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50❤︎束の間の逢瀬
50❤︎⑨※
しおりを挟むこのまま微睡んでいたいのは山々なのだが、聖南は少々……いやかなり物足りない。
すでに疲労の色が濃い葉璃には言い出しにくいけれど、中途半端に収まった性器と同じくして聖南の欲の解放も半端だ。
時計をチラと見た聖南は、葉璃を力いっぱい抱き締めて小声で囁く。
「葉璃……悪いんだけど、俺まだ一回しかイってねぇから続きしてい? 葉璃がまだ足りない」
「えっ、こ、このまま……?」
「あ、待って。ゴム変えねぇと」
そうだった、と聖南は葉璃の体を抱え上げ、じわりと性器を抜く。毎度の事なので覚悟はしたのだが、ぬぷっと亀頭を引き抜く際に「あぁっ」と可愛く啼く葉璃を若干うらめしく思った。
──……回数なんて約束できるかよ。
こんなにも聖南を煽る葉璃を前にして、タガが外れる予感しかない。さらに二週間以上の禁欲も重なり、おまけに葉璃はずっと可愛い。
腰掛けてコンドームを外す聖南を見つめる視線には気付いているが、ひとまず処理を優先する。
我ながら一度射精したとは思えない〝ギンギン〟さに苦笑しながら、コンドームの上部でくるっと結んだ。
たぷんと溜まった精液がいつもより多い気がする。粘度も高そうだ。
「……聖南さん、……いつイったんですか?」
「ん? 一緒にイこって言っただろ。あの時」
「あ……そ、そうなんだ……」
二人の間ではあまり使用機会の無いコンドームが珍しいようで、葉璃はまじまじとそれを見ていて聖南は可笑しくなった。
なぜそんな事を聞くのかも不思議で、使用済みコンドームをティッシュで包みながら首を傾げる。
「何? どした?」
「い、いえ……聖南さんがいつイったのか分かんないのは、わりといつもなんですけど……。ゴムしてたら、もっと分かんないなって……」
「あぁ、俺がふにゃふにゃにならないから?」
「それもあるんですけど、あの……いつもだったら、中があったかくなるんで……、それで……」
「…………」
聖南は、新しいコンドームを開けようとしていた手を止めた。葉璃がこんなにも胸がキュンとするような発言をしなければ、ベッドの被害を最小限に抑えるためにきちんと支度をせねばと思い実行する気でいたのだ。
久しぶりの逢瀬だからなのか、葉璃の口から飛び出すのは男心をくすぐる発言ばかり。
唖然とする聖南の真横で、はにかんだような笑顔を見せる葉璃はいったいどういうつもりでそんなにも可愛いのかと、よく分からない怒りまで覚えた。
「葉璃。さっき言ったじゃん。無自覚に人の心持ってくのやめろって」
「えっ? 俺なんかヘンなこと言いました……?」
「言った」
「えぇっ? ど、どれですか? どれがヘンなことでした?」
真顔で迫る聖南に、焦る葉璃はギョッとしてベッドの端まで逃げた。
おそらく彼の心中は、「気持ち悪いことを言ってごめんなさい」と卑屈心で埋め尽くされているのだろうが、聖南の胸中はそうではない。
──マジで質が悪い……。
無自覚に、無意識に、そして何より偽りや胡麻擂りの無い本音を語るからこそ、葉璃を知る者達は皆丸ごと虜になってしまう。
自分に降りかかる災難や悪意は限界まで我慢する一方で、彼にとって大切な者が同じ境遇に立つと感情を荒らげるところなど、普段がのんびり屋のためにギャップが甚だしい。
いち早く葉璃を見つけ、攫ってしまって良かったと、聖南は近頃心の底から思う。誰の手にも染まっていない無垢なまま聖南に堕ちてくれて、あげく好きになってくれて、大袈裟でも何でもなく感謝すらしている。
「……葉璃」
「はい……っ」
聖南は、ベッドの端まで逃げて転げる寸前の卑屈な恋人の手を引いた。
