18 / 104
グヘヘ
しおりを挟む
このまま問題なく戻れば夕暮れ前には領都に到着するだろう。早めに到着すれば余裕を持って今夜の夕食を選ぶことができるぞ。
今は懐にそれなりのお金がある。この領都で一番の料理を食べるのも良いかも知れない。
そんなことを思ってたのがいけなかったのか、索敵にモンスターが引っかかった。しかも悪いことに、近くに人間がいるようだ。冒険者かな? あまり会いたくないな。
「カビルンバ、人がモンスターに襲われている」
「またですか? レオ様の索敵範囲、広すぎるんじゃないですかね」
「……確かにそうかも知れない」
だが見つけてしまったからには放っては置けまい。落ちぶれても元魔王。弱者を助けるのが強者の務めである。灰色のマントを身につけ、顔にお面を装着する。ユーモラスな表情が独特の雰囲気を作り出していた。店主いわく「ひょっとこ」と言うらしい。
「助けに行くぞ。放置はできん」
「その格好ならまあ、ギリギリ及第点でしょうか……」
カビルンバもダメとは言わなかった。こう見えてカビルンバは優しいところがあるからな。見た目で不気味に思われることも多々あるが。大切なのは見てくれじゃない。中身を見てくれ。
「あそこだ。またブラックベアーに襲われているぞ。どんだけ生息域を広げているんだよ」
「おかしいですね。そんなに繁殖力が強いモンスターじゃなかったとはずですが……まさかね」
「カビルンバ、それ以上はいけない。妙なことを口走ってはダメだ。ドリルランス!」
「あ」
ギュルンと音が鳴るのと同時にカビルンバの声が重なった。「あ」って……もしかして、また何かやらかしてしまいましたかね? でも前にブラックベアーをドリルランスで倒したときは何も言いませんでしたよね?
「私が来たからにはもう大丈夫だ」
少女二人の前にさっそうと舞い降りた。正確には地面を走って、少女とブラックベアーの間に割り込んだだけなのだが。ブラックベアーはすでに霧のように霧散して、あとにはブラックベアーの右腕だけが残されていた。これは煮込むとおいしいらしい。立派な食材アイテムである。
女の子二人はどうやら無事のようだ。かなり疲労しているが、ケガもなく、命に別状はなさそうである。体力回復ポーションがあれば良かったのだが、残念ながら手元にない。
だがしかし、なければ作ればいいじゃない。そんなわけでサクッと体力回復ポーションを作る。難しい錬金術アイテムではないので鼻クソをほじりながらでも余裕で作ることができる。
見たところ、少女二人は剣士と弓使いのペアのようである。安い革製の装備を身につけているところを見ると、駆け出しの冒険者のようだ。二人抱き合ったまま、こちらを見ている。何だか悪徳商人になった気分。
「これを飲むと良い。体力回復ポーションだ」
そう言って体力回復ポーションを一本ずつ渡した。ここで悪徳商人なら睡眠薬入りの飲み物を渡して、グヘヘヘヘするのだが、私は悪徳商人ではない。
だが、二人はそれを警戒しているのか、なかなか飲もうとしなかった。仕方がない。
「それならば一本は私が飲もう。残り一本を半分にして飲むと良い」
体力回復ポーション++のはずなので半分でも十分に効果を発揮するだろう。グイッと一本を飲み干すと、元気はつらつになった。疲れていないと思っていたが、それなりに疲れていたようだ。
それを見て、ようやく体力回復ポーションを口にする二人。目を見開いて驚いているようだが、見る見るうちに元気になった。
「す、すごいです! こんな錬金術アイテムがあるだなんて」
「初めて飲んだッス! すごいッス!」
「あー、なんだ、ついでに体もキレイにしてあげよう」
バッと体を隠す少女二人にオールクリーンを使う。見る見るうちにキレイになった。まるで洗い立てのようである。二人は真っ赤な顔をして、信じられない物を見るかのような目で体を確認していた。
その様子をほほ笑ましく見ていると、カビルンバがクイックイッと服を引っ張った。
「急いでこの場から離れましょう。これ以上、彼女たちと接触するのは危険です」
「分かった。そうしよう」
コソコソとマントの下の何かと話す姿を見て不思議そうに首をかしげている。周囲にモンスターの反応はないので、ここでこのまま別れても問題なく領都にたどり着くことができるだろう。寄り道さえしなければ。
「それでは、気をつけて領都に帰りたまえ」
「あ、ちょ、ちょっと!」
元魔王レオニートはクールに去るぜ。まるで一陣の風のようにその場を去った。何か言っているようだったが、これ以上の面倒事はこりごりである。カビルンバの反応を見るに、すでに何かやってしまった後のようではあるが。
「この辺りまで来れば大丈夫だな。ところでカビルンバ、ブラックベアーは強いモンスターなのか?」
「そうみたいですね。この間、冒険者ギルドの酒場に行ったときに改めて調べたのですが、どうやらBランクのモンスターみたいですね」
「なるほど、Bランクのモンスターだったのか。……それって強いのか?」
モンスターにランクがあると言う話は今初めて聞いた。冒険者にランクがあることはこの前の話で知っていたのだが、それに似たようなものなのかな?
