迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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⑧極めてみようと思います!

─雷─⑦

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… … …



 迅が帰ったあと、熱が出た。

 微熱だったし寝て起きたら平熱に戻ってたけど、食欲が無え上にずっと頭がボーッとしてて、ほっぺたと体がポカポカ熱い。

 迅の壁ドンが夢にまで出てきた。

 ピンクに染まったあの光景が、何回も何回もしつこくエンドレスリピート。

 もう分かったって。

 見つめられて、イケボで囁かれて、全身硬直して、呼吸困難になって、心臓がドキドキドキドキするなんて経験は初めてだ。

 いくら俺がみんなのお墨付きのバカでも、そりゃ分かるよ。

 俺は、──迅のことが好き。

 頭ン中がショートした後遺症で熱まで出したエピソードは、俺の胸だけにしまっとかなきゃいけねぇ。 だってめちゃめちゃハズいじゃん。

 雷ギャル磨いて、迅のセフレから〝カノジョ〟にランクアップしたら、その時は自信持って告ろうと思う。

 恥ずか死ぬとか言ってねぇで、穴開拓も勉強しないといけねぇ。

 外見が迅好みになったとしても、挿れるとこが無い俺はあっという間に飽きられちまう。

 出来れば告る自信が持てるまでは、迅のお気に入りの座を死守してたい。

 あわよくば、〝雷にゃんが居れば他のセフレは要らねぇな〟って、……あのイケボで言ってもらいたい。


「おはよ」
「……おはよ」


 昨日の宣言通り、いつもの時間に迎えに来た迅は昨日までのコイツと何にも変わんなかった。

 洗面所で念入りに金髪をとかして、ローファー履いてからも何回も深呼吸した俺とは大違いの仏頂面。

 朝陽をバックにした迅が神々しい。

 微熱明けの俺には眩しすぎるぜ。

 歩きだしたイケメンツンデレヤリチン長身男を、まったく合わねぇ歩幅で追いかけた。

 特にチクチク痛みはしてねぇのに、心臓辺りを庇っちまう。

 畜生。 後ろ姿だけでイケてるって何だ。

 足が長くてモデル体型だから?

 パッと見で分かるくらい男らしいカラダしてっから?

 サイドの髪を左耳だけにかけた、なんか全体的にやらしい黒髪がツヤツヤサラサラしてっから?

 「雷にゃんどした?」って、振り返ってきた目元と声までイケてるから?

 ──って、おい。 迅の見た目の短所が見当たらねぇぞ。

 実は腹が出てるとか、実は全身モジャモジャの毛深男とか、実は親指サイズの粗チンで……とか、見えねぇとこが情けなかったら苦しまぎれに笑ってやんのに、そういうのが一つも無えってのはどういう事だ。

 これで見境の無え性欲モンスターじゃなければ、ちょっとツン多めのツンデレだけど彼ピッピとしては満点なんじゃねぇの。

 ……う、うぐぅぅ……ッッ!

 彼ピッピ……ッッ!!

 なってほしーなぁ!! 彼ピッピ!!


「……なぁ、迅」
「ん?」
「俺、極めるから」
「は?」


 駅までの道を歩いてた時、いつの間にか俺の歩幅に合わせてくれてた迅を見上げた。

 俺の彼ピッピになってほしいって気持ちが固まった事だし、心機一転がんばるんだ!

 何言ってんの?なツラで俺を見下ろしてくるイケメンに、俺だけがドキドキしてんのはフェアじゃねぇ。

 どうせ迅好みのギャルになるなら、迅にもドキドキしてもらいてぇもんな!


「……なんて?」
「俺、極めるから!!」
「それ今聞いたって。 何を言い出してんだ、今度は」
「極めるんだ! だから待ってろ!」
「何を?」
「それは言えねぇ!」
「………………」


 俺が何を極めるか話さねぇと分かるや、迅はふてくされてさっさと歩き始めた。

 だってさ、だってさ、言えるかよッ、バカ迅!!

 俺の作戦は明日からの土日が勝負だ。

 先輩の店の真上でバイトしてる迅にはバレねぇように、こっそりギャル道を磨く。 まさか俺が真下に居るとは思わねぇだろっていう裏をかくんだぜ!

 女っぽくとかそういうのじゃなく、とにかく迅が〝抱きてぇ!〟って襲ってきちまうようなギャルが理想。

 なれるかどうか分かんねぇけど、ムカつく元祖セフレ達に負けねぇぐらい、可愛い雷ギャルになるんだ。

 闘志を燃やすと、ドキドキが少しずつ治まってきた。

 動画はまだ観てねぇから穴開拓とやらは保留。

 まずは中の上ギャルを極めねぇと、話になんねぇ。

 ……あ。 話といえばそういや、壁ドンしたあと迅の様子がおかしくなって、何かを言いかけてたよな。

 空気の読めない俺の母さんが乱入する前から、珍しく迅がソワソワして言葉に詰まってた。

 アレなんだったんだろ。


「迅ー。 昨日言おうとしてたダイジナコトって何?」


 走って迅に追いついて、それとなく聞いてみる。

 駅が目前だった。

 迅はそれまでのっそり歩いてた長い足をピタッと止めて、俺を見た。


「……それはもう少しムードあるとこで言いてぇから待て。 一晩中シミュレーションしたけどしっくりこねぇんだ」
「ムード? シチュエーション? なんだそれ?」
「クソかっこ悪りぃけどな、ちゃんと雷にゃんに伝わんねぇと意味無ぇし」


 だから待て、って。 俺はエサ待ちの犬かッ。

 まぁ俺も、迅にナイショでギャル化しようとしてるし強く聞き出すことは出来ねぇ。

 歯切れが悪いのは迅らしくねぇけどな。

 前回はミッションとかクリアとかで、今回はムード、シチュエーションっすか。


「……絶好調に意味不」
「だよな。 俺もそう思う」
「お前が意味不なら俺はもっと意味不じゃん。 意味不と意味不が二つになって、……何になる?」
「知るか。 バカ雷にゃん」
「朝からツン様降臨ーーッッ!」
「バカ雷にゃんも降臨ーー」
「おいッッ」


 バカバカ言うな! バカ迅め!!

 この時、俺のツッコミにブハッと笑ったツラを見て、「かっけぇ……」と見惚れたのは俺だけじゃなかった。

 駅には出勤前のOLお姉様、登校中のJKが多数。

 その場に居るだけで目立つ俺様迅様の笑顔に、立ち止まる人がたくさんだった。

 いつか、その視線の隣には俺が当たり前にカノジョ面して立ってたいな。

 俺の彼ピッピなんだぜ、俺のな!って、胸張ってたいな。



 ……お、俺、すでに雷ギャル化進行してる?




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