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40♡恋路
40♡10
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もう……結局トータル五時間になったじゃん。
俺の言い方が悪かったのか、「煽りやがって」とぼやく聖南からの圧が凄かった。
あれから、あれよあれよという間にエッチになだれ込んだ。ゴムを付けた聖南はたっぷり一時間ナカを堪能しつつ、俺にキスをしまくってくれたおかげでカサカサが悪化した。
……おかしいなぁ。注意が〝煽った〟ことになるなんて思わなかったなぁ。
なんだか腑に落ちないけど、聖南からのキスで苦しくなりながらもしっかり気持ちよくなっちゃった俺は、もう何も言えない。
キスのし過ぎで唇が腫れてるように感じる。
鏡で確認したいけど、昨日のことがあるから洗面所にも行きたくなくて。何なら、廊下に出た瞬間にボフッと顔面が熱くなる。重症だよ。
この家のあちこちでエッチの思い出が増えていくのは、あんまりいい事じゃない。
いつどんな時に、どこでどんなエッチをしたのか、さらにはシチュエーションまで鮮明に覚えてるから。
顔面〝ボフッ〟ばっかで、過ごす場所がなくなるんだもん。
我慢できないからって、いろんなところですることないじゃん。「ベッドじゃダメなの?」なんて言うと、今度は〝誘ってんの?〟とか言ってニッコリ笑れちゃうんだろうし。
獣になった聖南は、心臓に悪い。
全身からセクシーオーラを放ちまくるから、俺はいつも喜んで流されてしまう。
だから俺の唇は、昨日の今日で何ヵ所か切れちゃってるんだ。
「おーい、葉璃ー。おいでー」
「はーい」
例の洗面所で支度をしていた聖南が、愛犬を呼ぶ飼い主みたいに優しい声で俺を呼んだ。
今日は聖南の方が早起きだったから、絶叫じみた呼び声はしない。
トコトコと聖南のもとまで行くと(鏡の前には立ちたくないから入口でストップした)、棒状の何かを持った恋人がニコッと俺に微笑みかけて、スッと顎クイしてくる。
「唇よこしな♡」
「なっ、なんでですか!」
「メロメロするつもりはねぇよ。リップ塗ってやる。切れちまってるもんな」
「……リップ?」
「ほら」
「……んっ!」
手に持ってる黒いの、リップだったんだ。と聖南の手元に気を取られた瞬間、ちゅっと唇を奪われた。
体が言うことをきかなくなるメロメロはされずに済んだのに、触れるだけのキスもこれはこれで照れくさい。
軽やかな音を立ててすぐに離れていった聖南は、俺の唇にリップを口移しした確信犯だ。カサカサになるまでキスした本人が、キスでリップを塗るなんて気障過ぎる。
でもそれが様になるのが、聖南なんだよね……。
「ん、ぷるぷるだ♡」
「これ……塗ったことになるんですか?」
「なるなる」
八重歯を見せての聖南の笑顔に見惚れながら、ほんとかなぁと人差し指で唇に触れてみる。
……あ、ほんとだ。すごい。
ちゅってしただけなのに、カサカサだった唇がほんとにしっとりしてる。
聖南の唇もつるるんとしたままだし、それになんか……。
「わ、何これ……いい匂いですね。はちみつ? バニラ? 甘くて美味しそうな匂いだ……」
「それメロメロしたら意味無いからな?」
「しませんよっ」
「あはは……! これな、コンクレの春の新作なんだよ。めちゃめちゃ保湿してくれてぷるぷるになんのにベタつかねぇの」
「へぇ……」
使ってみて良かったから貰ってきた、と笑う聖南から、俺は有名化粧品メーカーの新作だという保湿リップを受け取った。
モデルとしての仕事も多い聖南だから、メイクさんとかメーカーさんからこういうものを受け取る機会は頻繁にあって、珍しいことじゃない。
俺も一社だけモデル契約してる雑誌があるから、そのおかげでほんの少しこの手の知識が増えてきた。コンクレはまさしく、新作が発売されるや瞬く間に品薄になるほどヒット商品を連発する大手メーカーと言える。
その会社が手掛けてるとあって、口移しなのにぷるぷるが持続してるし、化粧品みたいな匂いが全然しないのもすごくいい。
事務所に送ってもらうため聖南の愛車に乗り込んでも、俺はまだ唇をくちばしみたいに尖らせて甘い匂いを楽しんでいた。
「──あ、そうだ。聖南さん、俺今日、夕方の収録終わったら事務所に集まるように言われてるんですよ。恭也とルイさんも一緒に」
後部座席で寝っ転がって、ルームミラー越しにする聖南との会話も慣れたものだ。
今日一日のスケジュールを思い出してたら、ふと最後の仕事終わりに社長さんから呼び出しがかかっている事を聖南に報告し忘れていた。
昨日林さんからそう伝えられた時は、そこまで深刻そうではなかったから気にしてなかったんだけど……。
社長さんからの呼び出しでは、いつもビックリ仰天な報告とかとんでもない業務連絡が待ち受けてるからなぁ。
恭也とルイさんも呼ばれてることだし、俺への緊急任務ではないと思う。たぶん……。
ルームミラー越しに眼鏡聖南と目が合うと、「あぁ」と頷いて、まったく驚いてなかった。初聞きじゃなかったらしい。
「それな、俺らも行くよ」
「えっ? そうなんですか? 俺らってことは、アキラさんとケイタさんも来るんですね?」
「そ。話っつーか報告が二つあるんだ」
「報告?」
……ってことは、CROWNとETOILEが勢揃いするんだ。
みんなが揃うのはクリスマス特番の日以来だから、ちょっと楽しみになってきた。大好きな人たちが集まるなんてすごくテンション上がるよ。
でも報告っていうのが気になる。
しかも二つもあるなんて。
「報告が二つ……なんだろう……。聖南さんは知ってるんですよね?」
「うん、知ってる」
「俺にだけこっそり教えてくれたり……」
「しねぇな」
「やっぱりー!」
そうですよね、と呟くと、朝陽が眩しかったのか眼鏡からサングラスに替えた聖南がクスッと笑った。
「まぁ悪い話ではねぇから」
「そうなんですね」
社長から告げられる〝緊急任務〟に俺がビビってるって、聖南にはバレてるんだろうな。
仕事においてはえこ贔屓してくれない聖南は、事務所の地下駐車場に着くまでずっと「大丈夫だって」と言いながら俺の顔を見てクスクス笑ってた。
社長が俺たちを集めて語ろうとしてる内容を知ってる聖南が、こう言ってるんだ。
だったら大丈夫……かな。
「じゃあな、葉璃ちゃん。また夕方に」
「はい。行ってらっしゃい、聖南さん」
「くぅ~……! それマジで好き♡」
「へへっ……」
「葉璃も行ってらっしゃい。緊張して手が震えた時はどうするんだっけ?」
「手のひらに〝聖南〟って書きます!」
「よろしい♡」
乗り込んだ時とは反対側のドアから降りる間際の、甘いひととき。
これから仕事に向かう俺と聖南は、このやりとりをしてからバイバイしないと落ち着かない。
降りてすぐ、俺は聖南の車が走り去るところを見送ることなく、事務所内に入らないといけなくなったからだ。
でも全然、そんなのどうってことない。
運転席側の窓から腕を出した聖南が、こっそり覗いてる俺に手を振ってくれるのを〝偶然〟目に出来るだけで、幸せなんだもん。
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