元魔王、救世主になる

えながゆうき

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善処します

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 昼食を食べてから領都の外に出る。今日の昼食は串焼きだ。何でもビッグスネークの肉を使っているらしい。淡泊で少し物足りない感じではあったが、値段も安かったのでこんなものだろう。

「今日はどっちに行きますか?」
「そうだな、開拓村の方面に行こう。そっち方面なら、ゴブリンの集落とジャイアントデススパイダーの住み家のどちらからも離れているからな」
「まあ、無難な判断でしょう。ゴブリンの集落の調査がどのくらい進んでいるのか、少し気になりますけどね」

 願わくば、そのまま迷宮入りしてもらいたいところである。下手に「魔法を使ったのはだれだ!」などと言われて探し回れては困る。最初に証拠隠滅を謀らなかった私が悪いけど。でもこの辺りには人がいないから大丈夫だと言ったのはカビルンバである。
 あれ、もしかして悪いのはカビルンバなのでは?

「どうかしましたか?」
「いや、何でもないぞ」

 今、相棒にそっぽを向かれると困る。ここは我慢だ。何食わぬ顔をして素材採取を開始した。先日作成したマジックバッグ+の容量は小さな一軒家くらいである。少し物足りない気はするが、それでもしばらく困ることはないだろう。

 見つけ次第、回復ポーションと解毒ポーションの素材を採集して回る。こんなときにカビルンバの調査能力が役に立てば良かったのだが、入れ替わりが激しいものは苦手だった。
 今回のように「だれかが引っこ抜けばなくなるもの」はその典型である。調査して、場所を覚えておくだけ時間の無駄。
 だが、そんなカビルンバでも使いようはある。カビと菌糸は使いようだ。

「カビルンバ、薬草か毒消し草の群生地帯を教えてくれ。どこかにあるだろう?」
「ありますが、ちょっと奥地ですよ?」
「大丈夫だ、問題ない」

 ちまちまとまばらに生えている薬草を引っこ抜くのは時間がかかる。ここは一気に刈り取りたいところだ。なに、マジックバッグもあることだし問題はない。
 カビルンバが指示する方向へと向かう。確かにそれなりに奥地にまで入り込むことになったが、群生地帯にたどり着いた。

「おお、これはなかなかの量だな。これだけあれば、当分、回復ポーション作りには困らないぞ」
「そうかも知れませんが、売るときは少量ずつにして下さいね。大量に売ると値崩れして、他の錬金術師からにらまれることになりますよ」
「それもそうだな。解呪の破魔札の件もあるし、しばらくは大人しくしておくことにしよう」

 高品質の錬金術アイテムが大量に売りに出されているというウワサが広がると、さすがに「解呪の破魔札」を作ったのが私であることに気がつかれるかも知れない。変装していたので、門番とすれ違ってもすぐに私だとは分からないだろうが、声は聞かれている。こんなことなら声色も変えておくべきだった。

「詰めが甘かったか」
「何を今さら言っているのですか。レオ様はいつも詰めが甘いでしょう?」
「うっせえわ! これでも全部真面目にやってるんだよ」

 カビルンバが冷たい。何か不愉快になるようなことをしてしまっただろうか? いや、逆に考えるんだ。カビルンバに何かしてあげたかと考えるんだ。うん、何もしてあげていないな。

「カビルンバ、今日は何が食べたい? 好きな物をごちそうしてあげよう」
「はあ? ボクは雑食なので何でも食べられますよ。好き嫌いはありません」
「それじゃ、何か欲しい物はないのかな?」
「……菌糸で扱えるものがあると思いますか?」

 そうだった。カビルンバは裸一貫が標準状態であり最高状態だった。何も必要ない。つまり私ができることは何一つないのだ。圧倒的な無力感。

「どうしたんですか、急に。何かお願い事でもあるんですか? 場合によってはかなえてあげることも、やぶさかではないですけど……」
「違うんだ。カビルンバに何かしてあげられることはないかな、と思って。ほら、協力してもらってばかりだろう?」
「それなら、これ以上の問題を起こさないようにしてもらえれば十分ですよ」

 ニッコリとカビルンバが笑った。それは無理だー。私がそうしたいんじゃなくて、この世界が私を放って置いてくれないのだ。モテる男はツライよ、なんちゃって。

「善処します」
「はい。その心がけだけで十分です」

 これからは何でもカビルンバに相談しよう。そうすれば、何かあったときもカビルンバが共犯者になってくれるぞ。これなら私だけのせいにはなるまい。
 薬草と毒消し草をある程度集めたところで、他の素材も集めることにした。

 先日、錬金術ギルドを訪れたときに見た依頼書には、回復ポーションや解毒ポーションだけでなく、魔力回復ポーションや、体力回復ポーション、睡眠薬、ダイエット薬、暗視ポーションなどもあったのだ。
 つまり、それらのポーションにも需要があるということだ。

「しばらくは回復ポーションと解毒ポーション以外の錬金術アイテムを売ることにするかな」
「そうですね。様々な需要に対応することができれば、お金に困ることもなくなることでしょう。安心感が段違いに高まるはずですよ」

 とりあえず需要が分からなかったので、それらの錬金術アイテムをいくつか作れる程度の素材を集めていた。特にダイエット薬や暗視ポーションは、魔族には需要がなかったので相場が分からん。売値はカビルンバに丸投げ……いや、相談だな。苦しゅうないぞ。
 ひとまず十分な素材が集まったので領都へと戻ることにした。
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