迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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②迅が不機嫌なんですけど

─雷─7

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… … …


 "みんな大好き夏休み!!" がやって来た。

 その前に期末考査ってやつがあったけど、この学校もそこそこ授業聞いてれば欠点にはならねぇから、バカバカ言われる俺でも補修受けなくて済んだ。

 楽勝楽勝!と周りに大口叩いてたわりに、実はある事で気が散ってあんまり自信が無かった。

 ある事ってのは……迅がクソほどイケメンだって事に気付いたからだ。

 口が悪いのは勘弁な。 でもこれ以外に言いようがねぇんだもん。

 そのイケメン迅様から、俺は相変わらず毎日カノジョみたいに家まで送り届けられている。

 おまけに、週末はバイトだって言ってた迅からは二時間おきに「自由行動禁止。継続中。」なんていう、ギリギリ意味が分かるメッセージが届くんだ。

 監視メッセの合間にちょっとコンビニでも行こうもんなら、すぐに「禁止の意味分かるか」って恐ろしい文がくる。

 え? どこから見てるんだ? 迅は今バイト中だろ? どゆ事?

 この通りにメッセージを送り返すと、返事は「アプリ」の一単語だけ。

 意味不明を越えた意味不明。 これは意味が分からな過ぎるから、絶対、誤送信なんじゃないかと思う。

 そろそろ、指先が衰えてんぞって茶化してやろうかな。


「ふぁぁ……」


 イケ迅の部屋って、慣れるとかなり居心地がいい。

 ベッドはいつでもふかふかでイイ匂いするし、部屋にクーラーあんのがめちゃめちゃいい。

 俺ん家は社宅だからか分かんねぇけど、リビングにしかクーラーが設置されてないんだよなぁ。


「眠たいなら寝れば?」
「……んー……でも今寝たら夜眠れなくなるー……」
「睡眠欲は人間の三大欲求のうちの一つなんだし、逆らうもんじゃねぇよ」
「……そっかなぁ」


 俺、夏休みが始まってからずっと迅と居る気がする。

 迅のベッドにうつ伏せになった俺の隣には、スマホとにらめっこ中の迅が壁を背に、長ーい足をか弱い俺の背中に置いてる。

 ぶっちゃけ、重い。 けどなんか心地良くて、俺はされるがままだ。

 口を開けば嫌味ばっかりかと思えば、元々そんなに口数の多くない迅とたくさんの時間を過ごしても、前みたいにすぐ喧嘩になる事はまず無くなった。

 末っ子だって聞いたのに、迅は弟感がまるでゼロ。 むしろヤンチャが過ぎる息子の監視を徹底するお父さんみたいだ。


「どうせ今日も泊まるんだろ。 眠れなくなっても別に構わねぇじゃん」
「泊まるなんて言ってねぇぞ~」
「泊まるんだよ」
「へぇへぇ、俺様迅様ヤリ迅様~」


 背中の重みが何とも絶妙で、さらに眠気に誘われてウトウトしてた俺は、目を閉じたまま雑に答えた。

 もう八月なのに、バカ校ならではのほんの少しの宿題にも手を付けてない俺と迅は、こうして毎日部屋でダラダラ過ごすのが日課になってる。

 夏休みってこんなにあっという間だっけ?

 高校最後の夏休みは一生に一度だけなんだぞ。

 この町に引っ越してきて出来たダチとも、もっと遊びに行ったりしたいんだけどな。

 迅が俺をこんなに監視するようになった原因って何なんだろ……俺、そんなにバカなことしちまったのかなぁ?


「睡眠じゃなくて気絶にしてやろーか?」
「結構ですぅ……遠慮しときますぅ……。 むにゃ……」
「……あ? 雷にゃんもう寝た?」
「…………むにゃ……」


 うん、寝た。 迅の声って眠い時に聞くとメトロノーム並みに眠気誘われるんだよな。

 まだ明るいうちから、俺は迅の「フッ」って気障な笑い声を最後に意識を手放した。





 先輩よりキツめの、本気と書いてマジの迅の監視が始まってもう、三週間以上が経つんだっけ。

 迅が背後霊みたいに俺についてくるから、もふもふさんのところにも全然行けてない。

 せっかくの夏休み。

 この長期休みくらい縛りから解放してほしい、出来れば迅とは顔を合わせたくない、クラスが違うのだけが救いだったのに……って不満タラタラだったのは、結局最初だけだった。

 迅と過ごす時間は嫌いじゃない。

 本人には絶対言わねぇけど、ここまで監視されてもまったくキレそうになんないのは、俺が迅のことがわりと好きだからだ、っていう自己分析。

 リア充でヤリチンでイケメンで、俺のことバカバカ言ってくんのは単純に見下してるからなんだと思ってた。

 だからいちいちムカついてた。 迅はすげぇ調子こいた野郎だってな。

 でもこう毎日一緒に過ごしてると、迅の本性がイヤでも見えてくる。

 同時に、イケメン迅様を毎日拝むことにもなるわけで……。

 ドキドキするからあんまりジッと見るなって、注意してるとこだ。

 そうだな……迅は、例えるなら黒豹? ……虎?

 て事は、サバンナに居たらまずカースト上位だな。

 食えそうな獲物見付けたらすかさず手中に収めてムシャムシャして、骨の髄までむさぼって、食い尽くしたら満足そうにフンッて鼻鳴らしてメスを探す、……みたいな。

 うわ、怖え。 おっかねえ。

 想像と現実がそう大差ないってヤバくない?

 起きたら迅の頭に黒い耳が生えてたらどうしよ。


「───おい雷にゃん。 どんな夢見てんだ。 全部聞こえてんぞ」
「んへっ?」




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