必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
226 / 541
39☆

39☆ 6・大塚事務所主催、仮装パーティー♡


… … …



 大塚芸能事務所は、所属するタレントがとても多いマンモス事務所だが、その中でも名の知れた飛び抜けての売れっ子は大御所を除いて一握りしか居ない。

 今年一年、事務所に貢献したであろうその者達を集めて、決算月である3月に「お疲れ様でしたパーティー」が開かれるのが社の通例だった。

 それらを企画運営するチームも存在するほどの力の入れようで、今年も例に漏れず "仮装" しての参加が義務付けられている。

 その仮装も、自分たちでは決められない。 参加者リストを見た社長が直々に仮装をあてがう。

 それに合わせて衣装まで作られ、大きな事務所ならではのお金のかかった凝ったパーティーであった。

 年末のパーティーと同じホテルの大広間を貸し切っているため、参加者達はそれぞれホテルの一室で着替えてからパーティーに参加する。

 例に漏れずCROWNは事務所筆頭の稼ぎ頭なので、三人は別々の部屋で着替えを済ませてすでにロビーへと降り立っていた。


「お、セナは今年は海賊か」


 セナは、背中までの長髪のウィッグに独特な形の黒の海賊帽を被り、左目には黒の眼帯、首元まで覆い被さる白いフリフリカッターシャツに、腰までの真っ赤なジャケット、ピタッとした黒のレザーパンツとロングブーツ姿で、見るからに海賊だった。

 元々それが本業じゃないのかというほど似合っている。


「アキラは……アラジン?」
「違う。  中東の民族衣装。  そう言うケイタは……それ何?  RPGの勇者っぽい」
「でしょ~~?  何か分かんないんだけど、この短剣がそれっぽいよね」


 アキラは中東の王族を模した、カンドゥーラと呼ばれる民族衣装に似せたものを着用している。

 頭には通常はロープ状のバンドなのだがアキラは金のスカーフを折り曲げてそれに見立てていてきらびやかだ。

 片目が海賊眼帯で見えないセナが、ケイタの衣装を触りながら笑った。


「今年のこれはケイタのためにあるみたいに似合ってんな」


 間違いなくケイタも男前なのだが、二十歳を迎えたばかりだからか表情や雰囲気にどことなくまだ幼稚さが残っている。

 そんなケイタはよくあるRPGゲームの主人公のように短いマントをヒラヒラさせていて、おまけに何にも用途が無さそうな短剣を腰に差していた。


「俺も海賊が良かったー!  セナの仮装って毎年かっこよくない!?」
「セナ去年なんだったっけ?」
「吸血鬼」
「ほら仮装パーティーの定番!  なんで毎年俺はゲーム関連なんだよ?  ゲーム好きでも何でもないのに!」


 誰に何を着せるかは社長が決めているので、恐らくケイタはマスコット的扱いをされているのだろうと、アキラとセナは憤るケイタを前に二人で吹き出した。

 パーティー会場は前回ほどごった返してはいないものの、約五十余名のタレントが仮装してその場にいる様は異様と言う他なかった。

 三人が揃って会場へと入ると、同業者であるはずの者達から一斉に視線を浴びた。

 やはり中央のセナの毎年の着こなしは半端ではなく、アキラとケイタよりも背が高い分、余計に目立っている。


「おぉ、今年もすごいっすね、セナさん!」
「海賊だー♡  素敵ー♡」
「迫力すげぇぇ」
「なんだ?  ケイタさんはまたゲームっすか?」
「アキラさんもとってもお似合いですね~♡」


 口々にそう言ってくるのは、今や第一線で活躍している女優や俳優達だ。

 三人よりも年上の者ももちろんいるのだが、芸歴重視のこの世界ではセナ達の年齢ですら先輩として扱われる事がある。

 アキラとケイタは声を掛けて来る者達へきちんと対応しているが、セナは我関せずで愛想笑いだけ浮かべてその場を乗り切ろうとしていた。

 今日もアルコールは要らないとばかりに、しれっと輪から外れたセナは深い紫色のぶどうジュースを飲んで辺りを見回している。

 ケイタはまだ様々にいじられまくっているので、アキラはそれを放ってセナに近付いた。


「まだ来てないんじゃない?」
「どうだろ。  仮装してるだろうし、俺は片目見えねぇしでよく分かんねー」


 今日は決算月のパーティーなのだが、夏にデビューを控えるハルと恭也もここへ招かれている事は分かっている。

 ただ、当日予約されたホテルの部屋に入るまで各々はどんな仮装をするのか分からないため、セナはもちろんハルさえも知らないはずだった。

 入り時間の問題で落ち合えなかったらしく、セナは右目だけを頼りにハル探しに生を出している。



感想 3

あなたにおすすめの小説

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

【完結】優しい嘘と優しい涙

Lillyx48
BL
同期の仲良い3人。 ゆっくり進んでいく関係と壊れない関係。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。