72 / 541
16❥
16❥2
アキラから連絡を貰った聖南はその時、自宅でパソコンをいじりながら優雅に紅茶を飲んでいた。
まだ暗いうちから起き出し、お昼時を過ぎた事にも気付かないほど熱中していたのは、CROWN初のラブソング用の作曲作業だった。
詞はあくまでも抽象的に、恋する者すべてに共感を得られるように売り上げも考慮しながら綿密に考えた。
電子ピアノとギターを駆使して創り上げていたメロディーは、CROWNとしての意外性も併せ持った濃厚な作品が出来上がりつつあった。
葉璃との日々の何気ないやり取りが聖南を支え、謹慎後の活動への目論見も具体化し始めていて、今まで生きてきた中で本当に毎日が充実した素晴らしい時間を過ごせていた。
その矢先に、不吉な連絡が入ったのである。
「─── アキラ? どした?」
『memoryのマネージャーとハルってどんな関係なんだ?』
突然用件から入ったアキラは、電話の向こうで少々落ち着かない様子だった。
そして聖南も、その一言で不穏な話を聞かされそうだとピンときて、飲んでいた紅茶のティーカップを静かにデスクに置いた。
「なんで?」
『今来クールのドラマ打ち合わせ来てんだけど、二人が居たんだよ。予約取れたよ、とか言ってたから、メシ行ったんじゃねぇかな? セナ知ってた?』
「…………知らねぇ」
『あ、マジ? な、なら知らせといて良かったよな。じゃまたな』
聖南の声色に、長年の付き合いであるアキラもヤバイと感じたのか早々に電話を終了させた。
聖南はこんなにも葉璃に会いたい気持ちを我慢しているというのに、なぜあの眼鏡マネージャーと葉璃が仲良く食事になど行っているのか。
だがそれは葉璃が行くと言わなければ成立しない事であり、聖南の怒りは葉璃にも向かった。
起動中のパソコンも飲みかけの紅茶もそのままに、聖南は車のキーとスマホ、財布だけを持って家を飛び出した。
今日に限って、仕事に熱中していて連絡を取り合っていなかった自身をも恨んだが、エレベーター内で葉璃に電話を掛けても電源が入っておらず繋がらない。
「チッ。いつも切ってやがんな」
学校での癖なのか分からないが、葉璃は集中したい時はスマホを電源から落とすため連絡が取れない事がしばしばあった。
試験勉強中、家族と外食中、そんなものは許容範囲内だが、今は確実に切っていていいはずがない。
葉璃がたとえ軽いノリで佐々木と食事に行ったとしても、聖南の中では許せる範囲を大きく越えていた。
何しろ佐々木は葉璃に気がありそうで、一時は聖南と葉璃が会わないようにしていた前科もあるため要注意人物なのだ。
その佐々木が、休日である土曜日に葉璃を連れ出し食事に誘うなど何かあるに決まっている。
二人が並んで食事をする姿を想像すると腸が煮えくり返り、グツグツと沸騰した。
── ……クソッ……。
連絡が付かない葉璃の自宅前で帰宅を待っていた聖南の中で、嫉妬という時限を超えて怒りに変わり始めた時、黒のセダンが向こうからやって来た。
紛うことなく佐々木と葉璃で、車内の二人の姿をその目で直に見た瞬間、聖南の中で何かが弾けた。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
王様お許しください
nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。
気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。
性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21)
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです
一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお)
同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。
時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。
僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。
本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。
だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。
なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。
「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」
ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。
僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。
その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。
悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。
え?葛城くんが目の前に!?
どうしよう、人生最大のピンチだ!!
✤✤
「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。
全年齢向けの作品となっています。
一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。
✤✤