狂愛サイリューム

須藤慎弥

文字の大きさ
334 / 601
33♡悪意と嫉妬

33♡4

しおりを挟む



 聖南は断固として同調してくれないけど、やっぱり二人は何となく似てるんだよね。

 喋ってる時は全然似てないのに。

 空気が重たくならないように計らうルイさんより、拗ねて唇を歪ませてる聖南の方が年下に見えるのは、俺が普段の甘えん坊な聖南を知ってるからかな。


「ハルポンはセナさんの真顔、怖ないんか?」
「いえ、そんな……。綺麗だなぁ、とは思いますけど。黙ってニヤついてる方がちょっと怖いです」
「それは誰でも怖いやろ」


 ぷぷっ……! たしかにそうだ。

 でも聖南はよくそうするんだもん。

 気付いたら俺のことを見ていて、目が合うと八重歯を覗かせてニヤつく。

 それが何ともセクシーで、ジッと穴が開くほど凝視されても平気になった。狼狽えなくなったってだけで、ほっぺたは熱くなっちゃうけど。

 ルイさんの的確なツッコミが可笑しくて、堪えきれずに笑っていると聖南から二の腕をツンっと突かれた。


「なぁ葉璃、俺そんな時ある? 黙ってニヤニヤしてた? いつ?」
「いつとは言えないですけど、たまにありますよ。読めないんですよね、あのニヤニヤがいつ出てくるのか」


 正直に答えたのに、聖南は「えー」と不満そうにまた唇を歪ませた。

 俺がルイさんに加担してると思っていじけてるんだろうな。と言っても、ほんとの事だからしょうがない。

 ルイさんの大袈裟な言い回しも、あながち嘘じゃないと思うんだ。

 真顔で人を威圧するタイプなのは分かるけど、それは聖南の顔があんまりにも整い過ぎてるから。

 年齢イコール芸歴の聖南は、それでなくても同業者の人達から怖がられてる。そこに居るだけで物凄い存在感とオーラを放ってるし、俺だって聖南とこんな関係じゃなかったら震えて近寄れない。


「ニヤついてんのか……俺。完全に無意識だわ。気持ち悪くね?」
「全然! また何か企んでるのかなって思うと可愛いです。あ、でもちょっと怖いですよ、ほんとにちょっとだけ」
「このセナさん相手に可愛いて……」


 恐ろしい……って、ルイさん。うっかり心の声が出ちゃってるよ。

 俺はさっきから本心しか言ってないってば。

 だって、だって、みんなは知らないかもしれないけど、聖南は可愛い人なんだよ。

 離れてるのが耐えられないから俺の一部を食べて融合してたい、って本気で言ってくるほど、依存が激しい。


 〝いつどんな時も葉璃の事を考えてる〟
 〝大好き〟
 〝愛してる〟
 〝離れないで〟


 こんなに狂気的に愛してくれる人なんて、そうそう居ないんじゃないかな。

 家では信じられないくらい甘えん坊だし、同棲を始めてからはそれが顕著だし、カメラの前やステージの上での聖南はもはや別人に見えてしまう。

 それって、俺はすごくいい事だと思ってて。

 〝CROWNのセナ〟と〝日向聖南〟を使い分けられてるのなら、その方がいいよ。

 聖南は絶対に、仕事とプライベートを分けなきゃいけない人だ。


「あ、てかこんな話してる場合じゃなかった」


 そーっと隣を窺おうとした時、同じタイミングで聖南がパチンっと指を鳴らした。

 ほんとだ。聖南も仕事があるのに、こんなところで時間食ってちゃダメじゃん。……って、聖南が話を脱線させた気が……。

 前のめりになった聖南が、ルームミラー越しに目が合ったルイさんと目配せしている。


「ルイ、明日は徹底的に葉璃に張り付いててやってくれ」
「そらもちろん。両方リハーサルありますからね。え、てか……徹底的にって、もしかして何か進展あったんすか?」
「明日の昼頃、アイが恭也目当てにドーム周辺に来る。いよいよ直接対決だ」
「うわっ、マジっすか!? てかハルポンやなくて恭也に会いにって何なんすか?」


