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領主代行
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さすがに上司はこれが何なのか理解しているようである。顔色が明らかに変わった。それを見て、先ほどの門番の表情がこわばる。
そんなに恐れなくて良いぞ。キミの態度は真っ当なものだったからな。
上司に連れられて屋敷の玄関へと向かっている間にも、指示を受けたであろう使用人たちが急ぎ足で右往左往していた。それを興味深そうにソフィアが見ている。
「さすがはレオニートじゃな」
「だろう?」
ニヤリとソフィアに笑ってみせる。まあ、私の力ではなく、どう考えてもアレリード伯爵からのシークレットカードのおかげなんですけどね。言わぬが花。それにもらったのは私なので、間接的に私がすごい可能性もあるのだ。
連れて来られたのはいくつもある応接室の中でも、最上位に位置する部屋のようである。
まず、入る前の扉からすごい。ダークブラウンの扉はツヤツヤに磨きあげられており、植物と鳥をあしらった装飾が上品に施されている。
使用人が厳かに扉を開けると、中にはキンキラキンの壺や真っ白なお皿、なんだかとても高そうな絵画が飾ってあった。
飴色のテーブルはまるで鏡のように磨きあげられており、触るのをためらわせた。
案内されたソファーに座ると、その柔らかさで後ろに転げそうになった。後ろに転げたソフィアを慌てて支える。子供のソフィアにはまだ早かったか。
「すぐに主様がお見えになりますので、少々お待ち下さい」
そう言って目の前にお茶とお菓子を置いた。今も周囲には五人ほどの使用人が待機している。すごいな、おい。領主代行ってこんなに好待遇なのか?
キョロキョロしているソフィアに小声で話す。
「ソフィア、飾られているものには絶対に手を出すな。万が一壊したりしたら、私の全財産がなくなってしまう。いや、それだけではすまないかも知れない」
「わ、分かったのじゃ。それじゃ、あのお菓子は?」
私の声色にソフィアも恐怖を感じてくれたようだ。思った以上にしっかり伝わって良かった。
お菓子か。おいしそうだもんね。でも直接ソフィアに取らせるのはなんだか怖いな。
そんなわけで、私が手に取ってソフィアに食べさせることにした。これなら大丈夫だろう。
ヒナ鳥に食べさせるようにソフィアの口にお菓子を運ぶ。飲み物も同様である。
見ろ、この高そうなティーカップ! ソフィアの馬鹿力なら簡単に粉々になってしまうことだろう。
「……レオニート、おぬし、また失礼なことを考えておるじゃろう?」
「そんなわけない。慎重に慎重を重ねて動いているだけだ」
「端から見ると、過保護な兄にしか見えませんけどね」
カビルンバが首を左右に振り、じいやが同感とばかりにうなずいている。
何とでも言うが良い。それよりも弁償する方が怖い。
バタバタと周囲が騒がしくなった。どうやら領主代行がやって来たようである。白髪交じりの男性が入って着た。ほほは痩せこけて、目の下には濃いクマがある。相当、参っているようだ。
「お待たせ致しました。アレリード伯爵より、領主代行を任じられておりますベンジャミン・スカルチノワです」
「レオニートです。アレリード伯爵からの依頼でここへ来ました」
そう言って例のシークレットカードを渡す。受け取ったベンジャミンはそれを見てうなずいている。本物だと認識したようである。
「その、どのような依頼なのでしょうか?」
「もしかして、まだアレリード伯爵からの手紙か来ておりませんか?」
「はい。まだ受け取っておりません」
「それでは私からかいつまんでお話しましょう。詳しくは手紙に書いてあるはずです」
ベンジャミンにこれまでの出来事を話す。商業都市ラザーニャを破壊する話がウソであることを知ったときには表情が明るくなった。どうやらアレリード伯爵と同様に、領主代行のベンジャミンもそのことに心を痛めていたようである。いい人だな。
「素晴らしい朗報です! 良かった、我々の苦労が無駄にならなくて、本当に良かった」
ついには涙を流し始めたベンジャミン。ここはもっと安心させてあげた方がいいかな?
「ちなみにそいつらが語った邪竜がこれです。邪竜ではなくて、古代竜ですが」
「これとは何じゃ、これとは! 相変わらず失礼なやつじゃのう」
「まあまあ、ソフィアも変なウワサが立つよりかは良いだろう?」
それもそうかと思ったのか、ソフィアが口を結んだ。恐れられても、怖がられることは望んでいないようである。その辺のさじ加減は難しそうだな。
……あれ? ベンジャミンが石化しているぞ。もしかして、まずかった?
