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一つの可能性
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「どうしたんじゃ? まさか、見覚えがあるのか」
「いや、ない。初めて見る種類の、呪いのアイテムだな。一応、錬金術アイテムの分類に入るのかも知れないが、認めたくはないな」
錬金術アイテムは人々の役に立つ物である。決してだれかを不幸にするようなものであってはならないと私は思っている。
「それでは一体、どうしたのじゃ?」
「だれが作ったんだろうと思ってな。これだけの物を作れる魔族は限られる」
手の中でそれを転がしていると、それを見ていたカビルンバが低い声を出した。
「やはり、四天王が……?」
「なんじゃと?」
「その可能性が高まったのではないかと思っている」
もしそうならば、色々とつじつまが合ってくる。ソフィアのことを知っているし、その名前を語ることができる。
さらにはそれなりの強さも持っており、作ろうと思えばこのような邪悪なアイテムも作り出すこともできるのだ。
「ひとまずこのクリスタルは回収しておこう。マジックバッグの中に入れておけば、まず大丈夫だろう」
「そうですね。マジックバッグの中はこの世界とは隔絶されている領域だと言われていますからね」
マジックバッグの中にしまうと、宿屋へと急いだ。呪いを解くにはそれなりの錬金術アイテムが必要だ。ウワサでは聖女が呪いを解くことができるという話を聞いたことがあるが、眉唾物である。
アイテム作成に必要な素材はそろっている。金貨と銀貨を使うことになるが、改めて金銀を買いに行くよりも早くてすむ。
残りの素材である塩は前回、「解呪の破魔札」を作ったときの残りがある。何とかなるだろう。
心配なのはルビーを問題なく「太陽の紅玉」に加工できるかだな。恐らく問題はないと思うのだが……ソフィアがいるので集中できるかどうかが心配だ。大人しくしてくれていると良いのだが。
宿屋に着くころには日も暮れかけていた。帰り道で夕食の串焼きを買い込んだ。まだ串焼きか、とソフィアから言われるかと思ったのだが、どうやら串焼きを気に入ったようであり、特に文句は出なかった。
「聖女のネックレスの効果を確かめるのは明日になるな」
「そうなりますね。ですが、原因は取り除いたのです。これ以上の被害が広がることはないでしょう」
「そうだな。そうであって欲しいところだな」
テーブルの上に串焼きを並べる。火属性魔法で良い感じに温めるとソフィアが感心していた。そしてモグモグと串焼きを食べ始めた。
「器用じゃな。わらわだとこうはならぬ」
「錬金術アイテムを作っていればソフィアもできるようになるさ。作ってみるか?」
「遠慮しておく。あのような細々とした作業をしていたら、頭がどうかなりそうじゃ」
分かる。間違いなく「あー!」ってなって、テーブルの上の物をぶちまけるはずである。ソフィアはちょっと気が短いところがあるからね。それに不器用なのか、細かい作業も苦手だ。私がソフィアにお菓子を食べさせるのにはそんな側面もあった。
「カビルンバよ、四天王の動きは分からぬのか?」
「分かりませんね。この百年の間にどこかへ移動しているみたいです。元々いた居住地はすでに廃墟になってますよ」
「フム……レオニートは何か感じぬのか?」
注目が集まる。確かに索敵魔法が使えるので、三人よりかは人捜しをするのが楽ではある。だがしかし。
「ラザーニャは人が多すぎる。その分だけ、索敵魔法に引っかかる人も多い。その中から四天王を探すのは無理だろうな。戦闘態勢に入れば話は別なのだが……」
「普段は大量の魔力を放出していないでしょうからな。確かに見分けがつかないかも知れませんなあ」
じいやは納得してくれたようである。その通りなんだよなぁ。明らかに他の人と異質な魔力を放出してくれていればすぐに見分けがつくのに、普段は通りを歩く人たちと何ら変わらない魔力量だからね。
「レオニートの魔法も万能ではないか」
「そういうことだな。そんなわけで、今のところ手の出しようがない。何か動きがあるまで、静かにしておくしかないな」
