必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
316 / 541
48❥

48❥

しおりを挟む
─聖南─



 聖南の可愛い恋人が、助手席で完全に寝入ってしまっている。

 乗った瞬間から目を擦り始めたので、眠いのだろうと思ってはいたが、発進して数秒後には首を変な方向に向けて夢の世界へと旅立ってしまった。

 聖南は一度ハザードを付けて路肩へ停め、キョロキョロと辺りを見回してマスコミが居ない事を確認すると、一旦降車し葉璃を後部座席へと運んだ。


『……アキラの匂いすんのだけは許せねぇけど』


 運ぶ際に、葉璃からは学生の頃からアキラが愛用しているキャロライナヘレラの香水の香りがして、それがやけに鼻をついた。

 やたらとアキラに懐いている葉璃は、先程も率先して散歩に連れ出していた。

 葉璃にとってはとても聞いていられないような話をケイタとしていたのは悪かったが、それがたとえアキラ相手でも、他の男とのイチャイチャを目の前で見せられればムカつくのはしょうがなかった。

 解せない。 非常に、解せない。


『……父親との事とかどうでもよくなっちまったよ……』


 たった数時間前まで、過去の事をほじくり返してとどめを刺してきた父親に愕然とし、心の中ですべて終わったと嘆いていたはずなのに。

 今は葉璃の事で頭がいっぱいだった。

 葉璃の挙動一つ一つが、良くも悪くも聖南の心を乱す。

 それもこれも、この先もこの人しか居ないと思える葉璃だからだ。


「よく寝てんな」


 自宅駐車場に到着しても起きる気配のない葉璃を見ると、赤ん坊の寝顔で安らぐ親のような温かな心境になった。

 しかしながら匂いが鼻に付く。

 聖南の香りではない葉璃を抱えて、周囲に気を配りながら自宅へと入った。

 その足でバスルームに行き、他の男の匂いにまみれた葉璃を全裸に剥いていると、ようやく愛しの恋人が目を覚ます。


「ん……さむっ……」


 小さく呟いて葉璃は、全裸になったと同時に聖南に抱き付いた。

 躊躇なく縋ってもらえて嬉しい反面、嫉妬心は抑えきれない。


「立てる? 俺も脱ぐから先にシャワー浴びてて」
「……あれ、いつの間に着いて……」


 寝ぼけ眼で聖南をチラと見た葉璃が、「ん?」と首を傾げながらシャワーを浴び始めた事で聖南も急いで衣服を脱ぎ去った。

 ───早くその匂いを落とせ。

 そう言ってしまわなかった自分を褒めてやりながら、寝起きであまり頭が働いていない葉璃の洗髪を見守る。

 力なくワシャワシャと髪を洗っているが、先程からまったく意味のない行動を取っている。

 出しっぱなしのシャワーの下、シャンプーが泡立ったそばからそれは温水で流れていき、はっきり言って何の意味もない。


『あー……かわいー』


 毎回葉璃と会う度に思うが、葉璃は可愛いフェロモンでも体内に常備しているのだろうか。

 行動一つ取っても可愛い。

 小さくて華奢で、真っ白な素肌は未だに触れる事を躊躇うほどに危うげだ。

 ゆっくり背後からその大好きな体を抱き締めた聖南は、少しだけシャワーからずれて葉璃を振り向かせ、唇を奪う。


「……んっ……」
「葉璃、舌」
「……ぁ……ん……ふっ……ん……っ」


 もはや何の抵抗もなく舌を舐めさせてくれる。 聖南の舌を喜んで受け入れて、自身と絡ませて快感を共有しようとしてくれる。

 甘い吐息を溢しながら聖南の舌で遊ぶ葉璃の表情は、とても高校生には見えないくらいに悩ましくていやらしい。


『かわいーの垂れ流しすんなっつの』


 寝ぼけている葉璃は積極的に聖南の首元に腕を回し、もっと深い口付けを求めてきた。

 色付いた頬が可愛い。

 短い舌で頑張るいじらしさが可愛い。

 キスの合間に漏らす甘過ぎる声が可愛い。

 ピンと背伸びした姿を客観的に見たいと思いながら、聖南はしっかりと任務をこなした。

 華奢な腰を抱いて悟られぬようにし、シャワーのお湯を葉璃の首と背中にかけ続ける。

 聖南ではない匂いは消えてくれた事でようやく気持ちが落ち着いてきた聖南は、葉璃の口腔内を目一杯蹂躙する。

 聖南のキスを受け入れる葉璃の唇の端から、どちらのものとも分からない唾液がとろりと溢れた。

 それを舐め取って至近距離でニッと笑ってやると、たちまち色付いた頬の色味が増す事を知る聖南はこれ以上ないほど幸せだった。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...