「なぜ知っているかのような口ぶりをしたのですか。BランクモンスターはBランクのパーティーが倒せるレベルのモンスターですね」
「パーティーということは複数人で寄ってたかって倒すということだな」
「そうですけど、言い方! 大体、三人から四人で倒すみたいですね」
「ふーん、何でその人数なんだ?」
安全にモンスターを倒したいのなら、人数が多いに越したことはないはずだ。魔族に比べて人間はそれこそ星の数ほどいる。数の暴力で圧倒すれば良いのだ。まあ、ドラゴンなんかにまとめて消し飛ばされる可能性はあるがね。
「人数が多くなると、一人が得られる報酬が少なくなりますからね。家族で冒険者をやっているのなら共有財産になるので、問題にはなりにくいのでしょうけど」
「なるほどなぁ。安全の取るか、金を取るか、か。さっきの二人は金を取ったのかな?」
「どうなんでしょうね。もしかすると、ブラックベアーのおとりとして見捨てられた可能性も……」
おとりとして仲間を見捨てた? あのか弱そうな少女たちを見捨てたのか?
「なん……だと……?」
「か、可能性の話ですから! それが事実と決まったわけじゃないですから! ですからその殺気を抑えて下さい!」
今は懐にそれなりのお金がある。この領都で一番の料理を食べるのも良いかも知れない。
そんなことを思ってたのがいけなかったのか、索敵にモンスターが引っかかった。しかも悪いことに、近くに人間がいるようだ。冒険者かな? あまり会いたくないな。
「カビルンバ、人がモンスターに襲われている」
「またですか? レオ様の索敵範囲、広すぎるんじゃないですかね」
「……確かにそうかも知れない」
だが見つけてしまったからには放っては置けまい。落ちぶれても元魔王。弱者を助けるのが強者の務めである。灰色のマントを身につけ、顔にお面を装着する。ユーモラスな表情が独特の雰囲気を作り出していた。店主いわく「ひょっとこ」と言うらしい。
「助けに行くぞ。放置はできん」
「その格好ならまあ、ギリギリ及第点でしょうか……」
カビルンバもダメとは言わなかった。こう見えてカビルンバは優しいところがあるからな。見た目で不気味に思われることも多々あるが。大切なのは見てくれじゃない。中身を見てくれ。
「あそこだ。またブラックベアーに襲われているぞ。どんだけ生息域を広げているんだよ」
「おかしいですね。そんなに繁殖力が強いモンスターじゃなかったとはずですが……まさかね」
「カビルンバ、それ以上はいけない。妙なことを口走ってはダメだ。ドリルランス!」
「あ」
ギュルンと音が鳴るのと同時にカビルンバの声が重なった。「あ」って……もしかして、また何かやらかしてしまいましたかね? でも前にブラックベアーをドリルランスで倒したときは何も言いませんでしたよね?