「要するに、葉璃はゴム無しがいいって事だな?」
「えっ!? なんでそうなっちゃ……うぁ……っ」
掴んだ腕をグイと引き、腰を抱き寄せてベッドの真ん中まで運ぶと、慣れた様子で葉璃を押し倒した。
体に引っ掛かるバスローブを適当に畳んで葉璃の腰に敷き、意味深にジッと見詰める。
「セックスなんて、ドロドロのグッチャグチャになってナンボだよな」
「あっ……せなさ……っ、いきなりは……っ!」
葉璃曰く獣の目になったであろう視線で、押し倒した裸体をギラギラと観察した聖南は自身を握って孔に押し当てた。
ヒッ、と喉を鳴らした葉璃の頬を撫でると、躊躇いなく先端を押し込む。
「大丈夫。無茶はしねぇよ。葉璃を傷付けたいわけじゃない」
「ひぁっ……あっ……!」
閉じ切っていない滑ったままのそこは、そう強く腰を動かさずともぐぷぐぷと亀頭を呑み込んだ。
先ほどまで半端に挿入っていたところまでは難無く埋められ、ゴム越しでは感じられなかった温かさと締め付けに聖南は天井を仰ぐ。思わず吐息が漏れるほど、気持ちが良かった。
そこから先はほんの少しずつ、喘ぐ葉璃の顔色を伺いながら腰を進めていくしかない。
慣らしていた聖南の指が到達しない場所まで性器を収めなくてはならないので、愛おしい葉璃を傷付けないよう極めて慎重に動いた。
その最中には葉璃への愛撫も忘れない。
首筋や鎖骨を舐め、胸の突起を甘噛みする。空いた手でもう片方の突起ごと薄い胸を揉み、さらさらとくびれた腰を撫で回すと、葉璃は両腕を上げて聖南に抱き付いた。
「はぁっ、あっ……、ぅあ……っ」
「葉璃、……葉璃……っ」
「ひぅ……っ! うっ、んん……っ」
「舌出して。唾液ちょうだい」
「んむぅっ……! んっ、んっ、んっ……!」
挿入の途中で息苦しい事を承知の上でキスをせがんだ聖南は、葉璃の返事を待たずに唇を重ねた。
ようやく積極的になってくれた舌を存分に味わい、上顎や頬の内側を舐めては唾液を掠め取る。
苦しげな葉璃の呼吸に合わせて徐々に腰を動かしていくと、ひとまずの奥に先端が当たる感覚があった。
〝ひとまず〟というのは、これ以上の挿入はコツが要るからである。聖南の性器はすべて収まりきれていないが、怖がらせてもいけないのでまずは浅い挿抜を開始した。
葉璃にも気持ちよくなってほしいと、意識的に腰を巧みに動かし先端で前立腺を刺激する。
二回の射精と潮吹きで疲れきっていた彼の性器は、聖南からもたらされる快楽に負けて三度目を期待するかの如くピンと立ち、動きに合わせてゆらゆらと揺れていた。
「せ、なさん……っ、せなさ、んんっ」
「ん? なに、どした?」
「……っ、……いで、……」
「なに? なんか言った?」
何度か名を呼ばれ、もしかして痛いのかと一度動きを止める。
そんな聖南に、葉璃が上体を起こす勢いでぎゅっと抱き付いた。
行為の最中に背中を掻き抱かれる事はあっても、こうして体を起こし、何やら言いたげにしがみついて来るのは初めてだった。
「どした?」と優しく問うと、男殺しである葉璃がまたしても聖南の胸を焦がす発言をし始める。
「も、少しだけ、おれ……っ、せなさんと、いたい……っ」
「…………?」
「レイチェルさんと、……っ、ぷらとにっくらぶ、しないで……、ほしいっ」
「は、……?」
今この時に、絶対に聞きたくない名前が葉璃から飛び出した事で一瞬心がザワついたが、やはり聖南の恋人は斜め上の思考回路を持っていた。
「おれ、せなさん、すきです……っ、すき、なんです……っ」
「…………っ!」
「でも、ちゃんと、こころのせいり、……っ、するから……っ、それまでは、一緒に……いさせて、くださ……んっ……!」
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