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⑧極めてみようと思います!
─雷─⑨
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平日の夜、大体九時くらいに迅から写真付きのメッセが届く。 その日のもっさん親子が写ってる写真が、スマホのアルバムにどんどん保存されていく。
明日は九時集合だからな、と先輩からも念押しメッセきてたからスタンプで返して、風呂上がりの濡れた髪のままベッドにダイブした。
画面切り替えて、アルバムに戻る。
もっさん親子はみんなアイボリー色でもふもふ。 チビ達なんて、まだ首輪してねぇからどの子が誰なのか正直見分けがつかねぇ。
三匹はいっつもじゃれ合ってて可愛くて、その瞬間を激写して俺に毎晩送ってくれる迅は立派な飼い主だ。
親子だしもっさんがしっかりしてるから世話はほとんどしなくていいんだって。 迅の出番があるとすれば、ごはんとトイレと周りの掃除くらい。
世話ぜんぶ任しちゃってゴメンなって、毎日謝ってる。
でも迅は、『嫌々だったらそもそも飼わねぇ』『悪いと思ってんなら週末来い』と同じような返事ばっかり。
「行けねぇよ……今は……」
うつ伏せになって、ボフッと枕に顔を埋め込んだ。
これがヤリチン伝説保持者と童貞男子の差ってやつなのか。
結局、セフレ契約結んでから前みたいに迅と居られなくなってるよな、俺。
余計なこと考えたり、余計な不安抱えたり。 ずっと心臓痛てぇから病気なんじゃねぇかと騒いだ事もあったけど、迅は違うって言ってた。
〝俺にしか治せねぇけど、治らねぇかもな〟って笑いやがってた。
ムカつくことに、迅が笑うと目元細くなんの、めちゃめちゃいいんだよな。 男なのに見惚れる。
あんだけツラが良くてメロテクいっぱい持ってりゃ、そりゃあ元祖セフレとかカノジョとかほっとかねぇよ。
ああいうのがホンモノの陽キャって言うんだ。
それにひきかえ、俺は髪だけ明るい脛蹴りしか必殺技の無えチビ。 人見知りも物怖じもしねぇし、声がデケェから陽キャ扱いされてるだけ。
迅にチン○握られてシコシコされるまでそういう興味も薄かった、ただの童貞男子。
「……あ、そうだ。 指一本ってどうやんのかな」
ゆっくり枕から顔を上げた。 別に、やらしい気分になったとかじゃないんだからなッ。
自分と誰かに言い訳しつつ、先輩からのメッセを開いてみる。
俺には文章より動画の方がいいだろって送られてきた謎のURLをポチッとしかけて、迅の言葉を思い出した。
「これヤバいサイトに繋がってたりしねぇよな……?」
いやいや、何を考えてんだ。
先輩に限ってそんなことあるはず無えよ。
俺は迅のお気に入りを死守するために、極めるから!!って本人にも宣言しちまったんだ。
ここでチキるつもりか、水上雷。
「えいっ」
押した。 押したぞ、URL。
…………なーんだ。 わりと健全そうな動画じゃん。
映ってるのはお医者さんみたいな格好した男の人と、パリッとしたシーツの上に横たわってる患者風の男。 登場人物はこの二人らしい。
「おおッッ?」
うわわわわッ、患者の男がスボンとパンツ脱いだ! ケツ丸出し……!!
……えッ? そんな、……ッ!
おい医者! 手袋はめた手に何を持ってる!?
『~~、男性同士の性交には欠かせない、ア○ル洗浄。 いくつか方法はありますが、本日はこのイチジク浣腸で……』
「ヒィッ!? イチジク浣腸ーーッッ!!」
出て来た!! 迅に奪われたエチエチグッズの中の一番の謎が、いま解明された!!
思わず顔を付けて叫んだ枕が、声を吸収してくれて大活躍。
「うっ、うん! 分かったぞ!」
……それ以上は見られなかった。
視聴時間、約二分。
知らねぇ男のケツと、いかにも今から何かします的なツラの医者男があまりにリアルで、ビビった。 あと、白いゴム製手袋に握られたイチジク浣腸に恐れおののいた。
「ね、寝よう! 明日は忙しいからな!」
嫌な動悸がしてきた俺は、スマホで安眠BGMを流しっぱなしにして、布団を頭まで被って丸まって寝た。
俺……動画観ただけでこんなチキってて、ほんとに雷ギャル極められんのか……?
「──おはよう、雷。 時間通りじゃない」
次の日の朝。
モールの裏口から入ってすぐの通路で、女バージョンの先輩が仁王立ちして俺を待っててくれた。
テナントごとに更衣室の場所が違うとかで、そこに連れてってもらいながら昨日の衝撃をソフトに伝える。
「……おはよ。 周波数がどうのこうの書いてる安眠BGMのおかげで、いい睡眠とれた」
「えー、そんなの頼ってんの? 重症だわね」
「先輩のせいだ」
「はぁ?」
安眠を欲したのは間違いなく、先輩が送り付けてきた三部作の初級編を観たからだ。
指一本の前にあの行事があるってことは、口で説明してほしかったぜ。
二分もリアルな映像観ちまったじゃん。
一体誰なんだよ、あの二人は。
「あらやだっ。 グズグズしてるヒマないわよ、雷! バイトの子があと三十分で来ちゃうから、さっさとメイクしちゃいましょ!」
「はーい」
そうだ。 イチジク浣腸の衝撃に打ちひしがれてる場合じゃねぇ。
今日から始まる雷ギャルへの道。
都合よくいい睡眠とったおかげで、いつもよりお肌もピチピチぷるぷる絶好調だ。
先輩と一緒にロッカールームに入る。 結構こじんまりな更衣室だけど、その方が逆に落ち着く。
長椅子に座らされて、目を閉じろと命令された。
バンダナみたいなやつを頭に巻かれてから、顔に水っぽいもんを二回ヒタヒタ塗られて、次はベッタリしたもんを塗られていく。
目を瞑ってジッとしてるだけで、あとは何がなんだか分かんなかった。
睫毛をクルンってされた時は痛くて先輩を薄目で睨んだし、だんだん顔と頭が重くなってくヘンな感覚はマジで相当な違和感だ。
ギャルって大変なんだな。
「……雷、目開けていいわよ」
「んー」
言われて、ゆっくり目を開けてみる。
目の前の真四角の鏡にぼんやり映ったのは、メイクしてっから当然なんだけどいつもの俺じゃなかった。
先輩の手から鏡を奪って、金髪のサラサラウィッグを被った俺をまじまじと見る。
「おぉ……ッッ!!」
これは……ッ!
これはかなり、迅好みのギャルになれてんじゃねぇか!?
「すげぇ! 女に見える!!」
「あんた猫目だからギャルメイク似合うわね」
「似合う!? 俺ギャルに見える!?」
「バッチリよ。 あとはこれに着替えて、今日はとりあえず夕方までしっかり働いてちょうだい。 その分のバイト代はキッチリ渡してあげるからね」
「やったー!!」
よぉーし!! なんか勇気湧いてきた!
迅にモテたいがための雷ギャル道。
先輩を巻き込んじまって悪いけど、ぶっちゃけ俺のギャル姿……かなりイケてる。
この作戦、成功する予感しかしねえッ♡
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