必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 ── 何回イかされたんだろ、俺。

 聖南は三回……? いや、もっとなのかな。

 俺は途中意識を飛ばした時もあったから、どれだけの時間エッチしてたのか想像もつかなかった。

 最後は精液すら出なくなった俺の大事なところは、突然の快楽の連続にクタクタだ。

 一緒にお風呂に入ったところまでは覚えてる。

 聖南が俺の孔に指を入れてローションを掻き出す手付きにまた喘がされて、しかも「挿れたい」って囁かれたから忘れるはずない。

 そこから今に至るまではまったく記憶になくて、目覚めても顔や指先を動かすのすら億劫だった。

 間近で眠る聖南は物凄くスッキリした様にスヤスヤと眠っていて、外が明るくなり始めた室内に優しい光が射し込んでいる。

 ……ここに来たのは夕方だったはず。

 あれからぶっ通しであんな事やこんな事をやってたのかってビックリだけど、背中や腰の鈍痛と、お尻にまだ聖南のが入ってるような感覚、そして喉の痛みが何もかもを如実に表していた。

 聖南は……気持ち良かったかな。

 あんなに何回もするくらいだから、多分、気持ち良かった……はず。

 俺も最初は怖くてたまんなかったけど、最後の方なんか聖南にもっとってせがんでしまったような消したい記憶もあって。

 気持ち良くて、このままずっと愛されてたいって強く望んでしまったけど…… 一回エッチしたから、これで終わりだ。

 俺はもう、聖南に、用無しだって言われる覚悟をしないといけない。

 嬉しい言葉をたくさん聞けて、目一杯抱き締めてくれて、全身で愛してくれて……こんなにも幸せな気持ちなのは生まれて初めてかもしれなかった。

 俺は俺のままでいいんだって、ちゃんと言ってくれたのは聖南が初めてだったから。

 そんな聖南の重荷にはなりたくない。

 考えるまでもなく、聖南の想いは一過性。

 そう聖南が気付いてしまった時、俺はきっと立ち直れなくなっちゃうから、このまま楽しくて幸せな思い出で終わらせるのが一番だと思う。

 逃げではなく、身を引く。

 尤もらしい言葉を見付けると、俺の卑屈さも正当化できる気がした。

 指を動かすのも億劫だけど、体中の鈍い痛みを堪えながら俺はゆっくり上体を起こした。

 腕枕から俺の気配がなくなって、聖南もすぐに目を覚ます。


「どこ行くの」
「あ、トイレ……」
「付いてく」
「い、いいですってば! それはさすがに恥ずかしいです!」
「……すぐ戻れよ」
「………………はい」


 俺の返事に安心したのか、一晩中運動して疲れてる様子で、また安らかに寝息を立て始めたのを確認すると、真っ裸だった俺はハンガーに掛けられた服を大急ぎで着た。

 脱ぎ散らかしてたのに(正確には聖南に脱がされて放られた)、俺が知らないうちに聖南が掛けてくれてたみたいで、意外にマメなんだなと笑う。

 トイレに行くフリをして寝室から出ると、ふとリビングが視界に入って立ち止まった。

 生活感の無いだだっ広い空間に、大きなコーナーソファ、正面には特大の大型テレビ。

 甘いコーヒーを聖南自ら作ってくれたキッチンも最低限のものしか置かれていなくて、食事はいつもどうしてるんだろって疑問を抱いた。

 ……そんなの、俺にはもう関係ないけど。

 何だかこうして聖南の存在を感じていると、前と同じでずっとここに居たいと思ってしまう。

 でも、ダメだ。

 聖南の想いは、気持ちは、言葉は、俺を舞い上がらせるだけ舞い上がらせて、離れてくかもしれないんだ。

 「一回だけ」の彼女達と、同じ気持ちでいなきゃ俺は……情けなく聖南に縋ってしまいそうで怖い。

 なんたって、俺が好きになった人は、トップアイドル様。

 キラキラした眩しい世界で生きている人だ。

 俺には相応しくない。 何もかも。




 俺は静かに玄関を出た。

 二度とここには来ないと誓って。









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