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第6章 六日目
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俺は真っ暗な闇の中にいた。
(天国って、もっと明るい場所だと思っていたんだけど、ここは、湿気も酷くてじめじめする……)
「はっ、はっくしょん」
(ん? 天国でもくしゃみはでるのか?)
ここで、俺は意識を取り戻した。
目を開け、体を起こした。
どうやら、俺は、建物の床に横たわっていたようだ。床は水浸しだ。気付くと自分の体もびしょ濡れだった。周りを見回すと、周辺には、天空ブリッジのパーツの残骸が散乱している。透明なガラスのような破片もいっしょに散らばっている。
顔を上げると、天井には大きな穴があいており、空が見える。
この状況から考えると、あのとき、天空ブリッジもろとも空から落下した俺は、建物の天井を突き破って、水が溜まっている水槽の中に落下した。その衝撃で水槽が破損し、大量の水とともに床に放り出された、ということだろうか?
と、そのとき、遠くから、救急車のサイレン音が聞こえたような気がした。
やばい、金欠の俺に、このレベルの破損の弁償は、到底無理だ!
慌てて起き上がった。
「いてて」
よろけた際に、体を支えるため、とっさに台のようなものに手をついた。そのとき、台の上に載っていた何かを床に落としてしまった。
ガシャン!
「す、すみません」
誰もいないのに、俺は思わず謝ってしまった。
拾い上げると、それは写真立てだった。落下の衝撃で、ガラスの部分が割れてヒビが入ってしまったようだ。
写真立ての中には写真が入っていた。ごく普通のスナップ写真で、3人の人物が写っていた。若い男女と、赤ん坊だ。写真の下には、手書きの赤い字で、「健太誕生!」と読める。
ん? この人達、どこかで見たような……
サイレンの音がいっそう大きくなってきた。
俺は、いったん思考を止め、脱出のための出口を探すことにした。複数のサイレンの種類とその音量から、救急車とパトカーが近くまで迫っていることがわかる。
急がなくては!
周囲を見渡すと、机のそばの壁に、「閉」と書かれた赤のボタンと、「開」と書かれた緑のボタンがあった。「開」の方を押してみると、建物の奥のシャッターが上方に動き出した。当たりだったようだ。
俺は、明るい光が差し込む方向に向かって駆け出し、シャッターが完全に上がりきる前に建物から飛び出した。
建物から出た俺は、辺りが何となく見覚えのある風景であることに気付いた。慌てて建物の方を振り返ると、その建物は、以前三千代との待ち合わせの際に時間つぶしで観察した、あの「おんぼろ」工場だった。シャッターの横には、見覚えのあるドアがった。
建物の上の看板には、以前のように、「ん」と「ぼ」の文字が読める。だが、よく見ると、「ん」の前は広く空いているのに、「ぼ」の次には、あまりスペースがない。
ん、ぼ、……、あっ、「あめんぼ工場」だ!
そのとき、何台もの救急車とパトカーが工場の傍で、急ブレーキをかけながら停止した。
俺は、その場を離れるため、目立たないように道路の脇に身をかがめながら、駅の方に向かってダッシュした。
(天国って、もっと明るい場所だと思っていたんだけど、ここは、湿気も酷くてじめじめする……)
「はっ、はっくしょん」
(ん? 天国でもくしゃみはでるのか?)
ここで、俺は意識を取り戻した。
目を開け、体を起こした。
どうやら、俺は、建物の床に横たわっていたようだ。床は水浸しだ。気付くと自分の体もびしょ濡れだった。周りを見回すと、周辺には、天空ブリッジのパーツの残骸が散乱している。透明なガラスのような破片もいっしょに散らばっている。
顔を上げると、天井には大きな穴があいており、空が見える。
この状況から考えると、あのとき、天空ブリッジもろとも空から落下した俺は、建物の天井を突き破って、水が溜まっている水槽の中に落下した。その衝撃で水槽が破損し、大量の水とともに床に放り出された、ということだろうか?
と、そのとき、遠くから、救急車のサイレン音が聞こえたような気がした。
やばい、金欠の俺に、このレベルの破損の弁償は、到底無理だ!
慌てて起き上がった。
「いてて」
よろけた際に、体を支えるため、とっさに台のようなものに手をついた。そのとき、台の上に載っていた何かを床に落としてしまった。
ガシャン!
「す、すみません」
誰もいないのに、俺は思わず謝ってしまった。
拾い上げると、それは写真立てだった。落下の衝撃で、ガラスの部分が割れてヒビが入ってしまったようだ。
写真立ての中には写真が入っていた。ごく普通のスナップ写真で、3人の人物が写っていた。若い男女と、赤ん坊だ。写真の下には、手書きの赤い字で、「健太誕生!」と読める。
ん? この人達、どこかで見たような……
サイレンの音がいっそう大きくなってきた。
俺は、いったん思考を止め、脱出のための出口を探すことにした。複数のサイレンの種類とその音量から、救急車とパトカーが近くまで迫っていることがわかる。
急がなくては!
周囲を見渡すと、机のそばの壁に、「閉」と書かれた赤のボタンと、「開」と書かれた緑のボタンがあった。「開」の方を押してみると、建物の奥のシャッターが上方に動き出した。当たりだったようだ。
俺は、明るい光が差し込む方向に向かって駆け出し、シャッターが完全に上がりきる前に建物から飛び出した。
建物から出た俺は、辺りが何となく見覚えのある風景であることに気付いた。慌てて建物の方を振り返ると、その建物は、以前三千代との待ち合わせの際に時間つぶしで観察した、あの「おんぼろ」工場だった。シャッターの横には、見覚えのあるドアがった。
建物の上の看板には、以前のように、「ん」と「ぼ」の文字が読める。だが、よく見ると、「ん」の前は広く空いているのに、「ぼ」の次には、あまりスペースがない。
ん、ぼ、……、あっ、「あめんぼ工場」だ!
そのとき、何台もの救急車とパトカーが工場の傍で、急ブレーキをかけながら停止した。
俺は、その場を離れるため、目立たないように道路の脇に身をかがめながら、駅の方に向かってダッシュした。
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