狂愛サイリューム

須藤慎弥

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50❤︎束の間の逢瀬

50❤︎⑩※

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 たまらず聖南は、繋がったまま葉璃の体を抱き起こし、思いの丈をぶつけるように熱く抱き締めて唇を奪った。

 胸がキュンとする、どころの騒ぎではない。

 ただでさえ張り詰めて痛い性器が、温かな襞に囚われて今か今かと悦を待っている状態なのだ。

 葉璃の勘違いや誤解を解くのは、嫌いではない。もう逃げないと彼自身が言ってくれているので、滾々と説得染みた説明をしてやり、安心させてやる作業はむしろ率先して行いたいほどである。

 葉璃は寝込みを襲う前から、きっとその事でモヤモヤしていたのだろう。

 そもそも聖南の言ったプラトニックラブの意味を間違えていそうだが、何も説明してやらずに今に至るため葉璃が切なく想いを吐露するのも仕方がない。

 だがしかし、それにしても可愛すぎる。

 発言そのものはネガティブまっしぐらで葉璃らしいが、その裏には聖南への好意がたっぷりと乗っていた。

 恋人から「好きなんです」と必死にしがみつかれて、舞い上がらない男は居ない。


「その話は後だ」
「……なん、……っ! や、やぁっ、待って、早……んっ!」


 華奢な体を壊してしまいかねないほど、下から何度も激しく突き上げる。最奥への侵入には注意をはらいつつも、腰が止まらなかった。


「葉璃、好きだよ。……愛してる。俺が愛してるのは、葉璃だけだ。この先もずーっと葉璃しか要らねぇって、何回言えば分かんのかねぇ、この子は」
「んやっ……せなさん……っ! せな、さん……っ」
「葉璃、愛してるよ」
「んん……っ!」


 仰け反りそうな体を両腕でガシッと抱き、痕が残らない程度に首筋に噛み付く。


「愛してる」


 他人が聞けば鬱陶しく感じるほどに、何度も何度も愛を囁いた。

 言葉にしなければ伝わらない葉璃には、かえってこの方がいい。


「愛してるよ、葉璃」
「ん……っ、んぁっ……せな、さん……っ」


 素早く強い突き上げに翻弄されている葉璃は、弱々しく聖南の肩に手を乗せてひっきりなしに控え目な嬌声を上げている。

 聖南の愛の囁きに、頷いているようにも見える。

 あの録音内容でネガティブな彼は不安に駆られたのだろうが、聞けば大部分は嫉妬の感情で占められていそうである。

 だからこそ、聖南の心は大きな喜びに満ちた。


「葉璃……葉璃、愛してる」
「ふ、んっ……! んっ……ん、ぁ……っ」
「俺も同じなんだぞ、葉璃。頼むから俺のこと捨てないでくれ」
「んぇ……っ? な、あぁっ……」


 美しく舞う蝶々に育ってゆく様を間近で目の当たりにしていた聖南は、葉璃を捕まえたあの頃よりも余裕を失っている。

 それもこれも、殻を破った途端にあっという間に垢抜けた葉璃が、多方面から誘惑されてしまうほどに輝く存在になってしまったからだ。

 葉璃に関して耳にするのは、主に賛辞。パフォーマンスはもちろん、ここ最近では特に外見についてを褒める者が多いのだ。

 メディアでも卑屈でネガティブな発言ばかりを繰り出す葉璃の本質を面白がると共に、外見と内面のアンバランスさがウケてしまっている。

 それが悪いというわけではない。それどころか、この業界で生きていく上でそれは大きな武器になる。


「一度でいいから葉璃と話をさせてくれ、とか」
「は、はい……っ?」
「一度でいいから葉璃と食事に行きたい、とか」
「んっ……? あ、っ……あの……な、にっ?」
「携帯の番号教えてくれ、とか。……誰が教えるかっつの」
「せなさ……っ、なにを……、あぁっ!」


 腰の動きは止めぬまま好きに語る聖南の声に、葉璃は動揺した。

 思い出すと腹が立ってきたが、少々荒く襞を割っている聖南にもまだわずかな理性が残っている。


「言ってなかったけど、俺がETOILEのプロデューサーだからって葉璃をアテンドしてもらおうとするヤツ多過ぎんだよ」
「んっ、んっ……!? ひぅっ……うぅ……っ、せなさ、ん……っ、奥だめ……だめ……っ」
「それもスタッフから俳優から同業まで多種多様。いい加減にしろって感じ」
「あっ……あっ、せなさん……っ! なか、ぐりぐり、しな、……いで……っ」


