必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 雷に打たれたような衝撃が体に走ったのが分かる。

 ── 聖南に抱かれた事があるんだ、あの人達は。

 無茶苦茶してたって聖南本人が言ってたし、俺も聖南が清いはずはないってちゃんと分かってたのに、実際にあの話をしていた彼女達を見ると物凄くリアルに想像してしまった。

 美しくて、世の女性達に憧れられるようなスタイルを持った彼女たちの他にも、もしかしてまだまだたくさんの過去があるんだろうか。


「………………」


 俺を目一杯好きでいてくれてる聖南の過去なんか知ったところで、そんなのどうでもいいって、なんであんなに強気でいられたんだろ。

 チビでなんの取り柄もない、無口で陰気で、ちょっと中性的な顔しただけの紛れもなく男である俺が、この世界にいるどの女性にも勝るなんてあり得ない。

 ……何だか、怖くなってきた。

 今すでにどうしようもなく大好きなのに、これ以上聖南への好きが膨らみまくったらどうしたらいいの。

 もし、「俺やっぱ男無理だ」って冷たい顔して捨てられたら、俺は一体どうなっちゃうんだろう。

 考えただけでも恐ろしくて、途端に寒気がし始めた。

 狼狽えたまま、どれだけ硬直してたか分からない。

 しばらくボーッと外を眺めていると、いきなりポンっと肩を叩かれて死ぬほどビックリした。


「!?!?」
「ごめんごめん! そんなに驚くとは。やっぱハルだ、久しぶり」


 驚きすぎて目を丸くする俺の前に腰掛けたのは、なんとあのアキラさんだった。


「お、お久しぶりです……」
「元気だった?」
「はい、なんとか。……アキラさん、お仕事ですか?」
「そう、ドラマの打ち合わせ。まさかと思って近付いてみたらハルだったからビックリ。今日はどうしたんだ?」
「あ、いや……」


 打ち合わせとの事でこの前と同じようなラフな格好のアキラさんは、俺と聖南の仲を知ってるはずなのに今日も変わらず気さくに話してくれる。

 俺がどうしてここにいるのか、不思議がるのも当然だった。

 マネージャーさんの仕事でついて来ましたって言うと少し語弊があるような気がして、どう言うべきか迷っているとちょうどいいタイミングで佐々木さんが小走りで戻って来た。

 いつもの様にうまく説明してくれると期待して、俺は安心して黙っとこう。


「ごめんね葉璃、待たせたね。……おや、どなたかと思えばアキラさんじゃないですか、お疲れ様です。打ち合わせですか?」


 セカンドバッグにタブレットを直しながら、俺の向かいに座るアキラさんに気付いて佐々木さんが一礼した。

 そんな佐々木さんと俺を交互に見て、


「お疲れっす。memoryのマネージャー? なんでハルとマネージャーが?」


と訝しむアキラさんの視線が何だか痛い。

 memoryと俺の関係をアキラさんが知ってるのか分からないけど、どうもよくない誤解をされていそうな図に居心地が悪かった。


「プライベートなもので、勘弁してください。葉璃行こうか、評判いい店予約取れたよ」
「あ、あの……」
「……プライベート? どういう事?」
「ご想像におまかせします。それでは、失礼します」


 佐々木さんはアキラさんの問いをゆるやかに無視して俺の手を取ると、エレベーターへ急いだ。

 期待してたフォローのないまま、そそくさと立ち去る俺達を眉を顰めて見てくるアキラさんに、振り返りざまにペコッと頭を下げておいた。

 何もやましい事はないけど、この事をすぐにでも聖南の耳に入れそうなアキラさんに、佐々木さんといる所は見られたくなかった。

 なんでこう、よくない事は重なるのかなぁ……。

 まさかアキラさんと鉢合わせしちゃうなんて……。



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