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聖剣伝説
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数日後、ようやくミューの体調が回復した。さすがのミューも申し訳なさそうにしていたが、ミューが悪いわけではない。無理やり連れて行った私が悪いのだ。
「次の場所は私が一人で行く。だからミューは近くの町で待っていろ」
「嫌ッス。ついて行くッス」
ミューがこの手は離さないとばかりに腕にしがみついてきた。それはまるで「海の悪魔」と呼ばれる生き物ようだった。
早々に説得することをあきらめた私はミューを連れて行くことにする。
「レオ様は本当に女性には弱いですね」
「違うから。ここでこれ以上の時間を失いたくないだけだから」
「ハイハイ、そう言うことにしておきますよ」
本当なのに。どうしてカビルンバは信じてくれないんだ。そんな不満を持ちつつも先を急ぐ。今度は西の果ての海岸線まで向かわなくてはならない。なるべく町や村がない場所を案内してもらって進んだ。
高速飛行したおかげで、思ったよりも早くたどり着くことができた。魔力切れを起こしそうになったときは、準備しておいた魔力回復ポーションを飲んだ。主にミューが飲んだのだが。
「ダーリンの魔力量は本当に無尽蔵ッスね。うらやましいッス」
「そんなことないぞ。さすがに一度に大量消費すればなくなるぞ。単に他の魔族よりも魔力の回復速度が速いだけだ」
「それでもうらやましいッス」
前回の勇者との戦いでは魔力が尽きた。無尽蔵でないことはすでに証明されているのだ。私も不死身ではない。その辺にいる魔族とそれほど変わらないのだ。
目的地まではあと少し。今度はミューの体調をしっかりと管理すべく、慎重に様子を見ながら進んで行く。
「確かこの辺りの海ッスね」
「何もないな」
「何もないですね。魔力量の変化もなさそうです」
眼鏡をかけたカビルンバが首をひねっている。カビルンバの言う通り、この辺りの魔力量には何の変化も見られない。ミューをその場に残して海の上にも行ってみたが、やはり変化はなかった。
「どうッス?」
「何も変化はないな。どうやらこの辺りには亡国の跡地にあったような『穴』はなさそうだな」
「それは朗報ッス。ダーリンが前に言ってた朗報はどうッスか?」
「ああ、それも問題なさそうだ。恐らく、聖剣が本来あるべきところに戻されたのだと思う」
以前に考えたことをカビルンバとミューに話す。二人も「なるほど」と納得してくれたようである。すぐに聖剣がどのようなものだったのかを質問してきた。
「聖剣も別の世界から来たのかも知れないッスね」
「そうだな。そして聖剣は元の世界に返すことができた」
「それじゃ、勇者を元の世界に戻せば良かったってことッスね?」
「そうかも知れないが、召喚する術は持っていたが、戻すことはできなかったんじゃないかと思っている」
もし戻せるのならば、勇者がこの世界で死ぬことはなかっただろう。だれがどのようにして勇者召喚のやり方を思いついたのかは知らないが、一方通行だった可能性は大いにある。
「そう言えば、聖剣は創造主から与えられたって言ってたな」
「そうッス。勇者について調べたときも、聖剣はソル霊峰という場所で神の試練を越えて与えられたって書いてあったッス。たぶんその神というのは創造主のことだと思うッス」
「なるほど。それで役目が終わった聖剣は創造主の元に戻されたということか」
それなら勇者が元の世界に戻れなかったのもうなずける。勇者召喚を行ったのは人間だ。創造主が異世界から呼び出したわけではない。
どうやらそのせいで空間に穴が開いてしまったようだ。人間が使った召喚魔法が不完全だったのだろう。
「勇者召喚は一体どうやって思いついたッスかね?」
「確かベンジャミンが、大賢者が夢で神からのおつげを聞いたって言ってたな」
「神からのおつげ? その神というのは……」
「たぶん、創造主だな」
どうやら創造主は召喚する方法を教えたが、戻す方法は教えなかったようである。……もしかして穴が開くのは想定外だったのかな? それで聖剣は自らが与えることにした。そうすることで、聖剣を回収することも可能になった。
最初から創造主が勇者をこの世界に送り込んでおけば、こんな事態にはならなかったんじゃないかな。どうしてそれをやらなかったのだろうか。わざわざ人間におつげを与えるというようなまどろっこしいことをせずに、神の御業にすれば良かったのに。
考えても仕方がない。何とかしてあの穴を塞ぐ方法を考え出さなければならない。さいわいなことに、手がかりはある。聖剣の性質に似せて魔力を変質させて、それをあの穴にぶつければ良いのだ。
聖剣が元の世界に戻ることで穴が塞がったのなら、この方法で塞ぐことができるはず。この考えにはカビルンバもミューも賛成だったが、問題はどうやってそれを作り出すかだ。
錬金術師としての知恵はある。だが、魔力の性質を変える錬金術アイテムに思い当たるものはなかった。
「ダーリンが聖剣を作れば良いんじゃないッスか?」
「私は鍛冶屋じゃないからな。さすがに聖剣は作れないだろう」
