迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

文字の大きさ
219 / 223
猫記念日

─1─

しおりを挟む




 んふんふ、お客様さんからいい事聞いちゃったもんねー!

 俺バカだからこういうの全然知らないし、物覚えだってよくない。 来年になったらもう忘れてるだろうから、とりあえずスマホのカレンダーには登録してみた。

 今日はなんと、「猫の日」なんだって!

 つまりもっさん達の日って事だ!

 そんな素晴らしい  “猫記念日“  、ぜひとも迅に教えてあげなきゃだよな。


「もぉぉ……全っ然電話出ないじゃん、迅の奴~~っ」


 仕事帰り、駅までの寂しい夜道をてくてく歩いてた俺は立ち止まった。

 今日は棚卸しがあるから帰りは深夜になるけど電話には出られる、だから仕事終わったらいつも通り連絡しろって言ってたのはどこのどいつだ。

 俺が迅からの電話に出なかったら烈火の如く怒るくせに。

 迅は出なくてもいいっての?

 ヤリチン迅様は俺様だからオッケーって?


「厶~カ~つ~く~!」


 叫びながら地団駄を踏んでみたものの、怒りは堪えられない。

 しかも酔っ払いオヤジからすれ違いざまに「うるせぇガキ!」って怒鳴られた。

 ガキじゃねぇよ! 俺はもう二十歳だ!

 煙草も酒もやらないけど立派なオトナなんだぞ! なめんな!

 ……とオッサンを追い掛けて脛蹴りして罵倒してやりたいところなんだけども……迅からキツーく言い渡されている事があるから、俺は大人しくスマホを睨む。


「──あっ、迅!」


 駅を目の前にして、やっと折り返しが掛かってきた。

 待ちに待った「藤堂 迅」という文字がスマホの画面に表示されると、ついつい顔がだらしなくなる。

 いつ見ても名前が厳つくてかっこいい。

 全然名前負けしてない迅そのものもかっこいい。


『雷にゃん、仕事終わったのか?』
「終わった! 迅が電話に出んわだった」
『……それ面白いって言った方がいい? それとも……さすが雷、ダジャレ王だなって感心してやろうか?』
「どっちもやめてくれ! 俺赤っ恥もいいとこ!」
『フッ……お疲れ。雷にゃんさぁ、先に俺ん家行ってもっさん達に餌やっといて。オカンが急遽夜勤になったって連絡きたんだ。もっさん達腹空かしてる』
「おぉ、任せといて! 泥舟に乗ったつもりで安心しとけ!」


 それは大変だ。

 早いとこ迅の家に行って、飢え死にしそうなもっさん達を救わないと!

 ちなみに迅は実家住みだけど、俺は迅の実家の合鍵を持っちゃってる。


『えーっと……雷にゃんに、小学生がやるような国語のドリルを買ってプレゼントするわ』
「なんだそれー! 俺もう勉強ヤなんだけど! プレゼントならお寿司買ってきてたもれ♡」
『はいはい、寿司な。じゃもっさん達をよろしく』
「オッケー! 迅様タナオロシ頑張れー!」


 「夜なんだから声量落とせ」って怒られながら、迅との通話にホクホクな俺は足取り軽く駅へと向かった。

 やったぁ、お寿司買って帰ってきてくれるんだって。

 あの言い草と見栄っ張りな迅の事だ。

 夜のお仕事する人のために深夜まで開いてる、回らないお寿司屋さんで食べきれないくらいたくさんのお寿司を買ってくるつもりなんだよ。

 ──俺のために。

 これだから俺様な迅様ってかっこいいんだよなぁ。

 好きだなぁ。むふっ。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【短編】初対面の推しになぜか好意を向けられています

大河
BL
夜間学校に通いながらコンビニバイトをしている黒澤悠人には、楽しみにしていることがある。それは、たまにバイト先のコンビニに買い物に来る人気アイドル俳優・天野玲央を密かに眺めることだった。 冴えない夜間学生と人気アイドル俳優。住む世界の違う二人の恋愛模様を描いた全8話の短編小説です。箸休めにどうぞ。 ※「BLove」さんの第1回BLove小説・漫画コンテストに応募中の作品です

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
隣国の国王キリアン(アルファ)に嫁がされたオメガの王子リュカ。 しかし実は、結婚から逃げ出した双子の弟セラの身代わりなのです… 本当の花嫁じゃないとばれたら大変! だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだんキリアンに惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

処理中です...