに上をいきそうな事態に、由宇の頬はたちまち熱を帯びて心が落ち着かない。


「ここに俺のを挿れるんだよ」
「────ッッ!?!?」



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

処理中です...