狂愛サイリューム

須藤慎弥

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33♡悪意と嫉妬

33♡4

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 聖南は断固として同調してくれないけど、やっぱり二人は何となく似てるんだよね。

 喋ってる時は全然似てないのに。

 空気が重たくならないように計らうルイさんより、拗ねて唇を歪ませてる聖南の方が年下に見えるのは、俺が普段の甘えん坊な聖南を知ってるからかな。


「ハルポンはセナさんの真顔、怖ないんか?」
「いえ、そんな……。綺麗だなぁ、とは思いますけど。黙ってニヤついてる方がちょっと怖いです」
「それは誰でも怖いやろ」


 ぷぷっ……! たしかにそうだ。

 でも聖南はよくそうするんだもん。

 気付いたら俺のことを見ていて、目が合うと八重歯を覗かせてニヤつく。

 それが何ともセクシーで、ジッと穴が開くほど凝視されても平気になった。狼狽えなくなったってだけで、ほっぺたは熱くなっちゃうけど。

 ルイさんの的確なツッコミが可笑しくて、堪えきれずに笑っていると聖南から二の腕をツンっと突かれた。


「なぁ葉璃、俺そんな時ある? 黙ってニヤニヤしてた? いつ?」
「いつとは言えないですけど、たまにありますよ。読めないんですよね、あのニヤニヤがいつ出てくるのか」


 正直に答えたのに、聖南は「えー」と不満そうにまた唇を歪ませた。

 俺がルイさんに加担してると思っていじけてるんだろうな。と言っても、ほんとの事だからしょうがない。

 ルイさんの大袈裟な言い回しも、あながち嘘じゃないと思うんだ。

 真顔で人を威圧するタイプなのは分かるけど、それは聖南の顔があんまりにも整い過ぎてるから。

 年齢イコール芸歴の聖南は、それでなくても同業者の人達から怖がられてる。そこに居るだけで物凄い存在感とオーラを放ってるし、俺だって聖南とこんな関係じゃなかったら震えて近寄れない。


「ニヤついてんのか……俺。完全に無意識だわ。気持ち悪くね?」
「全然! また何か企んでるのかなって思うと可愛いです。あ、でもちょっと怖いですよ、ほんとにちょっとだけ」
「このセナさん相手に可愛いて……」


 恐ろしい……って、ルイさん。うっかり心の声が出ちゃってるよ。

 俺はさっきから本心しか言ってないってば。

 だって、だって、みんなは知らないかもしれないけど、聖南は可愛い人なんだよ。

 離れてるのが耐えられないから俺の一部を食べて融合してたい、って本気で言ってくるほど、依存が激しい。


 〝いつどんな時も葉璃の事を考えてる〟
 〝大好き〟
 〝愛してる〟
 〝離れないで〟


 こんなに狂気的に愛してくれる人なんて、そうそう居ないんじゃないかな。

 家では信じられないくらい甘えん坊だし、同棲を始めてからはそれが顕著だし、カメラの前やステージの上での聖南はもはや別人に見えてしまう。

 それって、俺はすごくいい事だと思ってて。

 〝CROWNのセナ〟と〝日向聖南〟を使い分けられてるのなら、その方がいいよ。

 聖南は絶対に、仕事とプライベートを分けなきゃいけない人だ。


「あ、てかこんな話してる場合じゃなかった」


 そーっと隣を窺おうとした時、同じタイミングで聖南がパチンっと指を鳴らした。

 ほんとだ。聖南も仕事があるのに、こんなところで時間食ってちゃダメじゃん。……って、聖南が話を脱線させた気が……。

 前のめりになった聖南が、ルームミラー越しに目が合ったルイさんと目配せしている。


「ルイ、明日は徹底的に葉璃に張り付いててやってくれ」
「そらもちろん。両方リハーサルありますからね。え、てか……徹底的にって、もしかして何か進展あったんすか?」
「明日の昼頃、アイが恭也目当てにドーム周辺に来る。いよいよ直接対決だ」
「うわっ、マジっすか!? てかハルポンやなくて恭也に会いにって何なんすか?」


 〝直接対決〟って言い方がちょっと怖い。

 そしてさすが、理解の早いルイさんは聖南からの説明を受けて一発で現在の状況を把握した。

 恭也、水瀬さん、アイさん、明日のドームでのリハーサル……これらのキーワードが出てくる説明は、俺じゃ本にまとめてくれてもそう簡単に理解できないくらい複雑だ。


「そんな偶然あるんや……もっと早う知ってりゃビクビクせんとすんだのになぁ」
「…………っ」
「あーあ……今それは言わねぇ方がいいぞ」
「え?」
「………………」


 ……分かってるもん。

 俺が戦犯だって言いたいんでしょ。分かってますとも。

 こんなに近くにいるのに、俺を気遣った聖南がルイさんに経緯を説明する。

 いやいや説明しなくてもいいじゃんって思ったけど、聖南は話したそうで、ルイさんは聞きたそうにしてて……はぁ。

 案の定、ルイさんは大爆笑だ。


「あははは……っ! あ、あかん……っ、笑いごとやないのに笑てまう……! ハルポンそれはあかんで! いくら何でもターゲットの自覚無さすぎやん!」
「だから俺は責任を取ろうとしたんです。でも聖南さんと恭也に止められて、命拾いしました。このご恩は一生忘れません」
「大袈裟~~!!」
「うるさいですよ、ルイさんっ」


 俺が恭也から聞いたその日に聖南に伝えてれば、もう少し早く事態は動いてたかもしれない。そんなのもう、昨日から何十回と思い出しては項垂れてるよ……っ。

 恭也も交えた昨日のひと騒動をキッカケに、当然ながらすぐに接触できる日時が決まった。あれだけ探しても見つからないと言ってた人が、たった半日で。

 これでまた、俺の罪悪感が上乗せされたんだよ……。


「ルイ、明日のリハ中と特番当日は要注意だ。ルイもCROWNで出番控えてるし大変かと思うけど、葉璃のこと頼むぜ」
「りょ!」


 軽いな、とルイさんに苦笑いして見せた聖南は、癖のように腕時計を見た。それから俺の頭をもふもふっと撫でて、「行ってきます」と笑ってくれた。

 ルイさんの車から降りた聖南は愛車に乗り込み、去り間際一回だけクラクションを鳴らす。「バイバイ」か、「好きだよ」か、二回目の「行ってきます」か……どの意味だろう。

 関係ない話が多かったけど、聖南とルイさんの仲が悪くなってるわけじゃなさそうで安心した。

 それを確認できただけ、俺はとっても良い気持ちで仕事に臨める。

 そう、今日の朝一番の仕事はSHDエンターテイメントでのレッスンだ。

 ……気合い入れなくちゃ。




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