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第十一話 桜の邂逅(後) side.和仁
11-1
しおりを挟む桜花組次期組長と染井一家の娘。
敵対する関係でありながら、俺と美桜は仲を深めていた。
無論この関係は誰にも言えない。
周りの目を気にしながら、人知れず美桜との逢瀬を繰り返していた。
「信士さんは染井と桜花を協力させたいって言ってるでしょう?」
「ああ」
「私もそうなったらいいなぁって思うことがあるの」
「本気か?」
美桜がそんなことを思っていたとは思わなかった。
「だって、染井と桜花が一つになったら無敵だよ!」
「戦力的にはな」
「絶対その方がいいのに……そしたら和くんとも堂々と一緒にいられる」
美桜は俺の肩に頭を寄せる。
「ずっと一緒にいられるのに」
「……」
父にふわっとだけ聞いたことがあるが、桜花の初代組長と染井の初代組長は実の兄弟だったらしい。
元々は一つの組だったが、激しい後継者争いの末に分裂した。
それから満咲家が二組を警察公認の極道と定めるまで、ずっと激しい争いを繰り広げていたらしい。
信士の父である刑事局長は競い合っていた方がより良い結果を生むという考えだった。
警察の力になって大きな揉め事をしなければ大抵のことは目を瞑るというスタンスだ。
信士はそういう考えではないようだが……。
だが組員たちもその傘下も、ずっと互いを目の敵にしている。
遥か昔から根付いたこの因縁は簡単に断ち切れるものではない。
何があっても相容れない関係。水と油。
桜花と染井はそういう宿命なのだとすら思っていた。
だけど、美桜が望むのなら。
絶対に有り得ないと思っていた可能性を考えてみても良いのだろうか――。
* * *
その日は俺、信士、染井美咲、鬼頭の通っていた高校の卒業式の日だった。
姉にくっついて別の高校に通う美桜も来ていた。
式が終わって急に信士に呼び出されたと思ったら、突拍子もないことを言い出した。
「一緒に写真を撮らないか!」
「別に構わんが」
写真を撮ること自体は大したことないが、問題はその後だ。
「よし、義徳と美咲さんも入ってくれ」
「は?」
何を言い出すのだ、この男は。
「いいじゃないか、今日くらい」
「なんで染井と……!」
「フン、こちらから願い下げだな」
だが、美桜までもこんなことを言い出した。
「私も見たいな!」
「美桜、何を言い出すの?」
美咲も流石の鬼頭も眉根を寄せる。
「だってお姉ちゃんと義徳くんの制服姿見られるのも今日が最後だし、たまにはいいじゃない」
「でも……」
「信士さん、私も写ってもいいですか?」
「もちろんだよ」
「ありがとうございます! ねぇ、お姉ちゃんも一緒に撮ろうよ!」
「……仕方ないわね、美桜がそんなに言うなら。義徳もいい?」
「美桜お嬢さんのお望みならば」
「やったあ! ありがとう!」
この二人が了承するとは、美桜に甘いというのは本当のようだな。
信士はかなり満足げに笑っており、満咲家の使用人をすぐに呼んだ。
信士は中央に陣取ると、俺と鬼頭の肩に腕を回す。逃がさないぞとでも言いたげに。
美咲は鬼頭の隣に立ち、その反対側で美桜が姉の腕に絡まってピースしていた。
現像した写真には、満面の笑みの美桜が写っていた。
よっぽど嬉しかったのだろう。
「ねぇ和くん、二人でも撮りたい」
帰ろうという時、小声で美桜に囁かれた。
他の面子は先に歩き始めており、俺たちには気づいていない。
「お願い! 今日だけでいいから」
「……わかった」
まあ今日くらいはいいだろう。
なるべく写真は残さない方がいいと思い、今までは断ってきた。そもそも俺が写真が苦手というのもあるが。
だけど、美桜があんなに喜ぶのなら一枚くらいは良しとするか。
俺たちは誰もいない校庭の桜の木の下で写真を撮った。
やはり美桜はとても嬉しそうに笑っていた。
「ありがとう、和くん!」
美桜の笑顔は癒される。
無邪気に笑っている姿を見ると、どんなに疲れていても疲れが吹き飛ぶ。
心穏やかな気持ちになれた。
この時間がいつまでも続けばいいと思った。
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