必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 聖南が目の前に次々とお弁当を置いてくるから、食べなきゃいけないのかと思って三つとも平らげるとアキラさんとケイタさんにめちゃくちゃ驚かれた。


「ハルすげぇな!! マジでそれ三つ食ったの!?」
「無理したんじゃない? 猛獣がうさぎを太らせようとしてるようにしか見えないんだけど」
「葉璃は食うって言ったじゃん。 夜だけかと思ったら昼も食えんだな、かわいー」


 これでもまだお腹いっぱいにはなってないけど、夜まで何も食べなくても大丈夫そうだ。

 お弁当三つ食べるって、そんなに驚く事なのかな……?

 よく食べる方だって自覚はあるけど、人よりちょっと多いかなってくらい……のはず。

 そういえば、家のごはん茶碗は俺のだけ家族の誰よりも大きいけど……単に俺が食べ盛りだから母さんが気を利かせてくれただけかと思ってた。

 アキラさんとケイタさんの反応と、いつも「すげぇ」と言ってくる聖南の感心する声を思い出すと……もしかして違うの?


「そんな驚きます!? まだ入りますけど、でももうご飯は要らないです。 観覧終わったらデザート食べて来ます。 聖南さん、この近くにお客さんの少ないカフェないですか?」


 やっぱり人より食べる方なのかもって半信半疑ながら、ご飯は満足したから甘いものが欲しくなって着替えてる途中の聖南に問い掛けた。

 するとまたもやアキラさんとケイタさんが大袈裟なくらい驚いている。


「デザート!? てか、まだ入りますって言った?」
「客の少ないカフェって何っ? 面白い…!」


 それは……俺一人で行くからには極力人の少ないお店がいいなって思ったからで……。

 店員さんに注文するのさえ緊張するのに、お客さんいっぱいのお店に一人で入って行けるわけない。

 ダークブルーの細身のスーツに着替えた聖南がさっきの椅子に腰掛けて、甘いカフェオレの入ったペットボトルを手渡してくれた。


「終わるまで待ってろよ。 待てねぇなら買ってきてやる」
「えっ、ダメですよ! 聖南さん仕事中なのに行かせられません。 自分で行ってきます」
「客の少ないカフェがこの辺にないから言ってんの。 この後スタジオも行くからデザートはそん時に食べような。 だから一人でウロウロすんなよ」
「えー……すぐ食べたいのに……」
「すぐ食べたい? 買ってくる」


 俺の呟きに立ち上がった聖南は、ほんとに衣装のまま楽屋を出て行こうとした。

 違う違う、俺が一人ででも入れそうな店を教えてくれたら良いだけだってば!

 聖南を行かせたくて呟いたわけじゃない。


「いやいやセナ、もう打ち合わせ行かないと」
「あぁ? でも葉璃がすぐ食べてぇって言ってる」
「ウソウソ! 嘘です! すぐ食べたくないから早く打ち合わせ行って下さい!」
「…………すぐ戻る」
「ハル君、生始まる時呼びに来てあげるね」
「スタッフと紛れててもいいし、客席で観ててもいいからな。 ハルの好きな方で」
「はい、ありがとうございます!」


 ウソ、って言った俺を疑ったまま、アキラさんに背中を押された聖南はデザートを買いに行くのを渋々諦めて楽屋を出て行った。

 CROWNの楽屋は、毎回思うけどとても広い。

 その広い楽屋でひとりぼっちになってしまった俺は、お弁当の横にあったお菓子に手を伸ばす。

 パンケーキとかパフェとかガッツリな甘味を欲してたけど、一人で知らないところを出歩くのも嫌で大人しくその場に居た。

 打ち合わせが終わると、ほんとにケイタさんが呼びに来てくれて、「セナはプロデューサーに捕まってる」と聞いてもないのにそう教えてくれた。

 俺が不安がるって思って言ってくれてるって分かるから、ケイタさんも、もちろんアキラさんも、なんでそんなに優しいんだろって会う度に感動する。

 ケイタさんに連れられて観覧席の一番後ろの端に腰掛けた俺は、生放送終了まで番組を……いや、聖南を見ていた。

 今やその人気は紛う事なく不動のもので、CROWNが登場するなり観覧席から悲鳴のような声が上がっていて思わずピクッと身体を揺らしてしまう。

 番組ラストで三人が今週末から始まるツアーの告知をしてたけど、追加公演を含む全公演SOLD OUTって聞いてるから告知は要らないんじゃないかなって思ってしまった、まだまだ素人感覚な俺だ。


「すごい人気だな……」


 CROWNの三人は少しずつ色味の違うスーツ姿で今日もみんなをキャーキャー言わせ、話の達者な聖南が番組を一際盛り上げて終了した。

 三人とも違う個性を持ってて、三者三様の整った顔立ちと華やかな経歴はCROWNの格をグーンと上げている。

 アキラさんはドラマや映画、舞台に引っ張りだこだし、ケイタさんもアキラさんと同じく役者としての傍ら振付師としても大活躍してるみたい。

 聖南は言わずもがなで、CROWNや俺達ETOILEへの楽曲提供、モデル活動、そしてツアー後から本格的に始動するミュージカルと三人とも大忙しな日々を送っている。

 毎日会うわけじゃないみたいだけど、喧嘩になりようがないってくらい三人は仲良しで絆が深いから、見ていると俺も幸せな気持ちになれる。

 聖南に出会うまでCROWNそのものを知らなかった俺が、今こうして見てるだけじゃなく三人ともと話が出来ているなんて、まだどこか信じられない気持ちだ。

 去年の今頃は考えてもみなかった大きな舞台へ羽ばたくきっかけを作ってくれた聖南には、追い付かないながらに背中を追い掛けさせてほしい。

 そして二人っきりになったら、優しくて甘えん坊な聖南に変身して俺をいつまでもときめかせていてほしい。

 俺にとって最初で最後な愛すべき人が、あんなにも素敵な人だとつい逃げ腰になるけど……。

 俺も聖南が大好きだから、もう逃げないよ。

 受け止めきれないほど甘い甘い気持ちをくれる分だけ、聖南への好きは膨らんでるから───。





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