 ただでさえ狭量である聖南が、笑顔でそれらを躱すなど出来るはずもない。この手の話題が出た瞬間に聖南の機嫌は地を這い、「無理」の一言でその場をあとにする。

 絶対にそんな事にはさせないが、二人きりのシチュエーションで葉璃と対峙させてしまうと、相手がもれなく本気になると分かっていて有耶無耶な返事すらしたくない。

 はじめは興味本位で接触したとしても、おそらくそのたった一度で葉璃の魅力に取り憑かれ、そして夢中になる。

 最終兵器である魅惑の瞳で数秒見詰められるだけで、その気にさせられる。

 葉璃はそれだけ、魅力的なのだ。

 それを自覚していないところが本当に厄介で、危機感を持てとどれだけ言っても卑屈な彼には届かず、ヤキモキしているのは往々にして聖南の方だ。

 葉璃が嫉妬で胸を焦がしているなら、聖南も密かに毎日のように同じ気持ちを味わっている。


「そろそろ馴染んだだろ。奥、いかせて」


 葉璃の体を持ち上げた聖南は、自身の腰を回すようにして性器を孔に挿れた。その拍子に、グジュグジュとローションが弾け出てくる。
 

「お、奥って、……まっ、待ってせなさん……っ、待っ……やぁっ──!」


 薄い体を支えたまま聖南は膝立ちになり、片手で葉璃の臀部を掴むと、先端に感じた引っ掛かりをこじ開けるようにさらに奥へと性器を突き入れた。

 内部からぐぷっと妙な音が響いた刹那、葉璃が掠れた声で啼いたのと、亀頭を潰されそうな感覚と共に蠢く内襞が聖南の性器を締め上げたのはほぼ同時だった。


「あ、ヤバ。……葉璃ー?」


 抱いた体から、力が抜けていくのが分かる。

 荒い吐息が肌に触れ、くたりと聖南に寄りかかった葉璃は呼び掛けに応じない。


「おーい、葉璃ー?」


 ヤバイと思った時には遅かった。

 ラストスパートをかけるべく最奥まで突き、ピストンを繰り返した聖南の猛攻に耐えきれなくなった葉璃は、完全に気を失っている。

 指で顎を持ち上げてみるも、まぶたは閉じ切り目尻には涙が溜まっていた。

 それを優しく舐め取りながら、聖南は苦笑を浮かべ壁に掛かった丸時計を振り返る。


「……ダメか。この時間だしな」


 まだ外は暗いが、時刻はまもなく午前五時。睡眠を取っていない葉璃には酷な時間帯だ。

 久しぶりだから無茶はしない、出来るだけ体液を残さないよう努める……どちらも聖南は守れなかった。

 眠ってしまった葉璃の体を横たえ、「ごめん」と心中で詫びたのは、あまり気の進まない睡姦に興じているから。

 本当なら葉璃を覚醒させて続きをしたいところなのだが、何故だか今日は叩き起こしたくなかった。

 膝裏を持ち上げ、葉璃の寝顔を存分に眺めつつ挿抜し、射精の寸前で性器を引き抜いて薄い腹に欲をかける。

 それでも性器は強度を保ったままで、しかし聖南はそれ以上の行為に及ぶ気にはなれなかった。

 葉璃に覆い被さり、自身の放った精液が腹に纏わり付くのも厭わずぎゅっと抱き付く。

 重いですよ、と柔らかな声が聞けないのは残念だが、体を抱いていられるだけで幸せだった。


「一緒にいさせて、か……。そんなの、俺のセリフだぞ、葉璃……」


 聖南が何気ない事に嫉妬するように、葉璃も不安と混ざり合った嫉妬を覚えてくれたのなら、二人の仲はまた前進したと言える。

 以前の葉璃なら、すべてを飲み込んだまま〝身を引く〟という体で勝手に聖南の前から消えていた。

 こうして言葉にしてくれただけでも、大きな進歩だ。

 葉璃は間違いなく、自惚れでもなく、聖南を愛してくれている。

 大きな勘違いをしているようなので、それを紐解く事から始めなくてはならないがそれこそが「俺たちらしい」と、聖南は寝ている葉璃に口付けてフッと笑った。







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