70 / 104
別に気になってない
しおりを挟む
ジッと太陽の紅玉を見つめているソフィアには悪いが、仕上げの作業をしなければならない。
このままでは錬金術アイテムとしての効果はなく、ただのキレイな赤玉である。
「それじゃ、最後の工程に移るとしよう。ソフィアは解呪のアイテムが近くにあっても大丈夫だよな?」
「何を言っておる。大丈夫に決まっておるじゃろうが。わらわを何だと思っておるのじゃ」
「邪竜……じょ、冗談ですー!」
飛びかかって来たソフィアを何とか引きはがす。ほら、あれだよ。念のために聞いてみただけだよ。形式美ってやつだ。だからカビルンバ君にじいや君? そんな生暖かい目でこちらを見てはいけないよ。
「仲がよろしいですね」
「違うから。兄妹としてのただのじゃれ合いだから」
「……そういうことにしておいてあげましょう。それよりも、早いところ聖女のネックレスを完成させないと。これ以上遅くなるとお風呂が閉まってしまいますよ」
「それは困るな。超特急で作らないと」
テーブルの上に金貨と銀貨、それから塩を並べる。そのままサクッと塩から「白の中和剤」を作り出した。白濁した白い液体がテーブルの上に並ぶ。それをソフィアが目を輝かせて見ていた。興味津々だな。
「それには特に効果はないぞ。他の素材を混ざりやすくするための水みたいなものだな」
「おいしいのか?」
「飲んだことないけど、たぶんおいしくないと思う」
中和剤を飲もうとするとは、さすがは腹ぺこ怪獣ソフィア。何でも口に入れそうで怖い。本当にしないよね?
ソフィアの様子を気にしながら、聖女のネックレスを作るための魔法陣を展開する。テーブルの上に、魔力で形作られた丸や四角、三角、星形の幾何学模様が踊り始めた。
「いつ見てもレオニートが作る魔法陣はキレイじゃな」
「そうか? みんなこんなもんじゃないのか? 他の人が錬金術アイテムを作っているところをじっくりと見たことはないけど」
「全然違うぞ」
あきれたようにため息をついたソフィア。どうやらソフィアは他の人が錬金術アイテムを作っているところを見たことがあるらしい。べ、別に気になってなんかないんだからね。
「レオ様、集中して下さい。魔法陣が乱れてますよ」
「お、おう、そうだな」
ここで失敗してどうする。集中しなければ。しかし、一体だれだ?
テーブルの上に置いてある素材が光の粒になり混じり合った。そして一つにまとまった光の粒子が消えると、そこには赤い宝石がキラリと光る、美しいネックレスが残されていた。
「ふむ、予定通り聖女のネックレス++が完成したな」
「お見事です。途中で魔法陣が乱れたときにはどうなるかと思いましたよ」
「……キレイなのじゃ」
「ソフィア?」
ソフィアがとろけるような目で聖女のネックレスを見つめている。その姿に思わずギョッとした。
この顔、見覚えがあるぞ。ときどき私の顔を見てこんな表情になっていた。
「どうしたんですか、レオ様? 何だか顔色が良くないですよ」
「何でもないぞ。ソフィア、それが気に入ったのなら、プレゼントするぞ。……その、おわびの印として」
ソフィアには私のことで心配をさせてしまったからな。それに百年もの間、無駄にソフィアをタイラント山に縛り付けてしまった。いくら謝っても、謝りきれない。
ソフィアが先ほど魔法陣に描かれていた五芒星のように目を輝かせてこちらを見上げた。両手も子猫のように握られている。まるでネコだな。興奮しているのか、普段は見えなくなっているはずの太い尻尾が左右に揺れている。
「良いのか?」
「良いのだ。だれが身につけていても効果は同じだからな。まあ、ソフィアに呪いなんぞ効かないだろうから、ただの飾りにしかならないけどな」
「つ、つけてくれるか?」
「いいとも」
聖女のネックレスを手に取ると、ソフィアの後ろに回った。そのまま首元を確かめると、肌を傷つけないように慎重にネックレスをつける。
まあ、ドラゴンの皮膚に傷をつける方が難しいのだが、それはそれである。
ソフィアが少しくすぐったそうにしていたが、無事に胸元で赤い宝石が輝いた。解呪の効果は間違いないはずだ。明日、クリスタルが置いてあった周辺を適当に巡回すれば、その辺りの呪いはキレイさっぱりなくなることだろう。
