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第三章
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ようやく見つけた希望の光だったけど、それが絶たれてしまってどうすればいいのか頭を悩ませる私を横目に、シーくんは苦々しい顔をしながら綺麗な石を取り出した。……結構大きいけど、どこに隠し持ってたんだろう。
「これだけは使いたくなかったが……仕方ないか。」
「それは?」
「これは、兄から渡されたものだ。離れた場所にいても連絡が取れるらしい。」
「こっちにもスマホがあったんだ!」
私のスマ本は、インターネットや動画サイトを見ることはできるけどそれだけだ。連絡は愚か、こっちから何かを発信することはできない。それにこの世界の通信手段は手紙しかないから、前世のことを考えるとかなり不便だなって思ってた。それが、この世界にも画期的な通信手段があったなんて!
「スマホン?それはお前の魔法具だろう。これはただの補助具だ。」
「補助具!?シーくん、持ってたんだ!?」
この世界には、神から授けられる魔法具とは別に、人間が研究によって作り出す補助具が存在する。どちらも魔力を込めて使うことには変わりないけど、補助具はガラクタと呼ばれ、軽視されているらしい。なんでも、補助具を使う人っていうのは、神から授かった魔法具があるにもかかわらず、人間が作り出す物に頼らなければ魔法を使うことができない出来損ないなんだとか。私からすると、用途による使い分けなんだからいいと思うんだけど、この世界の倫理観?価値観?的にはそう言う位置付けらしい。
だから、優秀な王太子であるシーくんがそれを持っていることに驚いた。しかも、それを渡したのも王族の王子様だ。
「ああ。しかもこれは、まだ試作品とかで魔力の消耗が激しい。この国ではおそらく、俺だけしか使えないだろうと渡された。」
連絡手段があるなら希望は絶たれていない。それしか方法がないのなら、使ってほしい。だって、もしも部屋から出てこないのなら、直接お城に行ったところで会える保証はない。お話だけでも聞くか、できればアポを取って直接会いたい。
「それを使った場合の、シーくんの負担は?」
「負担などない。大量に魔力を必要とするから使い手を選ぶというだけだ。」
「そうなんだ……。でも、その割には嫌そうだよね。本当に、大丈夫?」
「……今の兄様の思惑通りになるのが、少々不愉快なだけだ。だが、現状を打破するためにやれることはやるべきだな。少し待っていろ。」
シーくんは、そう言って普通に電話するかの様にその補助具を耳に当てた。……ほんとにスマホみたいだ。使っている様子からは、魔力を大量に消費しているなんて分からない。
「ああ、俺です。……いや、そうではなく……は?嫌です。……そうです、知っていましたか。それで……はい、そうです。え……いますが……」
機能も電話と変わらないようで、話している相手の声は聞こえない。とりあえず、お兄さんと話すときは敬語だってことは分かった。一人称が俺だから、王太子モードって訳では無さそうだけど、家族で敬語……いや、この世界の貴族にはありがちなのか。なんて考えていると、シーくんがこっちを見た。
「……はい、伺います。それではまた。」
そう言って、シーくんはスマホ(仮)を下ろすと、ため息をついた。
「どうだった?大丈夫?」
「ああ。会ってくれるそうだ。今から城に来いと。」
「そっか!よかった!」
シーくんの浮かない表情的に、なんかあんまり上手くいかなかったんじゃないかと心配したけど、そうではなかったらしい。とりあえずほっと胸を撫で下ろしたけど、シーくんの表情は晴れない。
「……但し、会うには条件があると言われた。」
「条件?」
シーくんがそんな顔をするなんて、一体どんな無理難題を言われたんだと私にも緊張がはしる。でも、言われた条件は予想外のものだった。
「絶対に、佐藤瑠奈を連れて来い、と言われた。」
「……え?」
それは、本当に予想外の言葉だった。
「ルナ。兄様と会ったことがあるのか?」
「……ない、はず、」
シーくんが王太子になってから引きこもりになっていた第一王子様に、ただの村人であるルナ・ハリスが会っているはずがない。……それ以前に、なぜこの世界の王子様が佐藤瑠奈を知っているのか。
……この世界にとって、佐藤瑠奈という存在は一体何なんだろう。手掛かりをつかんだと思ったら、新たな謎が増えていく。
「……でも、会ってくださるんだよね。なら、善は急げ!一緒に行ってください!お願いします!」
……なんにしても、やることは変わらない。一歩前進したことには変わりない。とりあえず今は前に進むしかないのだと、私は大きく深呼吸をした。
「これだけは使いたくなかったが……仕方ないか。」
「それは?」
「これは、兄から渡されたものだ。離れた場所にいても連絡が取れるらしい。」
「こっちにもスマホがあったんだ!」
私のスマ本は、インターネットや動画サイトを見ることはできるけどそれだけだ。連絡は愚か、こっちから何かを発信することはできない。それにこの世界の通信手段は手紙しかないから、前世のことを考えるとかなり不便だなって思ってた。それが、この世界にも画期的な通信手段があったなんて!