「鍛冶屋でも作るのは無理でしょう。何せ、魔法の効果を持たせた剣ですら、作られていないのですから」
カビルンバの言う通りだな。鍛冶屋でも聖剣は作ることはできないだろう。もし作ることができるのなら、この世界は聖剣であふれていることだろう。
「次の場所は私が一人で行く。だからミューは近くの町で待っていろ」
「嫌ッス。ついて行くッス」
ミューがこの手は離さないとばかりに腕にしがみついてきた。それはまるで「海の悪魔」と呼ばれる生き物ようだった。
早々に説得することをあきらめた私はミューを連れて行くことにする。
「レオ様は本当に女性には弱いですね」
「違うから。ここでこれ以上の時間を失いたくないだけだから」
「ハイハイ、そう言うことにしておきますよ」
本当なのに。どうしてカビルンバは信じてくれないんだ。そんな不満を持ちつつも先を急ぐ。今度は西の果ての海岸線まで向かわなくてはならない。なるべく町や村がない場所を案内してもらって進んだ。
高速飛行したおかげで、思ったよりも早くたどり着くことができた。魔力切れを起こしそうになったときは、準備しておいた魔力回復ポーションを飲んだ。主にミューが飲んだのだが。
「ダーリンの魔力量は本当に無尽蔵ッスね。うらやましいッス」
「そんなことないぞ。さすがに一度に大量消費すればなくなるぞ。単に他の魔族よりも魔力の回復速度が速いだけだ」
「それでもうらやましいッス」
前回の勇者との戦いでは魔力が尽きた。無尽蔵でないことはすでに証明されているのだ。私も不死身ではない。その辺にいる魔族とそれほど変わらないのだ。
目的地まではあと少し。今度はミューの体調をしっかりと管理すべく、慎重に様子を見ながら進んで行く。
「確かこの辺りの海ッスね」
「何もないな」
「何もないですね。魔力量の変化もなさそうです」
眼鏡をかけたカビルンバが首をひねっている。カビルンバの言う通り、この辺りの魔力量には何の変化も見られない。ミューをその場に残して海の上にも行ってみたが、やはり変化はなかった。
「どうッス?」
「何も変化はないな。どうやらこの辺りには亡国の跡地にあったような『穴』はなさそうだな」
「それは朗報ッス。ダーリンが前に言ってた朗報はどうッスか?」
「ああ、それも問題なさそうだ。恐らく、聖剣が本来あるべきところに戻されたのだと思う」
以前に考えたことをカビルンバとミューに話す。二人も「なるほど」と納得してくれたようである。すぐに聖剣がどのようなものだったのかを質問してきた。
「聖剣も別の世界から来たのかも知れないッスね」
「そうだな。そして聖剣は元の世界に返すことができた」
「それじゃ、勇者を元の世界に戻せば良かったってことッスね?」
「そうかも知れないが、召喚する術は持っていたが、戻すことはできなかったんじゃないかと思っている」
もし戻せるのならば、勇者がこの世界で死ぬことはなかっただろう。だれがどのようにして勇者召喚のやり方を思いついたのかは知らないが、一方通行だった可能性は大いにある。
「そう言えば、聖剣は創造主から与えられたって言ってたな」
「そうッス。勇者について調べたときも、聖剣はソル霊峰という場所で神の試練を越えて与えられたって書いてあったッス。たぶんその神というのは創造主のことだと思うッス」
「なるほど。それで役目が終わった聖剣は創造主の元に戻されたということか」
それなら勇者が元の世界に戻れなかったのもうなずける。勇者召喚を行ったのは人間だ。創造主が異世界から呼び出したわけではない。
どうやらそのせいで空間に穴が開いてしまったようだ。人間が使った召喚魔法が不完全だったのだろう。
「勇者召喚は一体どうやって思いついたッスかね?」
「確かベンジャミンが、大賢者が夢で神からのおつげを聞いたって言ってたな」
「神からのおつげ? その神というのは……」
「たぶん、創造主だな」
どうやら創造主は召喚する方法を教えたが、戻す方法は教えなかったようである。……もしかして穴が開くのは想定外だったのかな? それで聖剣は自らが与えることにした。そうすることで、聖剣を回収することも可能になった。
最初から創造主が勇者をこの世界に送り込んでおけば、こんな事態にはならなかったんじゃないかな。どうしてそれをやらなかったのだろうか。わざわざ人間におつげを与えるというようなまどろっこしいことをせずに、神の御業にすれば良かったのに。
考えても仕方がない。何とかしてあの穴を塞ぐ方法を考え出さなければならない。さいわいなことに、手がかりはある。聖剣の性質に似せて魔力を変質させて、それをあの穴にぶつければ良いのだ。
聖剣が元の世界に戻ることで穴が塞がったのなら、この方法で塞ぐことができるはず。この考えにはカビルンバもミューも賛成だったが、問題はどうやってそれを作り出すかだ。
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「私は鍛冶屋じゃないからな。さすがに聖剣は作れないだろう」
「鍛冶屋でも作るのは無理でしょう。何せ、魔法の効果を持たせた剣ですら、作られていないのですから」
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