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26❥ゴシップ3
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しおりを挟む葉璃との交際に理解を示してくれ、引き離そうとしなかった社長には絶対に言ってほしくない台詞だった。
姪に手を出したのではと疑われた事、遠回しに葉璃を否定するような発言をされた事、どちらのショックも大きい。
写真についても、業界に精通した社長ならば、たった一ヶ月やそこらで裏取りも何もないだろうと一蹴したはずだ。
これが事務所の稼ぎ頭である聖南と、自らの姪が関わる事でなければ、だが。
「何が言いてぇの」
「…………ゴホンッ」
聖南は背凭れから体を起こし、ガクンと項垂れる。
怒鳴りつけたい反面、冷静でいなければという葛藤もあってか声が震えた。 社長は社長でわざとらしい咳払いをし、僅かな良心の呵責に苛まれて表情を強張らせている。
社長の放った言葉は許せない。 しかし、聖南は思った。
『てかこんなのばら撒かれちゃマズいんだけど……』
苛立ちの中、一番によぎったのは葉璃の顔だ。
聖南は世間に恋人の存在を公にはしているが、具体的な人物像は一切語った事がない。
〝可愛くて綺麗〟、〝思いやりがある〟、〝聖南に意見できる貴重な存在〟等、何とも概括的な表現で惚気けるに留めている。
恋人居ます宣言から早一年が経とうとしているにも関わらず、聖南の噂の恋人を激写しようと自宅マンション下でマスコミが張っている時もあるけれど、当然ながらただの一度も葉璃との交際を取り沙汰された事はない。
すなわちマスコミ各社は聖南の恋人についての情報がゼロに等しく、今回送り付けられた写真がそれらに広まると、間違った決定打を与えてしまう。
加えて、大塚社長の姪であるレイチェルと聖南には接点がいくらもあるため、信憑性も申し分ないというわけだ。
自身のアイドル生命と葉璃への愛を賭けた件の宣言が、すべて無駄になっては意味が無い。
何より、この意味深に切り取られた写真が葉璃の目に留まる事に一番の恐怖を感じている聖南は、無闇に不機嫌を顕にするわけにもいかなかった。
「……これを送ってきた奴の特定は?」
「全力で進めている」
『……って事は手掛かりナシかよ……』
差出人不明というのが恐ろしい。
記者からであれば、お伺いを立てられて交渉に入れる。 以前のスキャンダルはテレビ局へのタレ込みだったため防げなかったが、双方に不利益となる裁判沙汰を嫌う大手出版社は、基本的には順序を追ってくれるのが常だ。
新聞社や出版社、テレビ局、インターネットを介しての暴露ではなく、事務所に直接送り付けてくるという事例は昨今ではあまり無い。
考えられる差出人の思惑は三つ。 聖南の失脚を狙っているか、対価を求めているか、単なる興味本位か──。
いずれにせよ、いつどのタイミングでこの写真が広まるかがまったく予期出来ないので、うかうかしていられない。
「レイチェルはこの写真の事知ってんの?」
「あぁ、先程電話で問い質した。 流出してはならんから、ブツはまだ見せてはいないが」
「……なんて言ってた?」
「お前に聞けと言われたよ」
「…………は?」
『何をだよっ。 そんな意味深に濁したらますます疑われちまうじゃん……、あの女……っ』
いつの間にか聖南は、知らぬうちに火種を抱えていた。
不快だ、不愉快だ、と少しずつ溜まっていたレイチェルへのマイナスイメージが、ついにメーターを振り切った。
おとなしくしていればいいものを、外堀を埋める作業を怠らないレイチェルは、ここぞとばかりに聖南を捕らえるべく平気で我を通す。
身に覚えのない事で疑われたくない。
葉璃にはもちろんだが、聖南にとっては父親代わりであり命の恩人とも言うべき社長にも。
レイチェルの言葉だけでなく自分の言葉も聞いてくれ、とショックを引き摺りながら、聖南は不必要だと思われた弁解をした。
「信じてくれ」
「……うん?」
「この写真、俺とレイチェルがクローズアップされてるけど、アキラとケイタもこの場に居たんだ。 日時も覚えてる。 ルイのおばあさんが亡くなった日だ。 葉璃の喪服の件で社長に電話した時、レイチェルが来たって話したじゃん。 あの時なんだよ」
「……そうなのか」
「二人に証言させてもいい」
「うむ……」
やはり血の繋がりには勝てないのか、社長はレイチェル側の言い分にしか耳を貸さないような気がした。
今も、アキラとケイタに証言してもらうと言った聖南は社長の表情の裏をこう読み取った。
『口裏合わせる気じゃないのか、なんて思ってんだろうな……』
憤りを通り越し、悲しくなってきた。
いざという時、いつも助けてくれた恩人だからこそ、信じてほしかった。
葉璃との交際がバレてしまった際、聖南の生い立ちを知る社長は否定的な言葉を一つとして吐かなかったのだ。
聖南の糧になるならば、これからもよろしく頼む、と。
交際そのものを黙認し、応援までしてくれていた社長が神妙に「五分五分だ」と呟いた。
現にこうしてねじ曲がった真実を写す証拠がある、よって疑いたくはないが信じきれないのだと、喪失感を抱えた聖南はそう汲み取った。
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