随分と消極的な対応になるが、やむを得ない。できることならば捕まえて、何を考えているのかを聞いてみたいところだけどな。
夕食を食べたあとは錬金術アイテムの作成だ。ソフィアを大浴場に送り込むとすぐに作業に入る。
「いいんですか? ソフィアさんを一人にさせておいて」
「だからと言って一緒にお風呂に入るわけにもいかないだろう? カビルンバがちゃんと監視してくれているなら大丈夫だ。問題ない」
「それはそうですけど……あ、今、不安そうな顔をして、腕から胸にかけて体を洗ってますよ」
「実況せんでいい」
余計な邪念が湧く。集中、集中。このルビーを太陽の紅玉に変換する作業さえうまく行けば、残りの作業はソフィアが近くでウロウロしていても何とかなる。
ルビーに濃厚な魔力をまとわせると、その内部に魔法陣を描き込んでいく。この魔法陣と魔力によって、ルビーの性質を変化させるのだ。
私が集中していることを認識したのだろう。二人は口を結んだまま、私の作業をジッと見つめていた。
ルビーにまとわせていた魔力が内部へと引き込まれて行く。それに従って少しずつルビーの色が輝き始めた。キラキラとした物が内部に浮かび上がる。
それに見とれている暇もなく、次々に魔法陣を描いていった。
ルビーにまとわせていた魔力が全てなくなったころ、丸い太陽の紅玉が完成した。
「初めて物を変質させるのを見ましたが、すごいですね」
「このようなことができるのは主くらいでしょうな」
カビルンバとじいやが感嘆の吐息を漏らした。そうだろう、そうだろう。私も自分しかできないと思っている。この技術を継承できるかと言われれば、無理だろうな。
集中力、魔力、技術力、どれも最高レベルのものが必要になるのだ。
「良い風呂じゃったぞ。また入りたいものじゃな。今度はレオニートと一緒に……何じゃ、それは?」
「お帰り、ソフィア。これはさっき話していた、聖女のネックレスの素材だよ」
「キレイなのじゃ」
ソフィアが光り物に興味を持つだなんて珍しいな。完成したらソフィアにプレゼントするのが良いかも知れないな。だれが持っていても効果は同じだからね。
「いや、ない。初めて見る種類の、呪いのアイテムだな。一応、錬金術アイテムの分類に入るのかも知れないが、認めたくはないな」
錬金術アイテムは人々の役に立つ物である。決してだれかを不幸にするようなものであってはならないと私は思っている。
「それでは一体、どうしたのじゃ?」
「だれが作ったんだろうと思ってな。これだけの物を作れる魔族は限られる」
手の中でそれを転がしていると、それを見ていたカビルンバが低い声を出した。
「やはり、四天王が……?」
「なんじゃと?」
「その可能性が高まったのではないかと思っている」
もしそうならば、色々とつじつまが合ってくる。ソフィアのことを知っているし、その名前を語ることができる。
さらにはそれなりの強さも持っており、作ろうと思えばこのような邪悪なアイテムも作り出すこともできるのだ。
「ひとまずこのクリスタルは回収しておこう。マジックバッグの中に入れておけば、まず大丈夫だろう」
「そうですね。マジックバッグの中はこの世界とは隔絶されている領域だと言われていますからね」
マジックバッグの中にしまうと、宿屋へと急いだ。呪いを解くにはそれなりの錬金術アイテムが必要だ。ウワサでは聖女が呪いを解くことができるという話を聞いたことがあるが、眉唾物である。
アイテム作成に必要な素材はそろっている。金貨と銀貨を使うことになるが、改めて金銀を買いに行くよりも早くてすむ。
残りの素材である塩は前回、「解呪の破魔札」を作ったときの残りがある。何とかなるだろう。
心配なのはルビーを問題なく「太陽の紅玉」に加工できるかだな。恐らく問題はないと思うのだが……ソフィアがいるので集中できるかどうかが心配だ。大人しくしてくれていると良いのだが。
宿屋に着くころには日も暮れかけていた。帰り道で夕食の串焼きを買い込んだ。まだ串焼きか、とソフィアから言われるかと思ったのだが、どうやら串焼きを気に入ったようであり、特に文句は出なかった。
「聖女のネックレスの効果を確かめるのは明日になるな」
