迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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⑩カレシが出来ました!

─雷─⑩

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 休憩前に何分休憩すんのって、先輩から怒られた。

 かくかくしかじかありましてん……と説明して何とか分かってもらったけど、バイト三日目にしてそんな輩が現れた事に驚いてもいた。 ちなみにもちろん、発射のコトは端折った。

 フードコートの隅っこで迅と食う昼メシはうまうまだったし、そのあと十七時までのバイトもあっという間で楽しかった。

 それはまぁ、……うん。 夜開催のアレコレを考えねぇようにしてたからな。





 バイト終わり、俺は迅に連れられるまま快速電車に乗った。 決まった駅にしか止まらねぇ電車から見える景色が、たった十五分乗ってるだけで全然知らない町みたい。

 あんまり喋んねぇ迅の隣で、雷ギャルから雷にゃんに戻ってる俺はずっと心臓を押さえてドキドキと戦った。

 行き先を聞いたところで、迅はチラっと俺を見て「フッ」とカッコつけて笑うだけだと思ったから、野暮なコトは聞かなかった。

 快速電車に揺られて三十分。 タクシーに乗ってさらに移動する事二十分。

 長旅だ。 でも迅の考えがちょっと分かる。

 こんな土地勘の無え町まで来たのは、たぶん知ってるヤツに会いたくないからだろ。 それか、元祖セフレ達と使ったラブホには行きたくなかったから、……チクチク。

 借りてきた猫ならぬ、借りてきた雷にゃん状態でおとなしい俺を不審がる様子も無く、迅はずっとイケメン面で窓の外を眺めていた。


「着いたぞ、雷にゃん」


 タクシーはとある豪華なホテルの前で停車した。 手招きされて、恐る恐る降りてみる。

 ……なんだ、ここ。 セレブ御用達のホテル……?

 入り口に二人、ドラマで見たような立派な格好をした男が二人立っていて、自動ドアの向こう側はキラキラピカピカ。

 まばたきを忘れてる俺の背中に左手を回して、フロントでチェックインしてる迅がどこぞの王子様に見えたんだけどこれは……幻覚だよな……?


「──ここ……? マジでここに泊まるのか? 迅、俺に隠れてヤバいビジネスやってねぇ?」


 俺が迅に話しかけたのは、案内された部屋に入ってからだ。

 何せ部屋の前まで従業員の人がついて来て、オロオロしてたらダセェかもと、俺は謎の見栄を張った。


「なんでそうなるんだよ」
「だってこんな……こんな……ッ」


 こんな……立派なホテルに連れて来られるとは思わねぇじゃん……ッ!?

 何も話しちゃいけねぇみたいな雰囲気を醸し出す男性従業員引き連れて部屋まで来て、「御用の際は……」なんて恭しく頭下げられるとオロオロは最高潮だった。

 なんつーか、土足で歩き回ってオッケーな部屋にDKが一泊するとか、場違いもいいとこじゃねぇ?

 夜のアレコレよりこの部屋に馴染めるかどうかが心配になってきたぞ……!

 ドキドキオロオロしてる俺に向かって優しく微笑む彼ピッピは、全然何とも思ってなさそうだけど。


「雷にゃんはシチュエーションに弱えからな。 でもいざコトが始まったら逃げちまうかもしんねぇじゃん?」
「に、逃げ、逃げねぇし!!」
「じゃあなんでそこから一歩も進まねぇの? ビビッてる?」
「ンなわけねぇじゃん!! 今日はそういうつもりで、こ、こここ、ここに、い、い、い、いますんで!」
「フッ、可愛い」
「かわッ……!」


 ただでさえドキドキ中の俺に向かって、ストレートに言い過ぎな!?

