不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

翼 うみ

文字の大きさ
7 / 68
第二話 お飾りの妻

2-5

しおりを挟む
* * *

 翌日は快晴で洗濯物日和。
 気持ちが良くてつい鼻歌を歌ってしまう。

「~♪~♪」
「姐さん、ご機嫌っすねぇ」
「あら、そうかしら?」
「兄貴といいことあったんすか?」
「えっ」

 千原さんにそう突っ込まれ、思わず顔がカアっと熱くなる。

「あーー! その顔はやっぱりなんかあったんすね!」
「な、何もないわよっ」

 本当に大したことは何もない。
 だけど舎弟の皆さんはお見合い結婚だと思っているようで、普通に仲の良い夫婦だと思われているみたい。
 和仁さん曰く面倒だから好きに思わせておけ、とのこと。

 実は政略結婚で書類上だけの妻だと知ったら、みんなどう思うのかしら。
 そんなことで態度を変えるような人たちではないと思うけれど。

 でも、昨日あんな風に言ってくれたのはすごく嬉しかった。
 きっと和仁さんがみんなに慕われるのは、ああいうところなのだろうと思った。

「……姐さん、顔赤いっすよ」
「や、やだ! そんなに!?」

 笹部さんに指摘され、思わず頬に手を当てる。

「いやそういうことじゃなくて」
「?」

* * *

 ピピッと体温計が鳴り、三十八度と表示されていた。
 私はベッドの上ではあ、と溜息をつく。

 やってしまった……最近動き回ってたからかしら。
 あの後熱があることがわかると、千原さんと笹部さんがすぐに「寝てください!」と部屋に連れて帰ってくれて。
 あれよあれよとベッドに寝かされていた。

 おでこには冷えピタ、首にはネギを巻かれ(風邪に効くらしい)いつでも水分補給ができるようにと、枕元には二リットルの水とコップが置かれている。

 至れり尽せりで有難いけれど、結構落ち込んでいた。
 体調だけは崩さないようにと思っていたのに。

「風邪なんて引いてただでさえ迷惑なのに!」

 実家で私が風邪を引くと、義母はいつも迷惑そうにしていた。
 一応看病してくれたけれど、莉々果が風邪を引いた時とは対応が明らかに違っていた。

 だからなるべく迷惑かけまいと、体調管理はとても気を遣っていた。
 それなのに、熱を出してしまって……また迷惑だって思われたらどうしよう?

  頭痛が酷いし、喉も痛い。
 何だか寒気も酷くなってきた。

 私は毛布にくるまりながら、寂しさを押し殺す。いつの間にか眠りに落ちていた。

 ふと目覚めると、ほかほかという暖かな空気と美味しそうな匂いが漂っていた。

(あれ、この匂いは……)
「ジェシカ! あったかいおかゆを作ったわよ」
「マム……?」

 目の前にいたのは、こちらに向かって優しく微笑みかけるマムの姿だった。
 エプロンをしておかゆを作ってくれている。

 そうだ、風邪を引いた時はいつもマムがおかゆを作ってくれた――。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

虚弱姫はコワモテ将軍の筋肉に触りたい

隙間ちほ
恋愛
◼︎無骨な英雄×病弱な筋肉フェチ姫 ◼︎辺境伯の末娘エルナは、領軍の英雄マテウスとの結婚が決まった。政略結婚――のはずが、実は姫は将軍の熱烈なファン。姫がノリノリで嫁ぐ一方、当のマテウスは「か弱い姫君に嫌われている」と思い込み、距離を取ってしまう……。 ◼︎筋肉と鼻血とすれ違いラブコメ。 ◼︎超高速展開、サクッと読めます。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました【完結】

日下奈緒
恋愛
10年付き合った恋人と別れ、恋に臆病になっていた30歳の千尋。そんな彼女に、取引先で出会った御曹司・神楽木律が突然のプロポーズ。「交際0日で結婚しよう」なんて冗談でしょ?──戸惑いながら始まった新婚生活。冷めた仮面夫婦のはずが、律の一途な想いに千尋の心は少しずつほどけていく。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

そこは優しい悪魔の腕の中

真木
恋愛
極道の義兄に引き取られ、守られて育った遥花。檻のような愛情に囲まれていても、彼女は恋をしてしまった。悪いひとたちだけの、恋物語。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

処理中です...