「気に入ってくれたのは良いが、寝るときは外して寝るんだぞ」
「嫌じゃ」
「嫌じゃありません。ケガしたらどうするんだ」
「そう簡単に傷などつかぬ」
そうなんだけどね、そうじゃない。第一、そんな物が胸元にあったら寝るときの邪魔になるだろうに。言うことを聞かない子供か。……子供かも知れないな。
「何じゃその目は。分かった。朝起きてレオニートがつけてくれるのなら外すとしよう」
「そのままつけて寝ても良いのかも知れない」
「ムウ!」
ソフィアがポコポコと殴って来た。地味に痛い。自分が馬鹿力のバッケンレコードである自覚はないのか。もしカビルンバなら壁にたたきつけられたトマトのようになっていたところだぞ。
「お二人は本当に仲がよろしいですな」
「まあ、兄妹だからな」
「……その設定はいつまで続くのじゃ?」
「少なくとも人間社会にいる間は続くな」
答えを聞いたソフィアのほほが膨らんだ。不服なのかも知れないが、美少女が一人で街の中をウロウロするのは注目を集めるだけだ。
そして注目を集めれば、当然、下心のあるヤツらが集まってくる。そしてそれをソフィアがひねり潰す。衛兵に追いかけられる。街に入れない。
うん、どう考えても無理だな。人間と和平を結んだ段階で人間社会に溶け込んで生きるしかないのだ。今さら闇に隠れて生きるのは無理がある。
私たちは妖怪人間じゃなくて、魔族と古代竜だからな。
「さて、急いで風呂に入らないといけないな」
「背中を流してあげるのじゃ!」
「余計な気をつかわなくていい。それにソフィアと一緒に入ると、色々と問題になる」
「兄妹だから問題ないのじゃ」
まずい、兄妹設定が別の意味を持ち始めたぞ。すなわち、兄妹なので何をやっても良いということだ。
ソフィアの胸を見る。うん、ペッタンコだな。これなら問題ない? 視線に気がついたソフィアが胸を両手で隠した。
「……」
気まずい。カビルンバとじいやを監視役としてその場に残すと、逃げるようにこの場を去った。
このままでは錬金術アイテムとしての効果はなく、ただのキレイな赤玉である。
「それじゃ、最後の工程に移るとしよう。ソフィアは解呪のアイテムが近くにあっても大丈夫だよな?」
「何を言っておる。大丈夫に決まっておるじゃろうが。わらわを何だと思っておるのじゃ」
「邪竜……じょ、冗談ですー!」
飛びかかって来たソフィアを何とか引きはがす。ほら、あれだよ。念のために聞いてみただけだよ。形式美ってやつだ。だからカビルンバ君にじいや君? そんな生暖かい目でこちらを見てはいけないよ。
「仲がよろしいですね」
「違うから。兄妹としてのただのじゃれ合いだから」
「……そういうことにしておいてあげましょう。それよりも、早いところ聖女のネックレスを完成させないと。これ以上遅くなるとお風呂が閉まってしまいますよ」
「それは困るな。超特急で作らないと」
テーブルの上に金貨と銀貨、それから塩を並べる。そのままサクッと塩から「白の中和剤」を作り出した。白濁した白い液体がテーブルの上に並ぶ。それをソフィアが目を輝かせて見ていた。興味津々だな。
「それには特に効果はないぞ。他の素材を混ざりやすくするための水みたいなものだな」
「おいしいのか?」
「飲んだことないけど、たぶんおいしくないと思う」
中和剤を飲もうとするとは、さすがは腹ぺこ怪獣ソフィア。何でも口に入れそうで怖い。本当にしないよね?
ソフィアの様子を気にしながら、聖女のネックレスを作るための魔法陣を展開する。テーブルの上に、魔力で形作られた丸や四角、三角、星形の幾何学模様が踊り始めた。
「いつ見てもレオニートが作る魔法陣はキレイじゃな」
「そうか? みんなこんなもんじゃないのか? 他の人が錬金術アイテムを作っているところをじっくりと見たことはないけど」
「全然違うぞ」
あきれたようにため息をついたソフィア。どうやらソフィアは他の人が錬金術アイテムを作っているところを見たことがあるらしい。べ、別に気になってなんかないんだからね。
「レオ様、集中して下さい。魔法陣が乱れてますよ」
「お、おう、そうだな」
ここで失敗してどうする。集中しなければ。しかし、一体だれだ?
