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第二章
初めての友達
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入学2日目。初日は、冷たい視線に晒されたり、なんかよくわからない魔法薬の実験台にされたりとわりと酷い目にあった。でも放課後、私の部屋に不法侵入していたシーくんとのお茶会で、身も心もすっかり回復した私は、今日も教室のドアを開けた。
「おはようございます。」
身分、と言われてもぴんとこないし、昨日はよくもやってくれたな的な気持ちはあるが、身分とは学生時代の運動部の上下関係である……と考えると、あいさつはしなきゃかな、と思って扉を開けた。……私、わりと緩めの吹奏楽部だったけど。だって、あんまり忙しい部活に入るとオタ活に支障が出るし。
一応笑顔であいさつをするけど、誰もこっちを見ない。……まぁ、そうだよね。あいさつが返ってこない、ということに対して慣れてしまい、特にショックを受けることなく席に着く。
「あ、あの、おはよう。」
席についたとき、あいさつをする声が聞こえてきて、私以外には普通に挨拶してくれるんだなぁ……なんて考えながら声のする方を見ると、目の前のピンク髪美少女が私を見ていた。
「……?え、おはようっ!……あっ、ございますっ!」
そのあいさつが私に向けられていたことに気がつき、慌ててあいさつを返した。慌てすぎて敬語がどっかいっちゃったけど、なんとかなった。
「私、ティア・ネットといいます。あの、昨日は本当に、ありがとうございました!」
「あ、私はルナ・ハリスです。え?昨日?なんかありました?」
この学園に来て、初めてまともに話しかけられるという経験をした私の頭の中は混乱していたが、何とか自己紹介をする。
お礼を言われていることに対して、心当たりが全くなく、さらに混乱する。え、本当になんかあったっけ?
昨日は、お礼を言われるような行動どころか、会話すらしてない。
「……ふふっ。なるほど、分かりました。」
ピンク髪の女の子は納得したように笑ったけど、こっちは全く分からない。なんなんだ、一体。……しかし、本当にアイドルグループにいそうなかわいさだな。笑い方もかわいい。
「……私と、お友達になってくれますか?」
かわいいなぁ、と思いながら見ていると、目の前に右手が差し出されてきた。え、なにこれ。その前にピンク髪美少女が言ったのは……おともだち……お友達?
「え!わ、私とですか?」
「はい。……だめですか?」
お友達になってください、なんて言葉は、前世で小学1年生を最後に久しく聞いていない。それ以降は、いつの間にか友達!って感じだったし、この世界に生まれてからは友達がいなかった。村での同年代はトワくんしかいなかったが、トワくんとは友達というほど仲良くなかった。シーくんは、かわいい弟だと思ってるし、向こうも私を友達だと思ってないし。
なにより、この世界に友達になってください、といって握手を求める……なんて、健全で平和的な行動ができる人間が存在するなんて思わなかった。……感動だ。
「私でよければ、お願いします!」
そう言って、差し出された右手を握り返すと、ピンク髪美少女は嬉しそうに笑った。
「あの、ルナって呼んでいいかな?」
「もちろん!友達ですから!」
「ありがとう!あの、私もティアって呼んで、それで、敬語もいらないわ!」
「……分かった!よろしくね、ティア!」
よくわからないけど、友達ができた。しかも、すごく真っ当な方法で……。今世ではあり得ないと思っていた平和的な光景に、泣きそうになりながらピンク髪美少女……ティアの手を握りながら笑った。
……シーくん。これが、本来の人間関係の築き方だよ。シーくんの告白は違うやつだからね。それに乗った私も人のこと言えないけど。
この世界にも、まともな人がいたのだという感動と、諦めていた友達ができたという感動で、私はクラスの視線や、なんで友達になろうと言ってくれたのかという疑問はどうでも良くなっていた。
「……以上が、基礎となる呪文です。基本的には、これを軸に呪文を構成していくことになります。」
相変わらず黒板の文字は読めないが、必死にメモを取る。基礎の魔法は、火とか水とかだった。そこはファンタジー物の王道なのね。
火の呪文は《アイ》、水は《ユラ》、風は《ハク》、地は《バフ》、空は《ヨリ》。
全部短いし、発音しやすくて良いけど、なんでこんな呪文になったんだろう?誰が決めたんだ?
「この呪文は、神クロス様が魔法を授けてくださる時、一緒に授けてくださった呪文です。神聖なものである、と自覚をした上で、ありがたく魔法を使うのです。」
決めたのはクロス様らしい。なるほど、神様語的な感じだったのかな?とりあえず、発音しやすくて良かった。この世界の言語は時々口が回らないことがある。……生まれ変わったはずなのに、口は日本人のままだったのはなぜなのか。
そんなことを考えている間にも、授業はどんどん進んでいき、私は慌ててメモをとった。分からないことは、あとでシーくんに聞くことにしよう。
……来た。ついに始まった……魔法薬学の授業が。
昨日散々な目にあった魔法薬学の授業が、今日も始まった。魔法薬学は基本的に2人1組で行われ、名簿の前後でペアが組まれる。私は、昨日と同じくティアとペアを組んでいた。
ティアは、貴族といっても地位が低いらしく、昨日は私だけじゃなくて、ティアも含めてペアとしての扱いが酷かった。下位のペアを実験台にするために名簿順で組ませたんじゃないかと思うぐらい、酷い目にあった。っていうか、平民がいないクラスは実験台なんてなくても授業成立してるんだし、いらないと思う。ただ嫌がらせしたいだけじゃんね。
昨日は授業が終わった後、痛すぎてティアを気遣う余裕は全くなかったけど、今日は違う。私にはシーくんという万能薬がついてるし、なによりティアは友達だ。友達は、私が守る!
ちなみに、友達になった後すぐに、ティアの腕を見せてもらったけど、怪我は無かった。ティアも治癒魔法使って治したんだね!
「ルナ……」
「大丈夫だよ、ティア。大丈夫。」
不安そうに私を見つめるルナに、私は安心してもらえるようにほほ笑みながら、手を握った。
……正直、いくら治るといっても治療するまで痛みは続く。怖くない、といったら嘘になる。それでも、行くと決めたのは私だ。絶対に、逃げない。
「このように、加熱時間を間違えてしまうと黒い毒薬となってしまうため注意が必要です。実際にどんな作用なのかは……ルナ・ハリス。来なさい。」
「……」
呼ばれて立ち上がろうとする私の手を、ティアが泣きそうになりながら掴む。
「ルナ、あの薬は……っ!」
何かを小声で伝えようとしてくれているティアの言葉を聞こうと、ティアに顔を寄せると教師がここまで歩いてきた。そして、無言のまま私の髪の毛を掴んで歩き出す。
痛い!まだ若いのに禿げたらどうすんの!と思っても口に出せない。言ったら余計面倒なことになりそうだ。
仕方ないので、大人しく歩く。ティアが何を伝えようとしてくれていたのか、聞くくらいの時間はくれてもよかったと思うんだけどなぁ。
「よく見ていなさい。」
そう言って、教師は私の顔目掛けて薬品をかけようとした。
え!顔!?せめて見えないとこにしてよ!そんなあからさまなところに傷つくったりしたら、放課後を待たずしてシーくんがくるよ!
……ああ、終わった。と目を瞑って衝撃に耐えていたけど、いつになっても痛みはやってこない。恐る恐る目を開けると……驚愕に目を見開いたままこちらを見ている教師がいた。教室を見渡すと、同じように目を見開いたクラスメイトがこちらを見ている。え、なに、なんなの。
「どうして!?昨日は確かに……はっ!腕を出しなさい!」
え、腕?と思い裾をまくろうとすると、教師は私の腕を掴んで強引に袖を捲り上げる。ちょ、痛い痛い!もう少し優しくしてよ!本当にこの学校は平民に対してのやさしさってものがないんだから!
「き……消えてる。」
そう言って、呆然としている教師の手を振り払い、私は唯一状況を説明してくれそうなティアの元に向かった。
「ティア、一体何が起こったの?なんでみんなそんなびっくりしてるの?」
「え……ルナ、大丈夫なの?」
「大丈夫もなにも、何が起こったのか全く分からないんだけど……」
「ルナ、あの薬品は触れると皮膚も骨も溶けてしまうものなの。あの量を頭から浴びてしまえば……命はなかった。」
『……まじか。』
震えながら告げられた言葉に、混乱しすぎて思わず日本語が出てしまった。しかし、同じく混乱しているらしいティアはそれに気づくことなく話を続ける。
「だから、私、ルナが危ないと思って……止められなくてごめんなさい!」
……そうか。それを伝えようとして、私を呼び止めてくれたんだね。
「……ん?でも、私無事生きてるよ。顔もなんともないし……」
流石に人殺しはまずいと思った教師が踏みとどまったのかと思ったが、教師が持っているビーカーは空っぽだ。……ちょっとは躊躇するとかないんですかね。
「薬品がかかりそうになった時、防御魔法が発動したの。それも……見たことがないぐらい強力な防御魔法。もしかしたら、王太子殿下ですら破るのは難しいんじゃないかしら……。」
……なるほど、分かった。シーくんの仕業だ。いや、助かったんだから仕業っていうのもおかしいか。シーくんのおかげだ。
多分、昨日私の話を聞いて、離れていても私を守れるように、防御魔法をかけてくれたんだろう。シーくん、ありがとう。……でも、この場はどうやって誤魔化せばいいですか?
「それに、その腕……」
「腕?」
「どうして、傷が消えてるの?昨日、あんなに……」
え、これもなんかまずいの?ティアに傷がなかったから、治癒魔法は普通のことなんだと思ってたんだけど……。
「だって、ティアも傷なくなってるでしょ、それと同じことだと……」
「私は、昨日ルナが庇ってくれたから、傷ひとつつかなかった!ルナの傷は……並大抵の治癒魔法じゃ治癒不可能なもので、跡も確実に残ると思ってたのに……どうしてきれいに消えてるの?」
……シーくん。治すときに、言ってほしかったな。シーくんの存在を隠したまま、この場を、どう治めろって言うのかな?
楽しそうに笑っているシーくんが容易に想像でき、イラッとしたが助けてくれたのは間違いないのでこの感情をどうすればいいのかがわからない。
「でも、よかった……っ!私、また何もできなくて……ごめんなさいっ!よかった、ルナ……っ!」
……とりあえず、よかったと言いながら私の手を握って泣いているティアを見て心を落ち着かせる。
なんか、この学園に来てから……いや、村を出てから、シーくん以外からこんなに心配してもらえるのは初めてで、感動してしまう。
……こんなに優しい子まで、酷い目にあうなんてやっぱりよくないと思う。
ねぇ、シーくん。私に何も言わなかった、ってことは、好きにしていいってことだと解釈していいんだよね?
「おはようございます。」
身分、と言われてもぴんとこないし、昨日はよくもやってくれたな的な気持ちはあるが、身分とは学生時代の運動部の上下関係である……と考えると、あいさつはしなきゃかな、と思って扉を開けた。……私、わりと緩めの吹奏楽部だったけど。だって、あんまり忙しい部活に入るとオタ活に支障が出るし。
一応笑顔であいさつをするけど、誰もこっちを見ない。……まぁ、そうだよね。あいさつが返ってこない、ということに対して慣れてしまい、特にショックを受けることなく席に着く。
「あ、あの、おはよう。」
席についたとき、あいさつをする声が聞こえてきて、私以外には普通に挨拶してくれるんだなぁ……なんて考えながら声のする方を見ると、目の前のピンク髪美少女が私を見ていた。
「……?え、おはようっ!……あっ、ございますっ!」
そのあいさつが私に向けられていたことに気がつき、慌ててあいさつを返した。慌てすぎて敬語がどっかいっちゃったけど、なんとかなった。
「私、ティア・ネットといいます。あの、昨日は本当に、ありがとうございました!」
「あ、私はルナ・ハリスです。え?昨日?なんかありました?」
この学園に来て、初めてまともに話しかけられるという経験をした私の頭の中は混乱していたが、何とか自己紹介をする。
お礼を言われていることに対して、心当たりが全くなく、さらに混乱する。え、本当になんかあったっけ?
昨日は、お礼を言われるような行動どころか、会話すらしてない。
「……ふふっ。なるほど、分かりました。」
ピンク髪の女の子は納得したように笑ったけど、こっちは全く分からない。なんなんだ、一体。……しかし、本当にアイドルグループにいそうなかわいさだな。笑い方もかわいい。
「……私と、お友達になってくれますか?」
かわいいなぁ、と思いながら見ていると、目の前に右手が差し出されてきた。え、なにこれ。その前にピンク髪美少女が言ったのは……おともだち……お友達?
「え!わ、私とですか?」
「はい。……だめですか?」
お友達になってください、なんて言葉は、前世で小学1年生を最後に久しく聞いていない。それ以降は、いつの間にか友達!って感じだったし、この世界に生まれてからは友達がいなかった。村での同年代はトワくんしかいなかったが、トワくんとは友達というほど仲良くなかった。シーくんは、かわいい弟だと思ってるし、向こうも私を友達だと思ってないし。
なにより、この世界に友達になってください、といって握手を求める……なんて、健全で平和的な行動ができる人間が存在するなんて思わなかった。……感動だ。
「私でよければ、お願いします!」
そう言って、差し出された右手を握り返すと、ピンク髪美少女は嬉しそうに笑った。
「あの、ルナって呼んでいいかな?」
「もちろん!友達ですから!」
「ありがとう!あの、私もティアって呼んで、それで、敬語もいらないわ!」
「……分かった!よろしくね、ティア!」
よくわからないけど、友達ができた。しかも、すごく真っ当な方法で……。今世ではあり得ないと思っていた平和的な光景に、泣きそうになりながらピンク髪美少女……ティアの手を握りながら笑った。
……シーくん。これが、本来の人間関係の築き方だよ。シーくんの告白は違うやつだからね。それに乗った私も人のこと言えないけど。
この世界にも、まともな人がいたのだという感動と、諦めていた友達ができたという感動で、私はクラスの視線や、なんで友達になろうと言ってくれたのかという疑問はどうでも良くなっていた。
「……以上が、基礎となる呪文です。基本的には、これを軸に呪文を構成していくことになります。」
相変わらず黒板の文字は読めないが、必死にメモを取る。基礎の魔法は、火とか水とかだった。そこはファンタジー物の王道なのね。
火の呪文は《アイ》、水は《ユラ》、風は《ハク》、地は《バフ》、空は《ヨリ》。
全部短いし、発音しやすくて良いけど、なんでこんな呪文になったんだろう?誰が決めたんだ?
「この呪文は、神クロス様が魔法を授けてくださる時、一緒に授けてくださった呪文です。神聖なものである、と自覚をした上で、ありがたく魔法を使うのです。」
決めたのはクロス様らしい。なるほど、神様語的な感じだったのかな?とりあえず、発音しやすくて良かった。この世界の言語は時々口が回らないことがある。……生まれ変わったはずなのに、口は日本人のままだったのはなぜなのか。
そんなことを考えている間にも、授業はどんどん進んでいき、私は慌ててメモをとった。分からないことは、あとでシーくんに聞くことにしよう。
……来た。ついに始まった……魔法薬学の授業が。
昨日散々な目にあった魔法薬学の授業が、今日も始まった。魔法薬学は基本的に2人1組で行われ、名簿の前後でペアが組まれる。私は、昨日と同じくティアとペアを組んでいた。
ティアは、貴族といっても地位が低いらしく、昨日は私だけじゃなくて、ティアも含めてペアとしての扱いが酷かった。下位のペアを実験台にするために名簿順で組ませたんじゃないかと思うぐらい、酷い目にあった。っていうか、平民がいないクラスは実験台なんてなくても授業成立してるんだし、いらないと思う。ただ嫌がらせしたいだけじゃんね。
昨日は授業が終わった後、痛すぎてティアを気遣う余裕は全くなかったけど、今日は違う。私にはシーくんという万能薬がついてるし、なによりティアは友達だ。友達は、私が守る!
ちなみに、友達になった後すぐに、ティアの腕を見せてもらったけど、怪我は無かった。ティアも治癒魔法使って治したんだね!
「ルナ……」
「大丈夫だよ、ティア。大丈夫。」
不安そうに私を見つめるルナに、私は安心してもらえるようにほほ笑みながら、手を握った。
……正直、いくら治るといっても治療するまで痛みは続く。怖くない、といったら嘘になる。それでも、行くと決めたのは私だ。絶対に、逃げない。
「このように、加熱時間を間違えてしまうと黒い毒薬となってしまうため注意が必要です。実際にどんな作用なのかは……ルナ・ハリス。来なさい。」
「……」
呼ばれて立ち上がろうとする私の手を、ティアが泣きそうになりながら掴む。
「ルナ、あの薬は……っ!」
何かを小声で伝えようとしてくれているティアの言葉を聞こうと、ティアに顔を寄せると教師がここまで歩いてきた。そして、無言のまま私の髪の毛を掴んで歩き出す。
痛い!まだ若いのに禿げたらどうすんの!と思っても口に出せない。言ったら余計面倒なことになりそうだ。
仕方ないので、大人しく歩く。ティアが何を伝えようとしてくれていたのか、聞くくらいの時間はくれてもよかったと思うんだけどなぁ。
「よく見ていなさい。」
そう言って、教師は私の顔目掛けて薬品をかけようとした。
え!顔!?せめて見えないとこにしてよ!そんなあからさまなところに傷つくったりしたら、放課後を待たずしてシーくんがくるよ!
……ああ、終わった。と目を瞑って衝撃に耐えていたけど、いつになっても痛みはやってこない。恐る恐る目を開けると……驚愕に目を見開いたままこちらを見ている教師がいた。教室を見渡すと、同じように目を見開いたクラスメイトがこちらを見ている。え、なに、なんなの。
「どうして!?昨日は確かに……はっ!腕を出しなさい!」
え、腕?と思い裾をまくろうとすると、教師は私の腕を掴んで強引に袖を捲り上げる。ちょ、痛い痛い!もう少し優しくしてよ!本当にこの学校は平民に対してのやさしさってものがないんだから!
「き……消えてる。」
そう言って、呆然としている教師の手を振り払い、私は唯一状況を説明してくれそうなティアの元に向かった。
「ティア、一体何が起こったの?なんでみんなそんなびっくりしてるの?」
「え……ルナ、大丈夫なの?」
「大丈夫もなにも、何が起こったのか全く分からないんだけど……」
「ルナ、あの薬品は触れると皮膚も骨も溶けてしまうものなの。あの量を頭から浴びてしまえば……命はなかった。」
『……まじか。』
震えながら告げられた言葉に、混乱しすぎて思わず日本語が出てしまった。しかし、同じく混乱しているらしいティアはそれに気づくことなく話を続ける。
「だから、私、ルナが危ないと思って……止められなくてごめんなさい!」
……そうか。それを伝えようとして、私を呼び止めてくれたんだね。
「……ん?でも、私無事生きてるよ。顔もなんともないし……」
流石に人殺しはまずいと思った教師が踏みとどまったのかと思ったが、教師が持っているビーカーは空っぽだ。……ちょっとは躊躇するとかないんですかね。
「薬品がかかりそうになった時、防御魔法が発動したの。それも……見たことがないぐらい強力な防御魔法。もしかしたら、王太子殿下ですら破るのは難しいんじゃないかしら……。」
……なるほど、分かった。シーくんの仕業だ。いや、助かったんだから仕業っていうのもおかしいか。シーくんのおかげだ。
多分、昨日私の話を聞いて、離れていても私を守れるように、防御魔法をかけてくれたんだろう。シーくん、ありがとう。……でも、この場はどうやって誤魔化せばいいですか?
「それに、その腕……」
「腕?」
「どうして、傷が消えてるの?昨日、あんなに……」
え、これもなんかまずいの?ティアに傷がなかったから、治癒魔法は普通のことなんだと思ってたんだけど……。
「だって、ティアも傷なくなってるでしょ、それと同じことだと……」
「私は、昨日ルナが庇ってくれたから、傷ひとつつかなかった!ルナの傷は……並大抵の治癒魔法じゃ治癒不可能なもので、跡も確実に残ると思ってたのに……どうしてきれいに消えてるの?」
……シーくん。治すときに、言ってほしかったな。シーくんの存在を隠したまま、この場を、どう治めろって言うのかな?
楽しそうに笑っているシーくんが容易に想像でき、イラッとしたが助けてくれたのは間違いないのでこの感情をどうすればいいのかがわからない。
「でも、よかった……っ!私、また何もできなくて……ごめんなさいっ!よかった、ルナ……っ!」
……とりあえず、よかったと言いながら私の手を握って泣いているティアを見て心を落ち着かせる。
なんか、この学園に来てから……いや、村を出てから、シーくん以外からこんなに心配してもらえるのは初めてで、感動してしまう。
……こんなに優しい子まで、酷い目にあうなんてやっぱりよくないと思う。
ねぇ、シーくん。私に何も言わなかった、ってことは、好きにしていいってことだと解釈していいんだよね?
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