 迅がドギマギしてねぇってのは分かったけど、俺はこの場違い空間がおっかねぇんだよ。

 ドアノブは全部金ピカ、壁は真っ白、そこまで広い部屋ではねぇにしても、窓から見える景色が絶景。 街中なのに建物がめちゃめちゃロングサイズだから、タワマンに住んでる金持ち連中の気持ちが味わえる。

 まだ部屋に入って三歩しか進んでねぇんだけど、ここからでも充分、あんまん好きなDKには相応しくねぇってのが分かんだよ。

 俺にどうしろっての? てか落ち着かねぇから靴脱いでいい?


「……ふぅぅ……」
「雷にゃん緊張してんの? 放尿見せ合った仲じゃん?」
「見せ合ってねぇよ!! 発射したのは俺だけだった! お前のは見てねぇ!」
「あ、たしかに。 今から見せようか? 俺ちょうどトイレ行こうと思って……」
「いぃぃッッ!? 結構です!! 迅の発射が見たくて言ったんじゃねぇよ!!」
「そ? 遠慮しなくていいんだぞ? 俺の発射見せねぇのはフェアじゃねぇだろ?」
「放尿フェアは結構ですぅぅッ!!」
「そのフェアじゃねぇっつーの。 トイレ行ってくっから、雷にゃんは室内探検してろ」


 え、おい、迅ッ、どこ行くんだ! ……って、トイレか。

 部屋に入って一番手前にあった扉に消えた迅を追い掛けようとした俺は、うっかり放尿フェアに立ち合うところだった。

 探検してろって……入っていいのか? 靴のまま入っちまうぞ?

 つい「お邪魔しまーす」と言いそうになって、口元を押さえた。


「おッ? チョコがある! こっちはミニケーキ!? へぇー! ホテルは饅頭とお茶じゃねぇのかぁ」


 和と洋でまったくの別ものなんだから、先輩が泊まってた旅館と比較なんてしちゃダメなんだろうけど。

 置かれてる物がぜーんぶ一級品に見えんのは、俺にとっては目に入るものすべてが珍しいからか。

 迅のヤツ、俺に内緒でこんなにいいホテル予約してたなんて……。 俺が急遽バイトになっちまって、かなり不満そうだったのも頷ける。


「うッ……ベッド……」


 さっきから視界にチラついていた、デケぇベッドに目をやる。

 部屋の広さ的に二つも入んねぇよなってくらいのデッカいベッドが、室内を占拠していた。

 モールの寝具売り場でも、こんなの見なかった。

 足元に布が置かれてて、頭元に二つ並んだ枕はモフッとしてて……ベッドだけで場違い感ハンパ無ぇ。


「クイーンサイズのロングにしてもらった。 こんだけデケェと、あんなコトやこんなコトするためだけのベッドに見えねぇ?」
「────ッッ!」


 フェアから戻って来た迅が、サラッと俺の腰を抱いた。

 そんな甘々なことを予告無くされると、アニメみてぇにハートの形の心臓が口から飛び出るって。


「……迅、あのさ、……なんでこんなセレブホテルに……?」


 今なら聞いてもいいかなって、迅を見上げてみた。

 夜のアレコレはてっきり、それに相応しい場所でやるもんだと思ってたからさ。

 さすがに指一本レッスンは迅の家も俺の家もムリだし、泊まることは予想してたけど……まさかクイーンサイズベッドとミニケーキが待ち構えるホテルだとは……。


「なんでって? 決まってるだろ」


 いやいや迅さん、そんなイケメンドヤ顔されても。

 決まってねぇし。 分かんねぇから聞いてんだよ。


「…………??」
「今日改めて雷にゃんに告るからだ」
「…………こッッ!?」
「仕切り直しってやつ」
「…………ッッ!?」


 自分で聞いたくせに、声が出なかった。

 マジで!?って思いと、告白を予告された胸キュンはどうしたらいいんだ。

 夜まで俺の心臓が耐えられるのかめちゃめちゃ心配ですが、さすが俺の彼ピッピ。

 想像を遥かに超えてきました。

 






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