必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 会いたい気持ちは募るばかりだけど、俺が学校で中間考査が始まった事を伝えると、やっぱり聖南は「会いに来ちゃダメ」の一点張りだった。

 学業を優先しろってのもあるけど、今行ってもまだ外にはマスコミが居るから俺のストレスになるかもしれないって聖南は言ってた。


「そんなの気にしないのに……」


 俺だけじゃなく、聖南にも同様にストレスなんだろうなって思うと簡単にワガママも言えない。

 今は落ち着きつつある聖南バッシングも、先週まではひどい加熱っぷりだったと春香も心配していて、そんな状況下で聖南自身が一番大変な思いをしてるって想像出来るから。

 毎日律儀に、俺を不安にさせないよう連絡をくれる聖南に感謝しながら、聖南との甘酸っぱい時間が早く訪れないかと心待ちにしてる。

 中間考査も終わって気の抜けた土曜日。

 聖南の言いつけを守って、ちゃんと毎日勉強して取り組んだ試験はなかなかうまくいったように思う……なんて自己採点していると、ふと春香の声がした。


「葉璃ー。佐々木さん来たよー」


 ── ヤバイ、もう来たの。

 春香が、佐々木さんが俺の事を好きだなんて爆弾発言してから、意識し始めたからなのか妙に会う回数が増えてきてる気がして困惑していた。

 その全部が俺に用事があるわけじゃなくて、春香と親に事務所との契約の話があって自宅に来るとか、ダンススクールに様子を見に来るとか、今までと同じで何も気にしなかったら引っ掛かりもしない出来事なんだけど。

 春香の冗談を聞いた後だと、いちいち佐々木さんの視線が気になってくる。

 今日これから佐々木さんとランチに行くんだけど、それも聖南の家に行ったあの日曜から毎週末のように誘いがきてて、春香の手前断り続けるわけにもいかないし、とりあえずOKしたんだ。

 きっとまたデビューの話をされそうで全然気は進まないけど、春香がお世話になってるから、渋々階段を下りる。


「おはよう、葉璃」
「おはようございます」
「行こうか。じゃあまたスクールでな、春香」
「はーい」


 玄関の物陰からこっそり俺らを覗いていた春香に気付いて手を振る佐々木さんは、自前の真っ黒のセダンに俺をエスコートした。

 助手席に落ち着くと、よくない考えが浮かんでくる。

 だって……普通、ランチに行くなら春香も一緒に誘うよね…?とか思い始めると、また変な方向に思考回路がいっちゃいそうで慌てて首を振る。

 俺がシートベルトを締めるとすぐに走り始め、信号待ちで佐々木さんがいつもの無表情で「何が食べたい?」と聞いてきたんだけど……。


「うーん。どこも混んでそうですよね」
「土曜日の昼時だしね。ちょっとドライブして時間ずらしてからお昼にする?」
「え、あ……はい。いいですよ」


 ドライブという言葉に、今日一日が長くなりそうな気配がして無意識に「えー」と不満たらたらな声を上げそうになった。

 佐々木さんが嫌なわけじゃ決してないんだけど、どうしても春香の台詞がよぎってしまう。

 ……ダメだな、俺。

 あんなのただの冗談なんだから、直接確かめたわけでもないのに妙に気にしてたら佐々木さんに悪い。

 俺の家を出発して四十分ほど経ってから街の中心部までやって来ると、見覚えのある景色に窓の外を凝視した。

 あ……この辺じゃなかったっけ、聖南が住んでるマンション……。

 一際目立つ高層マンションを見付けて、あれだ!と内心興奮した。

 聖南……元気かなぁ。

 今日はまだメッセージを交わしてないから、ちょっとだけ寂しいや。


「……セナさんまだ追われてるね」


 ここセナさんの自宅だよね、と佐々木さんが苦笑した事で、すでに俺がこの場所を知ってると読んでの発言に俺も苦笑だけで返しておいた。

 マンションを通過しながら、依然として張り続けている数人のマスコミを目の当たりにすると、聖南が来ちゃダメって言ってた意味が分かった気がした。



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