狂愛サイリューム

須藤慎弥

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7♡付き人

7♡

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─葉璃─



 ETOILEはCROWN同様、ステージ上ではアイドル路線を貫いてるけど、何故か最近ではバラエティー番組に呼ばれる事も多くなった。

 恭也がデビュー間もなくして準主役に抜擢された映画が公開間近という事で、番宣も兼ねてるらしい。

 大塚のレッスン生だった恭也は、演技の授業もほんの少しだけ受けてたみたいだけど、本物のそれは経験がない上に俺と同じ人見知りだから、一人で本当によく頑張ったと思う。

 今なんて早くも二作目を撮ってるって言うし、どんどん離れていっちゃう昔の同士は、それもこれも全部俺のためだって平然と言い放つ。


『ETOILEを、もっと多くの人に、認知してもらいたいんだ。  葉璃との歌が、俺の演技に結び付いて、その演技が、ETOILEを惹き立てるなら、俺は何でも演るよ』


 出会った頃の面影がすっかり無くなり、見違えたカッコイイ笑顔でゆっくりゆっくり語った恭也の言葉は、俺の胸を無条件に熱くさせた。

 恭也は本当に、ETOILEの事、そして俺の事を大事に思ってくれている。

 親友という垣根を超えちゃいそうなくらい信頼の厚い、無二の「パートナー」。

 聖南と恭也の違いは、そこに恋愛感情があるか無いか。  それだけなんだ。

 今思えば、恭也との出会いも必然的だった。

 こうなる事を予感していたみたいに、恭也が俺に声を掛けてくれて、ちょっと時間は掛かったけど俺も恭也に心を許した。

 ステージ上でも、バラエティーの現場でも、隣に恭也が居るから俺も頑張れる。

 今日の収録の後も、たくさん甘えてごめんねって、楽屋に戻ってから恭也に謝った。

 チャラ男……もとい、ルイさんに言われてからというもの、現状に甘んじている事をハッキリと自覚させられた俺は、少しでも成長するためにいっぱい周囲を見る事を心掛けている。

 すれ違ってしまってるLilyのメンバーとの溝は、まだ全然埋まらないままだけど……。


「……ぷっ……」
「っ何?  どうしたの、恭也」


 バラエティー番組の収録を終えた俺達は、林さんの運転する車で事務所に向かっていた。

 何やら重要な話があるとの事で、仕事が終わり次第寄ってほしいと、社長から呼び出された形だ。

 物思いに耽って流れる窓の外を眺めていると、隣に居た恭也が珍しく思い出し笑いをして肩を震わせている。


「ふふふふ……っ」
「なになに、何でそんなに笑って……」
「ふふっ……!  葉璃、これからますます、忙しくなるね」
「えぇ?  何が?  それと恭也が笑ってるのと何の関係があるの」
「ううん、今日も葉璃、面白かったなぁと思って」
「お、面白かった……?」


 今日も、ってどういう意味なんだろう。

 俺はいつもと変わらず、恭也の影となってビクビクしてただけだよ。

 面白可笑しいVTRの合間合間に、四組ほどの出演者のトークを挟んでいく形態の番組で……俺は最初と最後に一言ずつ同じ言葉を発したのみで収録は終わった。


『俺、要らなくないですか』


 恭也の番宣に付き添ってる俺は、番組に呼んでもらえた事はありがたいと思うけど絶対に必要ないよなって、そこでもネガティブ発揮しちゃってみんなに笑われたっけ……。

 もはや俺のこのネガティブな発言や卑屈な物言いが、キャラとして確立されてると聖南は言っていた。

 アキラさんとケイタさんにも、言われた。

 でも、こうして俺の本性を隠さなくていい状況にしてくれたのは、恭也の著しい成長のおかげなんだ。

 甘えるより先に甘やかされてる状況の場合、成長するにはどうしたらいいのかな。

 ……にしても、恭也ってば涙まで拭って笑ってるんだけど……感謝でいっぱいなのに、こんなに笑われるのはどうなの。


「恭也、……笑い過ぎ」
「葉璃のネガティブ、最高だよね。  俺、毎回楽しみなんだ。  今日はどんな、根暗な事、言うんだろうって」
「根暗友達だったのに……ひどいよ恭也。  ありがとって気持ち半分に削っていい?」
「いいよ。  葉璃には、感謝されるより、頼りにされたい、の方が大きい」
「……いつも頼りにしてるよ。  当たり前でしょ」
「ありがとう。  ネガティブ葉璃ちゃん」
「ちょっ……、ちゃん付け……っ?」


 聖南と二人きりの時よく言われてる「葉璃ちゃん」という呼び名が、まさか恭也から発せられるとは思わなくてドキッとした。

 恭也め……喋り方以外ぜんぶ変わっちゃったみたいだ。  しかもかなり聖南寄りの思考回路になってきてる。

 少し前から、たまに俺を揶揄うような事言ってきたりするもんね。  すごーく優しく、だけど。


「うん。  ダメだった?  ちなみに、葉璃がヒナタちゃんの時は、ヒーちゃん、ってこっそり呼んでるの」
「ヒーちゃん!?」
「ふふっ、可愛いでしょ。  ひよこ、みたい」
「ひよこって……」


 恭也がまだクスクス笑っている横顔を、唖然と見詰める。

 俺を大事に思ってくれてる事も、優しさで溢れた男だって事も知ってるけど……人はこんなに変われるのかってくらい、恭也が垢抜けてしまった。

 色んな役者さんやスタッフさんに揉まれた恭也は、去年デビューした頃よりもたった一年で一皮どころか三皮くらい剥けている。

 思い出したくないけど、ルイさんの言ってた事はまさに的を射ていて、変化が嬉しい反面やっぱり俺は置いてかれてるなって実感した。

 俺達のやり取りを聞いてる林さんも、運転しながらクスッと笑いを漏らしている。

 きっと林さんも、恭也の著しい成長に比べて変化の無い俺の現状維持に物申したいんじゃないかな……なんて、懲りずに卑屈な事を思った。




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