「スマホン?それはお前の魔法具だろう。これはただの補助具だ。」
「補助具!?シーくん、持ってたんだ!?」
この世界には、神から授けられる魔法具とは別に、人間が研究によって作り出す補助具が存在する。どちらも魔力を込めて使うことには変わりないけど、補助具はガラクタと呼ばれ、軽視されているらしい。なんでも、補助具を使う人っていうのは、神から授かった魔法具があるにもかかわらず、人間が作り出す物に頼らなければ魔法を使うことができない出来損ないなんだとか。私からすると、用途による使い分けなんだからいいと思うんだけど、この世界の倫理観?価値観?的にはそう言う位置付けらしい。
だから、優秀な王太子であるシーくんがそれを持っていることに驚いた。しかも、それを渡したのも王族の王子様だ。
「ああ。しかもこれは、まだ試作品とかで魔力の消耗が激しい。この国ではおそらく、俺だけしか使えないだろうと渡された。」
連絡手段があるなら希望は絶たれていない。それしか方法がないのなら、使ってほしい。だって、もしも部屋から出てこないのなら、直接お城に行ったところで会える保証はない。お話だけでも聞くか、できればアポを取って直接会いたい。
「それを使った場合の、シーくんの負担は?」
「負担などない。大量に魔力を必要とするから使い手を選ぶというだけだ。」
「そうなんだ……。でも、その割には嫌そうだよね。本当に、大丈夫?」
「……今の兄様の思惑通りになるのが、少々不愉快なだけだ。だが、現状を打破するためにやれることはやるべきだな。少し待っていろ。」
シーくんは、そう言って普通に電話するかの様にその補助具を耳に当てた。……ほんとにスマホみたいだ。使っている様子からは、魔力を大量に消費しているなんて分からない。
「ああ、俺です。……いや、そうではなく……は?嫌です。……そうです、知っていましたか。それで……はい、そうです。え……いますが……」
機能も電話と変わらないようで、話している相手の声は聞こえない。とりあえず、お兄さんと話すときは敬語だってことは分かった。一人称が俺だから、王太子モードって訳では無さそうだけど、家族で敬語……いや、この世界の貴族にはありがちなのか。なんて考えていると、シーくんがこっちを見た。
「……はい、伺います。それではまた。」
そう言って、シーくんはスマホ(仮)を下ろすと、ため息をついた。
「どうだった?大丈夫?」
「ああ。会ってくれるそうだ。今から城に来いと。」
「そっか!よかった!」
シーくんの浮かない表情的に、なんかあんまり上手くいかなかったんじゃないかと心配したけど、そうではなかったらしい。とりあえずほっと胸を撫で下ろしたけど、シーくんの表情は晴れない。
「……但し、会うには条件があると言われた。」
「条件?」
シーくんがそんな顔をするなんて、一体どんな無理難題を言われたんだと私にも緊張がはしる。でも、言われた条件は予想外のものだった。
「絶対に、佐藤瑠奈を連れて来い、と言われた。」
「……え?」
それは、本当に予想外の言葉だった。
「ルナ。兄様と会ったことがあるのか?」
「……ない、はず、」
シーくんが王太子になってから引きこもりになっていた第一王子様に、ただの村人であるルナ・ハリスが会っているはずがない。……それ以前に、なぜこの世界の王子様が佐藤瑠奈を知っているのか。
……この世界にとって、佐藤瑠奈という存在は一体何なんだろう。手掛かりをつかんだと思ったら、新たな謎が増えていく。
「……でも、会ってくださるんだよね。なら、善は急げ!一緒に行ってください!お願いします!」
……なんにしても、やることは変わらない。一歩前進したことには変わりない。とりあえず今は前に進むしかないのだと、私は大きく深呼吸をした。
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