元魔王、救世主になる

えながゆうき

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帰還

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 現状を把握したところで街へ戻ることにした。今のままでは情報が足りない。人間社会の図書館だけでなく、魔族、エルフ、ドワーフの書物もあさる必要があるだろう。こうしてはいられない。

「一度、バディア辺境伯家に戻り、現状の話をしようと思う。バディア辺境伯の力を借りる必要があるからな。ミューはラザーニャの図書館で使える情報がないか調べてくれ」
「嫌ッス。ダーリンについて行くッス。例のエレナ嬢に会いに行くつもりッスよね? そうはさせないッス」

 そう言って私の腕に絡みつくミュー。その力強さから、絶対に離さないという意気込みを感じる。これは一緒に連れて行くしかないな。こんなところで無駄な時間を使うわけには行かない。ついでなのでソフィアにも会わせておいた方が良いな。

「カビルンバ、ソフィアにも一度戻るように伝えてもらえないか?」
「分かりました。面倒なことは一度で終わらせた方が良いですからね」

 ソフィアの名前を聞いて、ブルッと震えたが、やはりこの腕を放すつもりはなさそうである。そんなミューを促して、元来た道を引き返した。
 帰りはもちろん、亡国跡地を避けて進んだ。ついでに進行上の魔力の流れも確認したが、やはりあの穴があった方角に向かって魔力が流れているようだった。

「世界樹のおかげで早い段階でこの世界の危機を発見することができたな。いや、世界樹の研究をしていたエルフたちのおかげか」
「フフン、もっとほめても良いッスよ?」
「調子に乗るな」
「あいたっ」

 亡国に近づかないことが分かり、元気になったミューにチョップを食らわせる。どうしてこんなにお調子者なのか。バディア辺境伯家についたら修羅場になるかも知れないのに。エレナ嬢はともかくとして、ミューを連れて帰ったらソフィアが騒ぐことは間違いないだろう。
 下手すれば、どちらが上なのかを分からせようとするかも知れない。おお怖い。そしてそれを止めるのが私の役目である。

 道中、何度かラザーニャにとどまるように言ったのだが、ついにミューがそれを聞き入れることはなかった。どうやらすでにソフィアと対決することを覚悟しているようだ。
 この感じだとエレナ嬢とも一騒動ありそうだ。持ってくれよ、私の体。

 目の前に見慣れた石の壁が見えて来た。バディア辺境伯領の領都を守る壁である。人目を避けるために、少し遠くの森に降り立った。ここからは徒歩で向かう。

「さっき見えた壁の向こうが領都だ」
「まだ距離があるッスね。今のうちに心を落ち着けるッス」
「いや、無理してついてこなくてもいいからね? ダメそうな街の宿屋を借りれば良いし」

 スーハーしているミューを見て、思わず苦笑いが漏れた。そこまで嫌なら、どうしてついて来ると主張するのか。別に会わなくても問題ないと思うのに。

「ダーリンもその宿に泊まるッスか?」
「いや、たぶんバディア辺境伯邸に泊まることになると思う」
「……ついて行くッス。ダーリンからはまだ借りを返してもらってないッス」
「え! もう十分返しただろう? ずっと背中を洗ってあげたじゃないか」
「あんなものじゃ、まだまだ足りないッス」

 どうやらミューはかなりの強欲のようである。参ったなこりゃ。バディア辺境伯邸でも一緒にお風呂に入ると言い出しかねない。さすがにそれは困る。
 まあ、バディア辺境伯邸にはエレナ嬢とソフィアという二大ストッパーがいるので大丈夫だろう。お互いに牽制し合って無害化されるはずだ。

 バディア辺境伯邸に到着するとすぐにサロンへと案内された。どうやらカビルンバがみんなに知らせておいてくれたようだ。さすがはカビルンバ。気が利く。もちろんそこにはソフィアの姿もあった。

「こちらは私の知り合いのエルフ、ミューです。四天王の痕跡を探すのを手伝ってもらおうと思って協力を要請したのですが、そこでちょっと捨て置けない事実が判明しまして……」

 挨拶もそこそこに、集まった全員に世界樹が枯れ始めていることと、その原因が世界からの魔力の枯渇であることを話した。そしてその原因を探るべく、亡国の跡地に行ったことも話した。

「空間に穴が開いておるじゃと? そんな話、始めて聞いたな」
「だろうな。私も始めて見た。もちろんミューも。ミューは周囲の無残な光景を見て体調を崩したくらいだ」

 バディア辺境伯を始め、みんなが絶句している。そして気づかわしげな表情でミューを見ていた。ミューはみんなを心配させないようにするためか、笑顔を浮かべている。しかしそれが余計に痛々しかった。

「それで、レオ様はどうなさるおつもりなのですか?」
「もちろん何とかするつもりです。私の力で何とかなれば良いのですが、事が事です。可能であれば、多くの人の力を借りたいと思っています」
「もちろんだとも。この世界の危機だ。いくらでも力を貸そう。それで、何か対抗策に思い当たることはあるのかな?」

 ミューと顔を見合わせた。取りあえず今できそうなことは魔力の性質を変える方法を探ること。そして聖剣に代わる、神がかり的な何かを見つけることである。

「魔力の性質を変える方法か。聞いたことがないのう」
「聖剣のような神秘的なアイテムですか。もしかすると、王家に何かあるかも知れませんな」

 勇者と関わりが深かった王国は滅んでしまった。そして勇者ももういない。勇者は子孫を残していないので、勇者ゆかりの場所はもう存在しない。そうであるならば、勇者が残した品々もどこにあるかも分からない。
 これは非常に困難な旅路になるかも知れないな。

「主よ、一つ思い当たるものがあります」

 その場を暗く重苦しい空気が包もうとしたとき、じいやがそう言った。
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