迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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⑯仕返し……!?

─雷─

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 俺……〝アオハル〟してたつもりはねぇんだけどな。

 あの超絶コミュ障一匹狼を動かした俺って、やっぱスゴくね?

 不動の黒豹だった迅が、まさか誰かと〝協力〟しようとするなんて想像出来なかったし、俺が説得したところでアイツは「クラスマッチ鬼ダル」とか言いそうじゃん。

 でも迅が気まずそうに「雷にゃんと思い出作りたかった」と言ってくれて、めちゃめちゃ、死ぬほど、嬉しかった。

 これぞ愛の力? ってか?

 空気悪いまま帰っちまった迅を追うより、俺に出来ることは何だろって考えた。

 自分を応援してくれねぇと分かった迅は分かりやすく拗ねやがってたんで、俺はバレーの練習そっちのけで一組VS二組の練習試合を見てたんだけど、何か……。

 なんとなく、直感だけど、迅はちゃんと見様見真似のサッカーを頑張ろうとしてるように見えたんだ。

 嫌々やるんじゃなく、「勝つぞー!」って気持ちが見えた気がした。

 いやもちろん、奪ったボールを自分一人でゴールまで持ってく一匹狼は健在だったがな。

 だから俺は、誤解されやすい……てかあんなプレーしてたら誤解しかされねぇだろう迅を、盛大に庇った。

 最初は一組の連中も不満タラタラだったけど、翼の挑発にイラついて闘志メラメラに変わったから、わざわざ俺ん家の近くのグラウンドに集まったんだ。(他にサッカー出来るくらいデカいグラウンドを知らなかったからな)

 たった二日、トータル三時間くらいの練習で何が変わるんだって、みんな思うだろ。

 負け試合だとは思わねぇが、迅は勝負には拘らねぇんだって。

 だから俺は、迅を応援しなくていいんだと。


 〝まぁ負けるだろうけど、楽しくやってくるわ。雷にゃんは俺にそれを教えたかったんだろ?〟


 試合前、俺に近付いてきた迅がそんな事を言うんで、俺だって胸張って偉そうに「そうだぜ!」とか「一組には負けねぇぜ!」とか言い返せば良かった。

 でも耳元でイケボに囁かれて、ポフポフっと頭撫でられて、フッとイケメンに微笑まれた俺は見事にほっぺたがポッとなっちまって……。


 〝い、イケメン……ッ♡〟


 ロクな言葉が思い付かなくて、出たのがこんなアホみたいな迅への感想。

 ワインレッド色のダセェ体操着もハイクオリティーに着こなしちまう迅の、あんなに清々しいツラは見たこと無かった。

 フッの笑顔が優しすぎて、茹でダコ並みにほっぺたが真っ赤になった俺の心臓がバックンバックンうるさかった。

 俺の彼ピッピが何かを開眼した。ヤツのイケメンレベルが千単位で上がった。

 ボールを追って走って、いい汗かいて、仲間のプレーに一喜一憂してる迅は最高にカッコイイ。

 体育館の入り口で、もはや「一組も二組も両方勝て!」「いっそ同点でいい!」と叫んじまいそうだ。


「キャーー!! 藤堂くーん!!」
「こっち向いてーー!!」
「ヤバァァッ!! 藤堂くんマジじゃん!!」
「笑ってるよ!? ねぇ、あの藤堂くんが笑ってるよ!?」
「藤堂せんぱぁぁい!! カッコイイーー!!」


 ……うるせぇなぁ……ッ。

 そのキンキン声、何とかなんねぇのッ?

 このヤンキー高校は女子が少ねぇんだけど、迅はただサッカーしてるだけでその貴重な女子生徒全員をメロメロにしてやがる。

 同級生も後輩も関係無え。

 見た目ギャルな派手女子みんなが、クラスマッチよりも迅に釘付けって……レベルアップした成果が早速出てんの。

 くぅぅ……ッ。

 〝藤堂くん〟も〝藤堂先輩〟もどっちも俺のだぞッ。俺の彼ピッピなんだぞッ。

 拡声器使って言い回りたい気分だ。

 体育館の入り口から勝負を見守ってると、どうしてもキンキン声が耳に入ってくる。

 迅とセット扱いの翼にも黄色い声が上がってるし、普段静か過ぎる運動場が今日だけはどっかのアイドルのコンサート会場みてぇなんだけど。


「あとでいっぱいチューしてもらお……」


 キャーキャー言われてムカつくから、とりあえず皮肉は言わなきゃ気が済まねぇ。チューはそのあとだ。

 でも今の迅にはたぶん、あのキンキン声は聞こえてねぇと思う。

 運動場で繰り広げられてる三年一組と三年二組のサッカーの試合も、残り十分を切った。

 ヤンキーの結束力って侮れなくて、昨日たった一時間半くらいボール追いかけてただけで、迅と一組連中は打ち解けた。

 いっそ楽しんじまおうぜ、と自称キャプテンの迅が言ってた通り、楽しむことに重点を置いたサッカーを実行してる。

 今のところ、一組が二点、二組が五点。

 ほぼ俺ら二組の勝ちは決まったも同然なのに、翼達はあんまり楽しそうじゃねぇ。

 相手チームが試合中にあんだけ声でコミュニケーション取って、負けてんのにギスギスもしねぇで笑い合ってたらそりゃあ……勝ってても焦るよな。


 ──ピー、ピー、ピー!


 試合終了のホイッスルが鳴った。

 無意識に得点版に目をやると、点差は変わらず。

 勝負は、俺たち二組の……勝ち。

 それなのに応援とは名ばかりの黄色い声は鳴り止まねぇ。


「藤堂くーん!! お疲れさまぁ!!」
「藤堂くんこっち向いてー!!」
「藤堂せんぱぁい!!」


 あーもうッ! 語尾にハートマークつけてキンキン声で絶叫するなよッ!

 我が物顔してキャーキャー叫んでるけどなぁ、藤堂先輩は俺の彼ピッピなんだってばッ!!

 俺も一応、応援してたんだ。

 でもキンキン声には敵わなかった。俺の「どっちもがんばれー!」の声は、かなり序盤でかき消されて心が折れた。

 あーあ。俺が一番にお疲れ様って言いたかったのに。

 整列して挨拶した後も、迅は一組の連中と笑い合ってて何だか楽しそう。長らく一匹狼だった迅様が、群れの長になっちまった。

 それは俺がそうさせたんだけど……なんか寂しいぞ。

 ……しょぼん。




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