テーブルの上に置いてある素材が光の粒になり混じり合った。そして一つにまとまった光の粒子が消えると、そこには赤い宝石がキラリと光る、美しいネックレスが残されていた。
「ふむ、予定通り聖女のネックレス++が完成したな」
「お見事です。途中で魔法陣が乱れたときにはどうなるかと思いましたよ」
「……キレイなのじゃ」
「ソフィア?」
ソフィアがとろけるような目で聖女のネックレスを見つめている。その姿に思わずギョッとした。
この顔、見覚えがあるぞ。ときどき私の顔を見てこんな表情になっていた。
「どうしたんですか、レオ様? 何だか顔色が良くないですよ」
「何でもないぞ。ソフィア、それが気に入ったのなら、プレゼントするぞ。……その、おわびの印として」
ソフィアには私のことで心配をさせてしまったからな。それに百年もの間、無駄にソフィアをタイラント山に縛り付けてしまった。いくら謝っても、謝りきれない。
ソフィアが先ほど魔法陣に描かれていた五芒星のように目を輝かせてこちらを見上げた。両手も子猫のように握られている。まるでネコだな。興奮しているのか、普段は見えなくなっているはずの太い尻尾が左右に揺れている。
「良いのか?」
「良いのだ。だれが身につけていても効果は同じだからな。まあ、ソフィアに呪いなんぞ効かないだろうから、ただの飾りにしかならないけどな」
「つ、つけてくれるか?」
「いいとも」
聖女のネックレスを手に取ると、ソフィアの後ろに回った。そのまま首元を確かめると、肌を傷つけないように慎重にネックレスをつける。
まあ、ドラゴンの皮膚に傷をつける方が難しいのだが、それはそれである。
ソフィアが少しくすぐったそうにしていたが、無事に胸元で赤い宝石が輝いた。解呪の効果は間違いないはずだ。明日、クリスタルが置いてあった周辺を適当に巡回すれば、その辺りの呪いはキレイさっぱりなくなることだろう。
「気に入ってくれたのは良いが、寝るときは外して寝るんだぞ」
「嫌じゃ」
「嫌じゃありません。ケガしたらどうするんだ」
「そう簡単に傷などつかぬ」
そうなんだけどね、そうじゃない。第一、そんな物が胸元にあったら寝るときの邪魔になるだろうに。言うことを聞かない子供か。……子供かも知れないな。
「何じゃその目は。分かった。朝起きてレオニートがつけてくれるのなら外すとしよう」
「そのままつけて寝ても良いのかも知れない」
「ムウ!」
ソフィアがポコポコと殴って来た。地味に痛い。自分が馬鹿力のバッケンレコードである自覚はないのか。もしカビルンバなら壁にたたきつけられたトマトのようになっていたところだぞ。
「お二人は本当に仲がよろしいですな」
「まあ、兄妹だからな」
「……その設定はいつまで続くのじゃ?」
「少なくとも人間社会にいる間は続くな」
答えを聞いたソフィアのほほが膨らんだ。不服なのかも知れないが、美少女が一人で街の中をウロウロするのは注目を集めるだけだ。
そして注目を集めれば、当然、下心のあるヤツらが集まってくる。そしてそれをソフィアがひねり潰す。衛兵に追いかけられる。街に入れない。
うん、どう考えても無理だな。人間と和平を結んだ段階で人間社会に溶け込んで生きるしかないのだ。今さら闇に隠れて生きるのは無理がある。
私たちは妖怪人間じゃなくて、魔族と古代竜だからな。
「さて、急いで風呂に入らないといけないな」
「背中を流してあげるのじゃ!」
「余計な気をつかわなくていい。それにソフィアと一緒に入ると、色々と問題になる」
「兄妹だから問題ないのじゃ」
まずい、兄妹設定が別の意味を持ち始めたぞ。すなわち、兄妹なので何をやっても良いということだ。
ソフィアの胸を見る。うん、ペッタンコだな。これなら問題ない? 視線に気がついたソフィアが胸を両手で隠した。
「……」
気まずい。カビルンバとじいやを監視役としてその場に残すと、逃げるようにこの場を去った。
0
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
異世界で至った男は帰還したがファンタジーに巻き込まれていく
竹桜
ファンタジー
神社のお参り帰りに異世界召喚に巻き込まれた主人公。
巻き込まれただけなのに、狂った姿を見たい為に何も無い真っ白な空間で閉じ込められる。
千年間も。
それなのに主人公は鍛錬をする。
1つのことだけを。
やがて、真っ白な空間から異世界に戻るが、その時に至っていたのだ。
これは異世界で至った男が帰還した現実世界でファンタジーに巻き込まれていく物語だ。
そして、主人公は至った力を存分に振るう。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
キモおじさんの正体は…
クラッベ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生し、ヒロインとなったナディア。
彼女はゲーム通りにいかない悪役令嬢のビビアンに濡れ衣を着せ、断罪イベントの発生を成功させる。
その後の悪役令嬢の末路は、ゲーム通りでは気持ち悪いおっさんに売られていくのを知っているナディアは、ざまぁみろと心の中で嘲笑っていた。
だけどこの時、この幸せが終わりを迎えることになるとは、ナディアは思っても見なかったのだ。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる