狂愛サイリューム

須藤慎弥

文字の大きさ
433 / 632
41❤︎新境地

41❤︎

しおりを挟む

❤︎   聖南   ❤︎



 葉璃と仲直りをするには、話し合いとセックスが必須であるということが改めて分かった。

 ぐるぐるする葉璃を丸ごと愛しているとはいえ、いったい何が原因なのかを追及しなければ根本的な解決にはならない。

 あまり時間を置くとロクなことにならないあげく、放っておくとすぐに〝別れ〟を選ぼうとする葉璃には、しつこいほど愛情表現してやる必要がある。

 そのせいで聖南は昨夜、葉璃の唇をカサつかせてしまったが、あれは愛情の裏返しだと彼自身も分かってくれているだろう。

 嫉妬でぐるぐるしている葉璃は、たまらなく可哀想で可愛い。葉璃の泣き顔が好きだとのたまう聖南にとって、その度に二つの思いに駆られて困ってしまう。

 〝不安を無くしてやりたい気持ち〟と、〝ずっとそうやって俺のことだけを考えていてほしい〟という相反する思いだ。

 日々愛おしさが募っていて、会話もそこそこにそういう流れに持っていってしまうのは聖南の悪い癖だ。

 それはよくないと日頃の行いを改め、どこか上の空だった葉璃を心配して今日はとことん話を聞いてやるつもりだった。

 しかし思い詰めたような表情を浮かべていた葉璃に、まんまとしてやられた。

 耳を澄ませておいて良かった。

 いつでも獣になれる聖南の前であんな発言をすれば、それは〝煽り〟と捉えても仕方がない。自身の粘膜液を葉璃の体内に注ぎたがる聖南のタガは、いとも簡単に外れるのだ。

 言葉とは裏腹にベッドでの葉璃がやけに積極的だったことからも、今はたっぷりその身に分からせる方が先決だと思った。


「──という現状だ」


 社長の声に、肘掛けに腰掛けていた聖南はハッと我にかえった。葉璃の隣を死守するため毎度そこに座る聖南だが、もはや誰も違和感を覚えない。

 キリッとした無表情で真剣に耳を傾けているように見せかけ、実は昨夜のあれこれを思い起こしていた聖南は気まずさから軽く咳払いした。


 ──そうだった。社長が話してんのに俺ってやつは……。


 現在、成田と林も含めた全員が揃ったところで、聖南のスキャンダルが報じられるかもしれない旨を社長が皆に説明してくれているのだ。

 CROWNの三人はそれぞれの仕事が忙しく、レギュラーラジオと音楽番組以外で揃うことが滅多に無いためにこうした場を設けた。

 それなら電話でいいじゃん、という聖南の言葉に、社長が難色を示したからだ。

 前回の件でアキラとケイタからの信用をも失っていることを、社長はかなり気にしているらしい。直接自らの口で〝レイチェルに肩入れしているわけではない〟ことを伝えたいのだと言っていた。


「セナが言うには、報道規制の解除を待たずして取り沙汰される可能性もあるとの事。これをお前たちに情報共有しておきたくて今日は集まってもらった。どこで何を聞かれても、報じられた相手が誰であろうと、「セナの恋人ではない」と断言してくれて構わない」


 アキラとケイタは、聖南達と対面するソファに並んで腰掛けている。信頼回復を図りたい社長の言葉に、揃って「ふーん」「へぇ」と気のない返事をした二人には、その意図は伝わっていなさそうである。

 聖南同様この業界に長く居る二人も、なぜそんなことで呼び出されたのだろうと不思議で仕方がないのだ。

 真実を知る彼らには、聖南の捏造スキャンダルが報じられたところで痛くも痒くもない。マスコミからの追及をどういなすべきかまで熟知している二人に、いちいち集合をかけてまで話すことはなかった。……と、社長には悪いが聖南はそう思っている。


「ごめんな。俺が迂闊だったんだ」


 だがしかし、現時点で二人には迷惑をかけてしまっていると小耳に挟んでいる聖南は、素直に詫びた。

 するとようやく、この謎の集まりを訝しみ険しかった二人の表情が緩んだ。


「撮られちゃったもんはしょうがないよ。セナの恋人が誰なのか、どこの週刊誌も血眼になって追ってるもんね」
「俺らのインタビューでも聞かれるからな。『セナさんの恋人に会ったことはありますか』って。ここ半年はマジでその質問多い」
「そうそう。俺とアキラは「会ったことない、どんな人かも知らない」って答えてるけど、そのまんまでいいってことだよね?」


 多少なりとも週刊誌の世話になったことのあるケイタはもちろん、スキャンダルとは無縁のアキラまでもが聖南の心情を汲んでくれている。

 交際を公にしたくないという葉璃の気持ちを知っている二人だからこそ、余計な打ち合わせを必要としない。


「あぁ、それで頼む。セナとレイチェルとの仲が取り沙汰されても、世間には絶対に誤解されてはならん」
「…………」
「恭也も、ルイも、頼んだぞ」
「はい、分かりました」
「オッケー」


 それまで黙っていた恭也とルイも、揃って〝もちろん〟と言いたげに食い気味で頷いた。

 ちなみに恭也は葉璃の隣、ルイは恭也側の肘掛けに腰掛けていて、今さらながらに聖南は可笑しくなってきた。

 本来は二人掛けなのだが、ここにCROWNと ETOILEが全員揃うといつもこちら側のソファだけが無理をさせられている。

 スペースがあればアキラとケイタもこちら側に集合しそうで、それもこれもすべては葉璃がここに居るからだ。

 聖南を筆頭に、葉璃を守るようにして取り囲む男たちの過保護っぷりはいっそ清々しいほどで、それらをナチュラルにやってのけるから葉璃は気付かないのだ。

 どれだけ周囲から愛されているか、大切に思われているかを……。


「これはあくまでもお前たちへの情報共有。報告は別にあってな。セナ、もう話してもいいのか?」
「あ、あぁ、……大丈夫」


 そっと葉璃の肩に腕を回そうとしていた聖南は、相変わらず敏腕刑事のような風体の社長に頷いて見せた。

 すると社長は、「うむ」と頷き返すなりゆっくりと立ち上がった。




しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

灰の底で君に出会う

鮭茶漬け
BL
両親を亡くした高校生、神崎透は叔母の家に引き取られて暮らしている。しかしその家は、家族と呼べる場所ではなかった。家事、雑用、そしてバイト。どれだけ働いても感謝されることはなく、透は「穀潰し」と呼ばれながら日々を過ごしていた。 それでも透は思っている。ここに置いてもらえるだけでありがたい、と。 これは――居場所を持たなかった少年が、初めて愛を知るまでの物語。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

処理中です...