必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 アキラから連絡を貰った聖南はその時、自宅でパソコンをいじりながら優雅に紅茶を飲んでいた。

 まだ暗いうちから起き出し、お昼時を過ぎた事にも気付かないほど熱中していたのは、CROWN初のラブソング用の作曲作業だった。

 詞はあくまでも抽象的に、恋する者すべてに共感を得られるように売り上げも考慮しながら綿密に考えた。

 電子ピアノとギターを駆使して創り上げていたメロディーは、CROWNとしての意外性も併せ持った濃厚な作品が出来上がりつつあった。

 葉璃との日々の何気ないやり取りが聖南を支え、謹慎後の活動への目論見も具体化し始めていて、今まで生きてきた中で本当に毎日が充実した素晴らしい時間を過ごせていた。

 その矢先に、不吉な連絡が入ったのである。


「───  アキラ? どした?」
『memoryのマネージャーとハルってどんな関係なんだ?』


 突然用件から入ったアキラは、電話の向こうで少々落ち着かない様子だった。

 そして聖南も、その一言で不穏な話を聞かされそうだとピンときて、飲んでいた紅茶のティーカップを静かにデスクに置いた。


「なんで?」
『今来クールのドラマ打ち合わせ来てんだけど、二人が居たんだよ。予約取れたよ、とか言ってたから、メシ行ったんじゃねぇかな? セナ知ってた?』
「…………知らねぇ」
『あ、マジ? な、なら知らせといて良かったよな。じゃまたな』


 聖南の声色に、長年の付き合いであるアキラもヤバイと感じたのか早々に電話を終了させた。

 聖南はこんなにも葉璃に会いたい気持ちを我慢しているというのに、なぜあの眼鏡マネージャーと葉璃が仲良く食事になど行っているのか。

 だがそれは葉璃が行くと言わなければ成立しない事であり、聖南の怒りは葉璃にも向かった。

 起動中のパソコンも飲みかけの紅茶もそのままに、聖南は車のキーとスマホ、財布だけを持って家を飛び出した。

 今日に限って、仕事に熱中していて連絡を取り合っていなかった自身をも恨んだが、エレベーター内で葉璃に電話を掛けても電源が入っておらず繋がらない。


「チッ。いつも切ってやがんな」


 学校での癖なのか分からないが、葉璃は集中したい時はスマホを電源から落とすため連絡が取れない事がしばしばあった。

 試験勉強中、家族と外食中、そんなものは許容範囲内だが、今は確実に切っていていいはずがない。

 葉璃がたとえ軽いノリで佐々木と食事に行ったとしても、聖南の中では許せる範囲を大きく越えていた。

 何しろ佐々木は葉璃に気がありそうで、一時は聖南と葉璃が会わないようにしていた前科もあるため要注意人物なのだ。

 その佐々木が、休日である土曜日に葉璃を連れ出し食事に誘うなど何かあるに決まっている。

 二人が並んで食事をする姿を想像すると腸が煮えくり返り、グツグツと沸騰した。


 ── ……クソッ……。


 連絡が付かない葉璃の自宅前で帰宅を待っていた聖南の中で、嫉妬という時限を超えて怒りに変わり始めた時、黒のセダンが向こうからやって来た。

 紛うことなく佐々木と葉璃で、車内の二人の姿をその目で直に見た瞬間、聖南の中で何かが弾けた。



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