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2.福山 悟
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話によると、ある日突然の父の閃きが無ければ、Fun Toyと競い合うどころか花咲グループの売上高の大半を占める玩具部門は撤退に追い込まれていたという。それは、実質の倒産を意味する。
部門設立から業界の五番手争いをしていたが、このままでは花咲グループはあっという間に廃れてしまう。何としてでも業界で生き残らなければと、二代目である父が意地を見せた。
千単位の社員らが路頭に迷う夢を毎夜見ていた父が心身に支障をきたしかけていたところ、ふと目に留まった手のひらサイズの古ぼけたロボット玩具。
毎日手入れをしていたりだとか、大切に保管していたとかそういうわけでもなく、成長するにつれ気に留めることもなかったそれは、五歳の頃に父の父から初めて貰った誕生日プレゼントだった。
それを手にした瞬間、父は懐かしい気持ちでいっぱいになったそうだ。
「これだ!」と閃き、すぐさま大人をターゲットにしたリバイバル系玩具の生産を開始。時代はITを駆使したプログラミング商品の需要が加速していたが、まさに逆転の発想が功を奏した形となった。
おかげで兄さんは、親戚中から計り知れない重さのプレッシャーをかけられ、俺に至ってはFun Toyの社長令息と同じ年齢だというだけで「負けるなよ」と謎に鼓舞されていた。
顔も名前も知らない相手と、生まれた時からライバル扱いされていい迷惑だった。
ところが、小学校二年時のクラス替え当日。
なんと件のそいつが俺と同じクラスになり、何の因果か俺の後ろの席に座っていたのだ。
『ボーッとたそがれてるとこ悪いんだけど、プリント後ろから集めろってさ』
『えっ? あぁ、ごめんね! すぐに集めるね!』
当時、一日の終わりには必ず復習も兼ねたミニテストが行われていた。
制限時間の十分でタイマーが鳴り、指示が無くとも最後尾の者が起立し前方に向かって一列みんなのプリントを集め、先生のところに持っていく。
それを担うのが〝そいつ〟だったのだが……。
『いつもぼんやりしててごめんね。おなかペコペコで頭が回んなくて』
戻ってきがてら、すまなそうにそう詫びるそいつこそが、周囲から勝手に俺のライバル認定されている福山 悟(ふくやま さとる)だった。
俺はその事実を知る前も、知った後も、悟に対しての印象は変わらなかった。
── コイツがFun Toyの時期社長? 冗談だろ。
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