「そうなりますね。ですが、原因は取り除いたのです。これ以上の被害が広がることはないでしょう」
「そうだな。そうであって欲しいところだな」
テーブルの上に串焼きを並べる。火属性魔法で良い感じに温めるとソフィアが感心していた。そしてモグモグと串焼きを食べ始めた。
「器用じゃな。わらわだとこうはならぬ」
「錬金術アイテムを作っていればソフィアもできるようになるさ。作ってみるか?」
「遠慮しておく。あのような細々とした作業をしていたら、頭がどうかなりそうじゃ」
分かる。間違いなく「あー!」ってなって、テーブルの上の物をぶちまけるはずである。ソフィアはちょっと気が短いところがあるからね。それに不器用なのか、細かい作業も苦手だ。私がソフィアにお菓子を食べさせるのにはそんな側面もあった。
「カビルンバよ、四天王の動きは分からぬのか?」
「分かりませんね。この百年の間にどこかへ移動しているみたいです。元々いた居住地はすでに廃墟になってますよ」
「フム……レオニートは何か感じぬのか?」
注目が集まる。確かに索敵魔法が使えるので、三人よりかは人捜しをするのが楽ではある。だがしかし。
「ラザーニャは人が多すぎる。その分だけ、索敵魔法に引っかかる人も多い。その中から四天王を探すのは無理だろうな。戦闘態勢に入れば話は別なのだが……」
「普段は大量の魔力を放出していないでしょうからな。確かに見分けがつかないかも知れませんなあ」
じいやは納得してくれたようである。その通りなんだよなぁ。明らかに他の人と異質な魔力を放出してくれていればすぐに見分けがつくのに、普段は通りを歩く人たちと何ら変わらない魔力量だからね。
「レオニートの魔法も万能ではないか」
「そういうことだな。そんなわけで、今のところ手の出しようがない。何か動きがあるまで、静かにしておくしかないな」
随分と消極的な対応になるが、やむを得ない。できることならば捕まえて、何を考えているのかを聞いてみたいところだけどな。
夕食を食べたあとは錬金術アイテムの作成だ。ソフィアを大浴場に送り込むとすぐに作業に入る。
「いいんですか? ソフィアさんを一人にさせておいて」
「だからと言って一緒にお風呂に入るわけにもいかないだろう? カビルンバがちゃんと監視してくれているなら大丈夫だ。問題ない」
「それはそうですけど……あ、今、不安そうな顔をして、腕から胸にかけて体を洗ってますよ」
「実況せんでいい」
余計な邪念が湧く。集中、集中。このルビーを太陽の紅玉に変換する作業さえうまく行けば、残りの作業はソフィアが近くでウロウロしていても何とかなる。
ルビーに濃厚な魔力をまとわせると、その内部に魔法陣を描き込んでいく。この魔法陣と魔力によって、ルビーの性質を変化させるのだ。
私が集中していることを認識したのだろう。二人は口を結んだまま、私の作業をジッと見つめていた。
ルビーにまとわせていた魔力が内部へと引き込まれて行く。それに従って少しずつルビーの色が輝き始めた。キラキラとした物が内部に浮かび上がる。
それに見とれている暇もなく、次々に魔法陣を描いていった。
ルビーにまとわせていた魔力が全てなくなったころ、丸い太陽の紅玉が完成した。
「初めて物を変質させるのを見ましたが、すごいですね」
「このようなことができるのは主くらいでしょうな」
カビルンバとじいやが感嘆の吐息を漏らした。そうだろう、そうだろう。私も自分しかできないと思っている。この技術を継承できるかと言われれば、無理だろうな。
集中力、魔力、技術力、どれも最高レベルのものが必要になるのだ。
「良い風呂じゃったぞ。また入りたいものじゃな。今度はレオニートと一緒に……何じゃ、それは?」
「お帰り、ソフィア。これはさっき話していた、聖女のネックレスの素材だよ」
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ソフィアが光り物に興味を持つだなんて珍しいな。完成したらソフィアにプレゼントするのが良いかも知れないな。だれが持っていても効果は同じだからね。
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