 〝直接対決〟って言い方がちょっと怖い。

 そしてさすが、理解の早いルイさんは聖南からの説明を受けて一発で現在の状況を把握した。

 恭也、水瀬さん、アイさん、明日のドームでのリハーサル……これらのキーワードが出てくる説明は、俺じゃ本にまとめてくれてもそう簡単に理解できないくらい複雑だ。


「そんな偶然あるんや……もっと早う知ってりゃビクビクせんとすんだのになぁ」
「…………っ」
「あーあ……今それは言わねぇ方がいいぞ」
「え?」
「………………」


 ……分かってるもん。

 俺が戦犯だって言いたいんでしょ。分かってますとも。

 こんなに近くにいるのに、俺を気遣った聖南がルイさんに経緯を説明する。

 いやいや説明しなくてもいいじゃんって思ったけど、聖南は話したそうで、ルイさんは聞きたそうにしてて……はぁ。

 案の定、ルイさんは大爆笑だ。


「あははは……っ! あ、あかん……っ、笑いごとやないのに笑てまう……! ハルポンそれはあかんで! いくら何でもターゲットの自覚無さすぎやん!」
「だから俺は責任を取ろうとしたんです。でも聖南さんと恭也に止められて、命拾いしました。このご恩は一生忘れません」
「大袈裟~~!!」
「うるさいですよ、ルイさんっ」


 俺が恭也から聞いたその日に聖南に伝えてれば、もう少し早く事態は動いてたかもしれない。そんなのもう、昨日から何十回と思い出しては項垂れてるよ……っ。

 恭也も交えた昨日のひと騒動をキッカケに、当然ながらすぐに接触できる日時が決まった。あれだけ探しても見つからないと言ってた人が、たった半日で。

 これでまた、俺の罪悪感が上乗せされたんだよ……。


「ルイ、明日のリハ中と特番当日は要注意だ。ルイもCROWNで出番控えてるし大変かと思うけど、葉璃のこと頼むぜ」
「りょ!」


 軽いな、とルイさんに苦笑いして見せた聖南は、癖のように腕時計を見た。それから俺の頭をもふもふっと撫でて、「行ってきます」と笑ってくれた。

 ルイさんの車から降りた聖南は愛車に乗り込み、去り間際一回だけクラクションを鳴らす。「バイバイ」か、「好きだよ」か、二回目の「行ってきます」か……どの意味だろう。

 関係ない話が多かったけど、聖南とルイさんの仲が悪くなってるわけじゃなさそうで安心した。

 それを確認できただけ、俺はとっても良い気持ちで仕事に臨める。

 そう、今日の朝一番の仕事はSHDエンターテイメントでのレッスンだ。

 ……気合い入れなくちゃ。




しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

隊長さんとボク

ばたかっぷ
BL
ボクの名前はエナ。 エドリアーリアナ国の守護神獣だけど、斑色の毛並みのボクはいつもひとりぼっち。 そんなボクの前に現れたのは優しい隊長さんだった――。 王候騎士団隊長さんが大好きな小動物が頑張る、なんちゃってファンタジーです。 きゅ~きゅ~鳴くもふもふな小動物とそのもふもふを愛でる隊長さんで構成されています。 えろ皆無らぶ成分も極小ですσ(^◇^;)本格ファンタジーをお求めの方は回れ右でお願いします~m(_ _)m

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

あの夏の日を忘れない ~風紀委員長×過去あり総長~

猫村やなぎ
BL
椎名由は、似てるという言葉が嫌いだった。 髪を金にして、ピアスを付けて。精一杯の虚勢を張る。 そんな彼は双子の兄の通う桜楠学園に編入する。 「なぁ由、お前の怖いものはなんなんだ?」 全寮制の学園で頑張り屋の主人公が救われるまでの話。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

処理中です...