必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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─聖南─



 麗々との最後のカップル撮影となった件のHotti発売日、聖南はその日自宅での作曲活動中だった。

 今までのCROWNの作曲担当者が、聖南の作った葉璃達へのデビュー曲を聴いて「もう一曲、どんなテーマでもいいからお願いできないかな」と頼まれての事である。

 何でだと聞いても、「いいからいいから」と押し切られてしまい、どんなテーマでもいいと言われてもそれが一番困ると思いながらピアノに向かっていた。

 誰かに書き下ろすにしても、CROWNと葉璃達以外に作るのは気が進まず、一向にメロディーは浮かんでこない。

 このままここで無駄に時間を過ごすくらいなら、今葉璃はレッスンの真っ只中だろうし事務所に出向いてみようかと立ち上がった、ちょうどその時。

 成田から着信がきた。


『おいセナ!  麗々との件、穏便に解決してくれたんだなぁ!  俺感動しちゃったよ!』
「あ?」


 通話を開始するなり、成田はやや興奮気味に妙な事を言うので眉を顰める。

 聖南は眼鏡を外して目頭を押さえ、コーヒーを一口啜った。


「穏便になんてした覚えないけど」
『え?  だって今日Hotti発売日だけど、セナ達の写真載ってるよ』
「あぁ、それはいいんだよ。  カップル撮影は今月分で最後って事になってるから。  麗々は来月独りの撮りで最後のはずだ。  Hottiに関しては俺もまだ今度どうするか決め兼ねてる」


 聖南は幾度も出版社と話し合ったが、やはり記事の差し替えには至れなかった。

 それは聖南の問題というよりも、差し替えに伴う多額のお金を出版社が負担しなければならない事、そして掲載の洋服ブランド側が差し替えに相当に難色を示した事により、これは聖南の気持ちだけの問題では解決出来ないという結論に至った。


『いやぁ、それでも、聖南は譲歩した方だよ。  大人の対応してくれて助かった』
「仕方なかったんだよ。  色々問題あってな。  葉璃から言われた通りにやったらこうなったってだけだ」
『セナに意見できるなんて、葉璃君は本当にたいしたもんだよ!  しかもそれがセナのためにもなっているし』
「だろ。  葉璃最高だよな。  あ、成田さん、Hotti手元にあんなら事務所に置いといてくんない?  俺あとでそっち寄るから」
『分かった。  じゃまた明日、局でな』


 成田と通話を終えた聖南は、飲み干したコーヒーのマグカップをキッチンで洗い、歯磨きをした。

 長く世話になっている出版社を巻き込んで悪いとは思いつつも、今後の麗々とのカップル撮影を無しにするならとの聖南の意見は通り、今月号は勘弁してやった。

 突然のカップル解消が読者に疑念を与えぬよう、麗々の独り撮りにて彼女のHottiでのモデル活動は終了する。

 その後の事など聖南の知った事ではないが、競争激しい出版社とて噂は各々広まるため、麗々が今後モデルとして雑誌に載る機会はそうそう無いであろう。

 それさえ叶えば聖南の溜飲も下がる。

 麗々のした事がどうしても許せず、すべてを無しにしてやると息巻いていた聖南であったが、アキラ達の謎の飲み会にやって来た葉璃と自宅で愛し合った後、穏やかにかつ厳しく諭された。

 聖南の怒りは分かるけれど、周りになるべく迷惑を掛けず麗々だけを懲らしめるようにしなければ、聖南にとっても良くない方向に向かう、と。


「他なんてぶっちゃけどうでもいんだけどな……」


 葉璃はひたすら、聖南に悪い風が吹かないようにしてと言い続けていた。

 聖南は、葉璃さえ良ければ自分がどうなろうが構わないと思っていたけれど、それでは駄目だとそれはもうこんこんと力説され、力強い瞳に打ち負かされた形だ。

 愛する葉璃は、聖南を第一に思っているのだと分かるそれに納得せざるを得なかった。

 これからの葉璃の芸能生活を脅かすかもしれない存在を、聖南が納得するまで……本当の意味で断罪出来なかったのは、可愛い恋人の真っ当な意見ゆえである。




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