「私が来たからにはもう大丈夫だ」
少女二人の前にさっそうと舞い降りた。正確には地面を走って、少女とブラックベアーの間に割り込んだだけなのだが。ブラックベアーはすでに霧のように霧散して、あとにはブラックベアーの右腕だけが残されていた。これは煮込むとおいしいらしい。立派な食材アイテムである。
女の子二人はどうやら無事のようだ。かなり疲労しているが、ケガもなく、命に別状はなさそうである。体力回復ポーションがあれば良かったのだが、残念ながら手元にない。
だがしかし、なければ作ればいいじゃない。そんなわけでサクッと体力回復ポーションを作る。難しい錬金術アイテムではないので鼻クソをほじりながらでも余裕で作ることができる。
見たところ、少女二人は剣士と弓使いのペアのようである。安い革製の装備を身につけているところを見ると、駆け出しの冒険者のようだ。二人抱き合ったまま、こちらを見ている。何だか悪徳商人になった気分。
「これを飲むと良い。体力回復ポーションだ」
そう言って体力回復ポーションを一本ずつ渡した。ここで悪徳商人なら睡眠薬入りの飲み物を渡して、グヘヘヘヘするのだが、私は悪徳商人ではない。
だが、二人はそれを警戒しているのか、なかなか飲もうとしなかった。仕方がない。
「それならば一本は私が飲もう。残り一本を半分にして飲むと良い」
体力回復ポーション++のはずなので半分でも十分に効果を発揮するだろう。グイッと一本を飲み干すと、元気はつらつになった。疲れていないと思っていたが、それなりに疲れていたようだ。
それを見て、ようやく体力回復ポーションを口にする二人。目を見開いて驚いているようだが、見る見るうちに元気になった。
「す、すごいです! こんな錬金術アイテムがあるだなんて」
「初めて飲んだッス! すごいッス!」
「あー、なんだ、ついでに体もキレイにしてあげよう」
バッと体を隠す少女二人にオールクリーンを使う。見る見るうちにキレイになった。まるで洗い立てのようである。二人は真っ赤な顔をして、信じられない物を見るかのような目で体を確認していた。
その様子をほほ笑ましく見ていると、カビルンバがクイックイッと服を引っ張った。
「急いでこの場から離れましょう。これ以上、彼女たちと接触するのは危険です」
「分かった。そうしよう」
コソコソとマントの下の何かと話す姿を見て不思議そうに首をかしげている。周囲にモンスターの反応はないので、ここでこのまま別れても問題なく領都にたどり着くことができるだろう。寄り道さえしなければ。
「それでは、気をつけて領都に帰りたまえ」
「あ、ちょ、ちょっと!」
元魔王レオニートはクールに去るぜ。まるで一陣の風のようにその場を去った。何か言っているようだったが、これ以上の面倒事はこりごりである。カビルンバの反応を見るに、すでに何かやってしまった後のようではあるが。
「この辺りまで来れば大丈夫だな。ところでカビルンバ、ブラックベアーは強いモンスターなのか?」
「そうみたいですね。この間、冒険者ギルドの酒場に行ったときに改めて調べたのですが、どうやらBランクのモンスターみたいですね」
「なるほど、Bランクのモンスターだったのか。……それって強いのか?」
モンスターにランクがあると言う話は今初めて聞いた。冒険者にランクがあることはこの前の話で知っていたのだが、それに似たようなものなのかな?
「なぜ知っているかのような口ぶりをしたのですか。BランクモンスターはBランクのパーティーが倒せるレベルのモンスターですね」
「パーティーということは複数人で寄ってたかって倒すということだな」
「そうですけど、言い方! 大体、三人から四人で倒すみたいですね」
「ふーん、何でその人数なんだ?」
安全にモンスターを倒したいのなら、人数が多いに越したことはないはずだ。魔族に比べて人間はそれこそ星の数ほどいる。数の暴力で圧倒すれば良いのだ。まあ、ドラゴンなんかにまとめて消し飛ばされる可能性はあるがね。
「人数が多くなると、一人が得られる報酬が少なくなりますからね。家族で冒険者をやっているのなら共有財産になるので、問題にはなりにくいのでしょうけど」
「なるほどなぁ。安全の取るか、金を取るか、か。さっきの二人は金を取ったのかな?」
「どうなんでしょうね。もしかすると、ブラックベアーのおとりとして見捨てられた可能性も……」
おとりとして仲間を見捨てた? あのか弱そうな少女たちを見捨てたのか?
「なん……だと……?」
「か、可能性の話ですから! それが事実と決まったわけじゃないですから! ですからその殺気を抑えて下さい!」
10
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
異世界で至った男は帰還したがファンタジーに巻き込まれていく
竹桜
ファンタジー
神社のお参り帰りに異世界召喚に巻き込まれた主人公。
巻き込まれただけなのに、狂った姿を見たい為に何も無い真っ白な空間で閉じ込められる。
千年間も。
それなのに主人公は鍛錬をする。
1つのことだけを。
やがて、真っ白な空間から異世界に戻るが、その時に至っていたのだ。
これは異世界で至った男が帰還した現実世界でファンタジーに巻き込まれていく物語だ。
そして、主人公は至った力を存分に振るう。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
キモおじさんの正体は…
クラッベ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生し、ヒロインとなったナディア。
彼女はゲーム通りにいかない悪役令嬢のビビアンに濡れ衣を着せ、断罪イベントの発生を成功させる。
その後の悪役令嬢の末路は、ゲーム通りでは気持ち悪いおっさんに売られていくのを知っているナディアは、ざまぁみろと心の中で嘲笑っていた。
だけどこの時、この幸せが終わりを迎えることになるとは、ナディアは思っても見なかったのだ。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる