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さざ波
4※
しおりを挟む全裸で向き合うなんて恥ずかしくて、とても出来ない。
俺はずっと和彦の腕から逃がれようとしてたのに、力強い腕がそうはさせてくれなかった。
背後に居る和彦の体と密着させられて、二人して頭からシャワーの流水を浴びる姿は客観的に見ると何とも禁忌的だ。
「ちょっ……和彦、やめ……っ」
「…………」
言う事を聞かない和彦は黙ったまま俺の耳を食んで、猫を愛でるように顎を撫でたり乳首を摘んできたりして戯れを開始した。
腰を撫で回し、お腹や脇腹をするすると手のひらで辿ったあと、また乳首に戻ってくる。
ささやかで軽めな愛撫にも関わらず、それだけで膝が笑うくらい感じてしまって、俺は知らず知らずのうちに前のめりになった。
そうすると和彦のご立派なアレがお尻に触れて、それが何だか自分からやらしい事をせがんでいるみたいでドキっとした。
そんなつもりじゃなかったのに、「やる気満々に誘ってくれて嬉しいです」なんて誤解だらけでこっ恥ずかしいことを言われたら……俺は羞恥に殺される。
火照ったほっぺたの異常な熱を感じながら、名誉のために俺は、振り返って和彦に責任を押し付けた。
「そ、それを押し当てるなっ」
「あっ……もう……触っちゃダメですよ。うっかり出そうになります。不意打ちなんてヒドいじゃないですか」
「ちょっと触っただけじゃん! 握ったんなら分かるけど!」
「え、握ってくれるんですか?」
「えぇっ? ……に、握ってほしいの?」
他人のものなんか握れるか! と言うべきところを、俺は自らの発言に自分でビックリした。
振り返った時にほんのちょっとだけ触れてしまった和彦の性器は、俺のこじんまりしたものとは比べものにならなかった。
元気に勃ち上がったそれは、形も太さも長さもそして反り返り方も、羨ましいくらいに雄々しい。
握ってほしい、って言われたらどうするつもりなんだよ、俺。
調子に乗った和彦は、それだけに留まらずに平気で「舐めて」とか「咥えて」とか言ってくるぞ。
漫画の中では、相思相愛のカップルは羞恥心をも快感に変えていて、互いが気持ち良くなるように自然な流れで愛撫し合っていた。
あんなの俺には出来ない。
和彦に身を任せてる今ですら、すぐにでも意識を飛ばしたいと思ってるのに。
俺にはハードルが高過ぎるよ。……咥えるなんて。
「……やっぱりまだダメです。僕には刺激が強過ぎます」
「そう、そうだよな……っ、うん! 俺も咥えるのはまだ無理かなって……」
「咥えるっ? 咥えるってそんな……僕は握ってもらえるだけで嬉しいのに……七海さん、大胆ですね」
「えっ!? あ……、……んん、っ!」
勝手にグレードアップさせて恥をかいた俺の耳を、欲に火が灯った和彦の熱い吐息に犯される。
顎を取られて強引に上向かされて、唇を捕らわれた。
ふっくらとした温かい唇が触れ合った瞬間、恥ずかしいから嫌だと拒んでた対面がすんなりと出来てしまう。
容易く侵入してきた舌に口腔内を舐められると、羞恥よりも深い熱情に眩暈を覚えて、和彦の二の腕を持っていないと立っていられなかった。
「……ふっ、ん……っ」
嫌だ……バスルームは俺の声が反響する。
口内で蠢く和彦の舌に、俺のも頑張って絡ませてみるけどなかなかうまく出来ない。
めいっぱい口を開かされて舌を吸われると息が苦しくて、またクラクラと眩暈がした。
キスに夢中だった俺は、柔らかく腰を撫でていた手のひらが臀部へ移動した事でハッとする。
全身に甘い痺れが走るキスでうっかり誤魔化されてたけど、忘れちゃいけない。
和彦は、俺の孔を狙ってるんだった。
「……んっ、ま、待て……っ、本気……?」
「何がですか?」
顔を背けて無理やりキスを中断した俺に、少しだけ不機嫌な瞳が下りてくる。
その間も、和彦の悪戯な手のひらは俺のお尻をモミモミしていて気が抜けない。
ベッドの上で絶え間ない熱に浮かされて、されるがままに前戯をしてもらうのとは訳が違うんだ。
自慢にも何にもならないけど、俺は何年も自分でやってきた。
他人にやってもらうなんて考えた事も無かったから、和彦がこんなにノリノリな意味が分からない。
「俺、あれは自分でやる。だからあっち向いてて……」
「嫌です。僕がやります」
「いや、でもな、……っ」
言ってるそばからプッシュポンプを押してるけど、ほんとに洗浄の意味分かってんのか……っ?
引いてしまわないかとか、気持ち悪くないかなとか、俺は和彦が無理にやる気を出してるんじゃないかって心配なんだよ。
逃げ腰の俺を捕まえて、くるりと反転させて壁に手を付くように促される。
和彦の指先には、白い液体がすでに待機していた。
「どうしてそんなに拒むんですか? 僕……洗浄は初めてだから、上手には出来ないかもしれないって不安ですか?」
「お、俺より経験豊富なくせに何言ってんだっ」
たぶん……っていうか絶対、和彦は女の人としかした事がない。
孔を使った事があるなら話は別だけど、初めてだって言ってるから今までこんな準備なんて要らなかったに違いないんだ。
そんな不名誉な経験を俺がさせてしまうなんて、気が引けるに決まってるじゃん。
壁に付いた俺の手に和彦の手のひらが添えられて、指を絡ませてくる。
出しっぱなしのシャワーはそのままに、うなじを舐めて俺の興奮を煽る和彦の濡れた髪が肩に触れた。
「七海さん……それだと七海さんも少しは経験してるって聞こえますよ」
「経験って……そんなの……」
「……もしかして、……バニラセックスは経験あるんですか?」
「バ、バニラ……?」
何だっけ、バニラセックスって、何だったっけ……!
ぬるぬると割れ目に液体を塗り付けていた指先が、ぴたと止まる。
声がおっかない。
聞いた事はあってもそれの意味を知らなかった俺は、明らかな低い声に慄いて首を傾げながらじわりと振り返った。
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