「レオ様、さすがに脅すようなことをするのはまずいかと」
「違うから、ここにいるから大丈夫ですよーって言いたかっただけだから!」
「本当に~?」
どうやら誤解されているようだ。そのことを懸命に話し、何とか誤解を解くことができた。
ここに来た目的が、モンスターに変異した者を家族に持つ人たちとの面談だと言うと、すぐに案内してくれることになった。
「家族の方には申し訳ないのですが、人に感染する恐れがあります。ですから隔離させていただきました」
「当然の対応だと思います。家族に変化は見られましたか?」
「いいえ、今のところは何もありません」
そうなると疫病ではないのかな? 確かによく考えてみると、広がり方が妙である。疫病ならばもっと周囲に広がってもおかしくはないのに、ある一定の範囲内だけでとどまっている。
そしてまた別の場所で同じような症状が発生するのだ。
これはもしかすると、何かしらの錬金術アイテムを使っている可能性があるな。使うと一定範囲内の人をモンスターに変異させるアイテムだ。
だが、そんなアイテムを聞いたことがないし、見たこともない。そうなると、私が眠っている百年の間にひそかに開発されたことになるな。
錬金術アイテムを犯罪に使うとはけしからん。必ず成敗せねばならんな。錬金術アイテムの使用が禁止されるようなことになれば、生きていけなくなってしまう。そうなると、ソフィアも路頭に迷うことに……。
そんなに恐れなくて良いぞ。キミの態度は真っ当なものだったからな。
上司に連れられて屋敷の玄関へと向かっている間にも、指示を受けたであろう使用人たちが急ぎ足で右往左往していた。それを興味深そうにソフィアが見ている。
「さすがはレオニートじゃな」
「だろう?」
ニヤリとソフィアに笑ってみせる。まあ、私の力ではなく、どう考えてもアレリード伯爵からのシークレットカードのおかげなんですけどね。言わぬが花。それにもらったのは私なので、間接的に私がすごい可能性もあるのだ。
連れて来られたのはいくつもある応接室の中でも、最上位に位置する部屋のようである。
まず、入る前の扉からすごい。ダークブラウンの扉はツヤツヤに磨きあげられており、植物と鳥をあしらった装飾が上品に施されている。
使用人が厳かに扉を開けると、中にはキンキラキンの壺や真っ白なお皿、なんだかとても高そうな絵画が飾ってあった。
飴色のテーブルはまるで鏡のように磨きあげられており、触るのをためらわせた。
案内されたソファーに座ると、その柔らかさで後ろに転げそうになった。後ろに転げたソフィアを慌てて支える。子供のソフィアにはまだ早かったか。
「すぐに主様がお見えになりますので、少々お待ち下さい」
そう言って目の前にお茶とお菓子を置いた。今も周囲には五人ほどの使用人が待機している。すごいな、おい。領主代行ってこんなに好待遇なのか?
キョロキョロしているソフィアに小声で話す。
「ソフィア、飾られているものには絶対に手を出すな。万が一壊したりしたら、私の全財産がなくなってしまう。いや、それだけではすまないかも知れない」
「わ、分かったのじゃ。それじゃ、あのお菓子は?」
私の声色にソフィアも恐怖を感じてくれたようだ。思った以上にしっかり伝わって良かった。
お菓子か。おいしそうだもんね。でも直接ソフィアに取らせるのはなんだか怖いな。
そんなわけで、私が手に取ってソフィアに食べさせることにした。これなら大丈夫だろう。
ヒナ鳥に食べさせるようにソフィアの口にお菓子を運ぶ。飲み物も同様である。
見ろ、この高そうなティーカップ! ソフィアの馬鹿力なら簡単に粉々になってしまうことだろう。
「……レオニート、おぬし、また失礼なことを考えておるじゃろう?」
「そんなわけない。慎重に慎重を重ねて動いているだけだ」
「端から見ると、過保護な兄にしか見えませんけどね」
カビルンバが首を左右に振り、じいやが同感とばかりにうなずいている。
何とでも言うが良い。それよりも弁償する方が怖い。
バタバタと周囲が騒がしくなった。どうやら領主代行がやって来たようである。白髪交じりの男性が入って着た。ほほは痩せこけて、目の下には濃いクマがある。相当、参っているようだ。
「お待たせ致しました。アレリード伯爵より、領主代行を任じられておりますベンジャミン・スカルチノワです」
「レオニートです。アレリード伯爵からの依頼でここへ来ました」
そう言って例のシークレットカードを渡す。受け取ったベンジャミンはそれを見てうなずいている。本物だと認識したようである。
「その、どのような依頼なのでしょうか?」
「もしかして、まだアレリード伯爵からの手紙か来ておりませんか?」
「はい。まだ受け取っておりません」
「それでは私からかいつまんでお話しましょう。詳しくは手紙に書いてあるはずです」
ベンジャミンにこれまでの出来事を話す。商業都市ラザーニャを破壊する話がウソであることを知ったときには表情が明るくなった。どうやらアレリード伯爵と同様に、領主代行のベンジャミンもそのことに心を痛めていたようである。いい人だな。
「素晴らしい朗報です! 良かった、我々の苦労が無駄にならなくて、本当に良かった」
ついには涙を流し始めたベンジャミン。ここはもっと安心させてあげた方がいいかな?
「ちなみにそいつらが語った邪竜がこれです。邪竜ではなくて、古代竜ですが」
「これとは何じゃ、これとは! 相変わらず失礼なやつじゃのう」
「まあまあ、ソフィアも変なウワサが立つよりかは良いだろう?」
それもそうかと思ったのか、ソフィアが口を結んだ。恐れられても、怖がられることは望んでいないようである。その辺のさじ加減は難しそうだな。
……あれ? ベンジャミンが石化しているぞ。もしかして、まずかった?
「レオ様、さすがに脅すようなことをするのはまずいかと」
「違うから、ここにいるから大丈夫ですよーって言いたかっただけだから!」
「本当に~?」
どうやら誤解されているようだ。そのことを懸命に話し、何とか誤解を解くことができた。
ここに来た目的が、モンスターに変異した者を家族に持つ人たちとの面談だと言うと、すぐに案内してくれることになった。
「家族の方には申し訳ないのですが、人に感染する恐れがあります。ですから隔離させていただきました」
「当然の対応だと思います。家族に変化は見られましたか?」
「いいえ、今のところは何もありません」
そうなると疫病ではないのかな? 確かによく考えてみると、広がり方が妙である。疫病ならばもっと周囲に広がってもおかしくはないのに、ある一定の範囲内だけでとどまっている。
そしてまた別の場所で同じような症状が発生するのだ。
これはもしかすると、何かしらの錬金術アイテムを使っている可能性があるな。使うと一定範囲内の人をモンスターに変異させるアイテムだ。
だが、そんなアイテムを聞いたことがないし、見たこともない。そうなると、私が眠っている百年の間にひそかに開発されたことになるな。
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