必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 葉璃のハルカとしての影武者は見事だった。

 今日もスタジオの中まで入ってmemoryのパフォーマンスをモニターで見ていたCROWNの三人は、いくら隠れていてもスタジオ隅に垣間見えるため、客席から大歓声を浴びていた。

 昨日の真っ白だった衣装とは正反対で、今日のCROWNの三人は黒ずくめだ。

 ブラックスーツのジャケットには細かいラメが散りばめられており、聖南は黒、アキラは赤、ケイタは紫のカッターシャツで、ノーネクタイである。

 そして三人ともつばの浅目な黒のハットを被っているが、それにはカッターシャツと同じ色の大きな羽飾りが付いていて、少しの動作でゆらゆらと揺らめく。

 そんな目立つ三人に気付かないはずもなく、スタッフからも「なぜ今ここに?」「CROWNはあと一時間後だろ?」と声を掛けられたが、アキラがうまく交してくれていた。

 何せハルカに夢中な聖南が使いものにならないのである。


「……なぁ、俺ら絶対妙な噂立てられるぜ」
「そんなに心配しなくても、ハルカちゃんなら大丈夫だって」


 モニター越しにmemoryを……というよりも聖南は葉璃だけを凝視していた。

 アキラとケイタがヒソヒソと会話をしているのを流し聞きする事も出来たが、昨日の今日で聖南は心配だったのだ。


「分かってんだよ、んな事は。  けど来る前ヤっちゃったから昨日より動けなかったらどうしよって不安でな。  だとしたら俺のせいだし」
「は!?  お前アホだろ!」
「本番前にやっちゃだめだろ!  セナ、マジで獣だな!」
「シーッ!  お前ら声でけぇ!」


 本番中で、かつCROWN三人が固まっている周囲には誰も居ないとはいえ、そんな驚かなくても、と聖南は口元に指をやりながら肩を竦めた。

 パフォーマンス中の葉璃の動きは、心配していた違和感などはない。

 それどころか、葉璃がセンター位置でカメラで抜かれた際、昨日よりさらに濃くした笑みによってモニター越しに聖南は心臓を撃ち抜かれた。

 これが今全国に流れているかと思うと複雑だが、ハルカとしての役目はきっちりこなしていると断言できる。

 やはりリズム感の良さも天性のものらしい。

 あの難しい振り付けを、以前も数時間で覚えたというのだから驚きだ。

 程なくmemoryの本番が終わり一時間半後。

 聖南達CROWNの出番になると、ハルカを脱いだ葉璃がまたスタジオまで見に来てくれていた。

 今日はもちろん葉璃一人で、先ほど聖南達が見ていたモニター前でやはり小さくCROWNの振り付けを真似している。

 ハルカの姿から葉璃に戻っている事で、スタッフから「あの子は誰だろう?」とチラチラ視線を寄越されていたが、葉璃はそれにはまったく気付いていない。

 普段着だがあの容姿だ。

 どこかの事務所の子だろうと誰もつまみ出そうとしないので、聖南は安心してパフォーマンスに集中した。

 そして聖南がアップに抜かれた瞬間、モニターを見ている葉璃へ先ほどのお返しのように笑顔でウインクして客席を湧かせる。

 ……と同時に、振り付けを真似していた葉璃がピタッと動きを止めてモニターからこちらへ視線を送ってきた。

 聖南はもう一度、目が合った瞬間に葉璃にだけウインクして見せる。


『俺にはもう、お前しか見えてねぇよ。 葉璃───』


 視線にたっぷりと想いをのせ、心の中で葉璃に届けと願いながら、声のない言葉を送った。




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