紳士オークの保護的な溺愛

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大切なもの

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■ 新しい日常

――幸せに、慣れていくということ

挙式から三日。
屋敷は、驚くほど変わっていなかった。

壁も、家具も、庭の石畳も。
だが――
空気だけが、違う。

朝、私はいつも通りに目を覚ます。
だが、隣にあなたがいる。

それだけで、
一日が「確認」から始まるようになった。

……ここにいる。
今日も。

私は、起こさぬように静かに身を起こす。
すると、背中に、ぬくもりが触れた。

あなたの手だ。
寝ぼけたまま、外套を探すように。

私は、思わず小さく笑う。

「……ここにいますよ」

あなたは、目を閉じたまま頷く。
それだけで、また眠る。

私は、胸の奥がきゅっとするのを感じた。

――これが、
――幸せに慣れていく、ということか。



■ 夫・ガスパール

――不器用な自覚

街へ出ると、呼び止められる。

「旦那様」
その呼び方に、私は一瞬、足を止める。

……ああ、そうだった。

私は、照れ隠しに咳払いを一つ。

「……用件をどうぞ」

あなたが横で、
くすっと笑うのが分かる。

帰り道、私は言う。

「……まだ、慣れませんね」

あなたは首を振る。

「でも、嫌そうじゃない」

私は、正直に答える。

「ええ。
 ただ……大切なものが増えた分、
 慎重になっているだけです」

あなたは、少し考えてから言う。

「それ、すごくガスパールらしいです」

その一言で、
胸の力が、すっと抜けた。

――私は、これでいい。

完璧な夫でなくても。
不器用でも。
誠実であれば、それでいい。



■ 夕暮れ

――幸せを、共有する瞬間

夕方、庭でお茶を飲む。
風が、葉を揺らす。

あなたが言う。

「……前は、
 この世界に来てよかったのか、
 分からなかったんです」

私は、黙って聞く。

「でも今は……
 ここに来た理由が、
 ちゃんとある気がします」

私は、静かに答える。

「それなら……
 この屋敷も、街も、
 あなたを迎えられて光栄です」

あなたは、少し照れながら笑う。

私は、その横顔を見て、
心の中で、そっと思う。

――ああ。
――私は、幸せだ。

守るだけの日々ではなく、
寄り添う日々。

それを、
ようやく手に入れた。

私は、あなたの肩に、
そっと外套をかける。

「……冷えますから」

あなたは、こちらを見る。

「ありがとう。……愛しいガスパール」

その呼び方に、
私は一瞬、言葉を失い――
それから、柔らかく微笑んだ。

「どういたしまして。
 ……私の最愛」

夕暮れが、二人を包む。
静かで、確かで、逃げ場のない幸福。
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