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⑦曲解
─迅─⑥
しおりを挟む別に小せぇのが好みだったわけじゃねぇんだけどな。
このミニサイズ感がたまんねぇ。
いっちょ前に照れてる雷が俺の腕の中で暴れて、気に入ってる服に噛み付いてくるがそれさえ何とも言えない。
ヤンチャな子猫にじゃれ付かれて手足引っ掻かれても、目尻下げて許しちまうそれと同じ。
「迅……ッ、離せってば!」
「お前そんな寝起き悪くねぇのにな? そんな機嫌悪いっつー事は、やっぱ腹減ってたんだろ」
「そうじゃねぇ! 俺をガキみてぇに扱うな!」
注意してからは一応ボリュームに気を付けてニャーニャー言ってんの、可愛くね?
ニコニコでバカ発言してくんのはデフォルトだが、こうやって感情剥き出しなのも悪くねぇって俺の趣味どうなってんの。
背中に雷にゃんパンチを受け続けて、おとなしくなったのを見計らって体を離した。
すると雷は、不機嫌継続中のツラで俺を見上げてきて……気付けば右手は例の定位置。
「雷にゃん、マジでどうしたんだよ。 ……またそこ握ってるし。 今度はなんでチクチクしてんの?」
「うぅぅ~~ッッ!!」
「俺には何でも話せって言っただろ? ほれ、言わねぇとチクチクの原因分かんねぇまんまだぞー」
「う、う、う、うるせぇ!」
服の上からガシッと掴んだ心臓が、またチクチク痛むらしい。
──俺なんかした?
バイト前もバイト中もバイト後もこまめに連絡入れてやって、監視も怠らなかった俺は立派に雷のこと可愛がってるつもりなんだけど。
そのチクチクは、大体は嫉妬によって引き起こされるもんだって知ってしまったからには、雷がどんだけ仏頂面で睨み付けてきても懲りずに浮かれちまう。
俺は、雷の右手を取って握った。
逃げも暴れも出来ねぇように左手も握って、自覚のある視線で自由を奪う。
「雷にゃん」
「…………ッッ」
「雷にゃん」
「…………フンッッ」
「キレてんの? 拗ねてんの? どっち?」
「フンフンッッ」
「分かんねぇー……」
どうしても俺とは目を合わせたくない雷と、小せぇ小競り合いを繰り広げた。
嫉妬して拗ねてキレてるって素直に言やいいのに、頑として認めねぇからいつまで経ってもチクチク治んねぇだろ。
根本的なとこを気付かせるにはどうすればいいのか考えてみたけど、俺にもハードルが高過ぎて分かんねぇ。
ただただ、嫉妬した雷にキレられて嬉しいって事しか。
俯いて肩を落としたように見える雷の全部が可愛い。 今まで誰に対しても思った事なかった〝可愛い〟が、どんどん溢れ出そうになって困る。
なんか色々たまんなくなった俺は、もう一度抱きしめてやろうと雷の両手を解放した。
直後、唇をムニュッと尖らせた雷に見上げられて唖然とする。
「……元祖セフレとラブホ行かなくてよかったのかよ」
「…………は?」
「喋り方からして、今日もギャルっぽかったし。 迅って派手なの好きなんだな」
「いや、……は?」
「俺を選んだのも、俺が金髪にしてっから? チビの金髪だったら女に見えるって思ったのか? だとしたら最低だかんな、卑怯ヤリ迅」
「……はぁ?」
何言ってんだ、コイツ。
俺はギャルが好きなわけじゃねぇよ。 そこそこの見た目だったら手当り次第にヤって……って、待てよ。
今コイツ〝ラブホ行かなくてよかったのかよ〟って言った?
ついさっきの会話がよぎる。 そういや、待ち伏せされていた過去のセフレ(多分)が、意気揚々とそんな事を言ってたような。
「まさか……」
ここでもっさん達とウトウトしていた雷が、その会話を知ってるわけがねぇ。
同時に、あんまんを言い当てられた合点もいった。
ポケットからスマホを取り出すと、思った通り雷との通話が繋がりっぱなしだ。 ちなみに今も。
「……なーる」
「………………」
最近のハイテクスマホの高性能マイクは、布一枚挟んだくらいで声がくぐもって聞こえたりしねぇって事が立証された。
ついでに、雷の心臓チクチクの原因は常に俺だって事も。
「なに、雷にゃんは俺とセフレの会話聞いてチクチクしてんのか、ここ」
「……ッッ、そ、そうだよ! 悪りぃか! てか何であんまんなんだよ! ピザまんにしろよって俺叫んでたのに!」
「全然聞こえなかった」
「そりゃそうだろうよ!! ……ぅわッッ」
我慢できなかった。
抱きしめて、でもそれだけじゃ足んなくて抱っこして、雷の腹に鼻を擦りつけた。
可愛い。 可愛い。 可愛い。
何この生き物。 同じ人間?
雷に言われた〝死神〟ってワードを思い出す。
もし俺が死神だったら、すぐにでも雷の全身食い尽くすわ。 未確認物体として浮遊しながらあの世で可愛がりまくって、死の無い世界で永遠に俺のものにする。
そんなぶっ飛んだ妄想までしちまうって、雷の可愛さ恐るべし。
「く、苦し……ッ! 迅、苦しい……ッ」
「………………」
「迅! なんか言えよ! そんで下ろせ! そんな腹グリグリされたら苦しいって、……ッ」
「雷にゃん」
「ッ、なんだよ!」
「お前ほんとヤバい」
「はッ? てめ、ディスってんじゃね……ッッ」
「セフレはセフレだ。 雷にゃんは気にしなくていい。 〝雷にゃんだから〟って俺ずっと言ってんじゃん」
「言ってる意味分かんねぇんだよ! 俺と前のセフレとの違いなんか、男か女かってだけだろ!」
「俺、ゲイでもバイでもないんだけど。 その違いってめちゃめちゃデケェよ」
今さらな事を、そんな怒りテンションで言うな。 照れんだろ。
理屈じゃねぇんだよ。 雷だからだ。
雷を手に入れたい、そばに置いときたい、他のヤツに手出しされたらマジでソイツ生かしちゃおかねぇってくらいには、俺にだって生意気な独占欲がある。
セックスのためだけに付き合うなんて、雷とは考えらんねぇっての。
5
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