元魔王、救世主になる

えながゆうき

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グヘヘ

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 このまま問題なく戻れば夕暮れ前には領都に到着するだろう。早めに到着すれば余裕を持って今夜の夕食を選ぶことができるぞ。
 今は懐にそれなりのお金がある。この領都で一番の料理を食べるのも良いかも知れない。

 そんなことを思ってたのがいけなかったのか、索敵にモンスターが引っかかった。しかも悪いことに、近くに人間がいるようだ。冒険者かな? あまり会いたくないな。

「カビルンバ、人がモンスターに襲われている」
「またですか? レオ様の索敵範囲、広すぎるんじゃないですかね」
「……確かにそうかも知れない」

 だが見つけてしまったからには放っては置けまい。落ちぶれても元魔王。弱者を助けるのが強者の務めである。灰色のマントを身につけ、顔にお面を装着する。ユーモラスな表情が独特の雰囲気を作り出していた。店主いわく「ひょっとこ」と言うらしい。

「助けに行くぞ。放置はできん」
「その格好ならまあ、ギリギリ及第点でしょうか……」

 カビルンバもダメとは言わなかった。こう見えてカビルンバは優しいところがあるからな。見た目で不気味に思われることも多々あるが。大切なのは見てくれじゃない。中身を見てくれ。

「あそこだ。またブラックベアーに襲われているぞ。どんだけ生息域を広げているんだよ」
「おかしいですね。そんなに繁殖力が強いモンスターじゃなかったとはずですが……まさかね」
「カビルンバ、それ以上はいけない。妙なことを口走ってはダメだ。ドリルランス!」
「あ」

 ギュルンと音が鳴るのと同時にカビルンバの声が重なった。「あ」って……もしかして、また何かやらかしてしまいましたかね? でも前にブラックベアーをドリルランスで倒したときは何も言いませんでしたよね?

「私が来たからにはもう大丈夫だ」

 少女二人の前にさっそうと舞い降りた。正確には地面を走って、少女とブラックベアーの間に割り込んだだけなのだが。ブラックベアーはすでに霧のように霧散して、あとにはブラックベアーの右腕だけが残されていた。これは煮込むとおいしいらしい。立派な食材アイテムである。

 女の子二人はどうやら無事のようだ。かなり疲労しているが、ケガもなく、命に別状はなさそうである。体力回復ポーションがあれば良かったのだが、残念ながら手元にない。

 だがしかし、なければ作ればいいじゃない。そんなわけでサクッと体力回復ポーションを作る。難しい錬金術アイテムではないので鼻クソをほじりながらでも余裕で作ることができる。

 見たところ、少女二人は剣士と弓使いのペアのようである。安い革製の装備を身につけているところを見ると、駆け出しの冒険者のようだ。二人抱き合ったまま、こちらを見ている。何だか悪徳商人になった気分。

「これを飲むと良い。体力回復ポーションだ」

 そう言って体力回復ポーションを一本ずつ渡した。ここで悪徳商人なら睡眠薬入りの飲み物を渡して、グヘヘヘヘするのだが、私は悪徳商人ではない。
 だが、二人はそれを警戒しているのか、なかなか飲もうとしなかった。仕方がない。

「それならば一本は私が飲もう。残り一本を半分にして飲むと良い」

 体力回復ポーション++のはずなので半分でも十分に効果を発揮するだろう。グイッと一本を飲み干すと、元気はつらつになった。疲れていないと思っていたが、それなりに疲れていたようだ。
 それを見て、ようやく体力回復ポーションを口にする二人。目を見開いて驚いているようだが、見る見るうちに元気になった。

「す、すごいです! こんな錬金術アイテムがあるだなんて」
「初めて飲んだッス! すごいッス!」
「あー、なんだ、ついでに体もキレイにしてあげよう」

 バッと体を隠す少女二人にオールクリーンを使う。見る見るうちにキレイになった。まるで洗い立てのようである。二人は真っ赤な顔をして、信じられない物を見るかのような目で体を確認していた。
 その様子をほほ笑ましく見ていると、カビルンバがクイックイッと服を引っ張った。

「急いでこの場から離れましょう。これ以上、彼女たちと接触するのは危険です」
「分かった。そうしよう」

 コソコソとマントの下の何かと話す姿を見て不思議そうに首をかしげている。周囲にモンスターの反応はないので、ここでこのまま別れても問題なく領都にたどり着くことができるだろう。寄り道さえしなければ。

「それでは、気をつけて領都に帰りたまえ」
「あ、ちょ、ちょっと!」

 元魔王レオニートはクールに去るぜ。まるで一陣の風のようにその場を去った。何か言っているようだったが、これ以上の面倒事はこりごりである。カビルンバの反応を見るに、すでに何かやってしまった後のようではあるが。

「この辺りまで来れば大丈夫だな。ところでカビルンバ、ブラックベアーは強いモンスターなのか?」
「そうみたいですね。この間、冒険者ギルドの酒場に行ったときに改めて調べたのですが、どうやらBランクのモンスターみたいですね」
「なるほど、Bランクのモンスターだったのか。……それって強いのか?」

 モンスターにランクがあると言う話は今初めて聞いた。冒険者にランクがあることはこの前の話で知っていたのだが、それに似たようなものなのかな?

「なぜ知っているかのような口ぶりをしたのですか。BランクモンスターはBランクのパーティーが倒せるレベルのモンスターですね」
「パーティーということは複数人で寄ってたかって倒すということだな」
「そうですけど、言い方! 大体、三人から四人で倒すみたいですね」
「ふーん、何でその人数なんだ?」

 安全にモンスターを倒したいのなら、人数が多いに越したことはないはずだ。魔族に比べて人間はそれこそ星の数ほどいる。数の暴力で圧倒すれば良いのだ。まあ、ドラゴンなんかにまとめて消し飛ばされる可能性はあるがね。

「人数が多くなると、一人が得られる報酬が少なくなりますからね。家族で冒険者をやっているのなら共有財産になるので、問題にはなりにくいのでしょうけど」
「なるほどなぁ。安全の取るか、金を取るか、か。さっきの二人は金を取ったのかな?」
「どうなんでしょうね。もしかすると、ブラックベアーのおとりとして見捨てられた可能性も……」

 おとりとして仲間を見捨てた? あのか弱そうな少女たちを見捨てたのか?

「なん……だと……?」
「か、可能性の話ですから! それが事実と決まったわけじゃないですから! ですからその殺気を抑えて下さい!」
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