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普通の驚き方ではない聖南の様子を見て、何やら知っている顔で期待を込めて社長が切り出す。
「うちの事務所のレッスン生徒である、宮下恭也という者とユニットを組ませたい。この者は私自らの見立てだ。な、セナ。倉田葉璃を何とか説得してみてくれないか」
「……なっ、は? ちょっ……えっ?」
「CROWN以来の男性ユニットだからな、事務所としても大々的に売り出す予定だ。それに伴い多くの人と多額の金が動く。デビュー曲諸々、CROWNの全面バックアップも重ねてお願いしたい」
それでCROWNの三人が呼ばれたんだー!などと、意気揚々な者は誰一人居なかった。
聖南と葉璃の事情を知るアキラとケイタが、受け止めきれない事実を前にピクリとも動かない聖南の心情を思い、二人も神妙な面持ちだ。
ケイタに至っては『ハルって女性じゃないの? 男女ユニットって事?』と、謎が一つプラスされていた。
「セナ、頼んだぞ」
この件は聖南に任せた、とでも言いたげに強い口調で話を終わらせようとするが、そこでようやく頭の中で色々整理できた聖南が復活した。
話が突拍子もなさ過ぎるのだ。
藪から棒どころではない、まったくもってついていけないと不機嫌丸出しに社長を見やる。
「いや、頼むなって言われても……。その前に、葉璃は事務所には入ってないっつってたし、デビューの話も絶対嫌だって拒否ってたのに、なんでそんな事になってんの?」
「詳しい事はスカウトの者に聞かないと分からん。ただこいつはお前たち三人を組ませると提案した奴だから主に信頼している。その者が見立てた者なら、間違いなく売れる」
「論点ちょっとズレてる。デビューするユニットのバックアップは任せとけって言えるけど、葉璃の件は社長が何とかして」
現に今、聖南は葉璃と連絡が出来ないのだから、話の付けようがない。
どういう顛末でこんな事になっているのか問い質したい気持ちでいっぱいだが、葉璃に時間をくれと言われたからには、聖南は大人しく待つ事しか出来ないのだ。
聖南との付き合いについてを真剣に考えてくれているであろう葉璃は、この件で聖南が連絡しようが恐らく電話は取ってくれない。
メッセージも然りだ。
社長も、葉璃と知り合いと思しき聖南が仲介してくれればスムーズに事が運ぶと安心していたが、聖南がそれは無理だと言い始め「うむ……」と頭を抱えた。
「── あ。じゃあ俺がコンタクト取ろうか? 俺も一応面識あるし。デビューの話は無理でも、セナが聞きたい事は聞けるかも」
「本当か? それなら早めに接触してくれ。デビューの目処は来年の秋だ」
「早くね? そんな急ぎなのかよ」
「善は急げだろ。こちらの事務所の宮下には話を付けてOKもらっているから、倉田葉璃の件さえ丸く収まればすぐにチームが動くだろう。セナももうじき復帰だしな、ますます忙しくなるな」
アキラが仲介役を買って出てくれた事で、社長はこれからの展望に期待を膨らませて嬉しそうだ。
ケイタはハルの正体が謎のまま、早々とドラマ撮影に行ってしまい、とりあえずアキラと聖南は社長室を後にして誰も居ない小会議室へと入った。
「セナ、大丈夫か?」
「大丈夫なわけねぇじゃん……。なんでよりによってこのタイミングなんだよ……訳が分かんねぇ」
「ハルってこの世界に興味無さそうってか、出来れば目立ちたくないタイプに見えたんだけど」
「そうだよ。memoryの事務所から葉璃にデビューの話が持ち上がってても、自分には向いてないからって断り続けてたはず……なんだけどな」
「とにかく明後日なら俺午後オフだから、聞いてみるわ」
「あぁ、頼むな。葉璃の番号教えとく」
「あ、いや、登録してあるから大丈夫」
「は? 消せ」
「明後日連絡するって言ってんじゃん! 支離滅裂もいい加減にしろっ」
なぜ葉璃の番号をアキラが知っているのかと聖南は急に不機嫌になり、アキラは以前の病院での経緯を伝え、聖南の肩をポン、と叩いて笑ってやる。
現在複雑な胸中で、人生で初めて身を焦がすという経験をしている聖南を思いやるアキラは、昔も今も長男気質だった。
聖南と、何より葉璃を取り巻く環境が、知らぬ間に物凄いスピードで変化しようとしていた。
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