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モニカ令嬢のどうしてこうなった①
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どうしてこうなった、どうしてこうなった!?
今私は混乱の極みにあった。
レオ様に頼まれて作った手作りシュークリーム。
レオ様はとても喜んでくれて、それはもう天にも昇るほど嬉しかったのだが、レオ様と初めてのキ、キスをしそうになったところで王妃様から声がかかった。
間近で見る王妃様は美しく、とても私と同じ年齢の子供がいるとは思えないほど若々しかった。
私よりも少しだけ年齢が上のお姉さん、と言っても差し支えないくらいだ。
私のお母様も若くて美しく見えるが、王妃様には敵わないだろう。
思わず見惚れている私に、さらなる追い討ちがきた。
「モニカさん、私もこのシュークリームと言うお菓子を頂いてもいいかしら?」
「も、もちろんです! どうぞお召し上がり下さい!」
えええ! 王妃様が私の作ったお菓子を食べるの!? とてもではないが、雲の上の存在である王妃様に食べていただけるような代物ではないのに。
あ、でもレオ様には食べさせたわね……。
私の葛藤をよそに、王妃様はひょい、ぱくり、とシュークリームを食べた。
その瞬間。
「うまぁぁい! 何これ、美味し過ぎるわ! どうなっているのかしら? 信じられない美味しさだわ! もう1つ頂いてもいいかしら?」
「え、ええ、どうぞ」
王妃様は信じられない言葉を口にした。
美味しい? 私の作ったお菓子を美味しいと言ってくれた? なんだか私のことを認めてもらえたようで、心の曇りがすっきりと晴れ渡っていくのを感じた。
それから色々あり、両親に「隠しておけ」と言われていた、シュークリームを私が作ったことがバレた。
だがここで一言いわせてもらえれば、バラしたのは私ではなく、レオンハルト殿下だ。
まるで自分のことのように自慢するレオ様を見て、なんだかもの凄く恥ずかしくなった。
これはひょっとして、好きな人から直接自慢されたから恥ずかしいのではないだろうか。
もしかして、そうなの?
「モニカさん、このシュークリームの作り方のレシピをぜひ教えてもらえないかしら? ああ、いえ、どうしても秘密なら、別に断ってもいいのよ?」
「も、もちろん喜んでお教え致しますわ」
おっと危ない。ちょっとボーッとしてたわ。
まだ、お茶会は終わってないのだ。そのことについて深く考えるのはまだ止めておこう。
王妃様はよほどシュークリームを気に入ってくれたのだろう。
私が作ったことはレオ様がバラしたし、レシピを公開するくらい、いまさら問題はないだろう。
「ありがとう、モニカさん。レシピは、私がモニカさんをお茶会に招待するときまでに準備してもらえればいいから、急がなくてもいいわよ。もちろん、事前に招待状を送るわ」
「はい」
はいぃぃい!? 今、王妃様、なんて言った? 私がモニカさんをお茶会に招待するまでに? 私を? 王妃様のお茶会に?
ナンデ! ううう、返事をしてしまった手前、断れない。レオ様とのお茶会でもまだ緊張するのに、王妃様のお茶会だなんて、とんでもない!
私は憂鬱な思いを抱えたまま帰路についた。そして、帰ってすぐにシュークリームのレシピの準備をした。
あまりの私の剣幕に、両親は何かあったかとオロオロしていたが、今はそれどころではない。こちらは王妃様から勅命を受けているのだ。何事よりも優先されるのだ。
後日、本当に王妃様からのお茶会の招待状がカタルーニャ公爵家に届いた。
母宛てだと思っていた両親と使用人は、私宛てだと知って度肝を抜かれていた。
王妃様からの呼び出しとは一体何をやらかしたのか、誰もが聞いてきた。
仕方がないのであらましを説明すると、両親は深いため息をつき、粗相だけはないように、と私を送り出した。
なんだかちょっぴり傷ついた。そんなに信用がないのか、私。
「本日はお呼びいただきまして、誠にありがとうございます」
「モニカさん、忙しいところを呼び出したりしてごめんなさいね。ほら、遠慮せずに座ってちょうだい」
ニコニコと優しい笑顔をこちらに向けて、王妃様が椅子を勧めてくれた。私は使用人達の手を借り、椅子に座った。
今いる場所は、これで三回目となる王妃様自ら手掛けた庭園だ。
そこに、王妃様と二人っきり。
王妃様と差しって、メンバーがおかしくない!? レオ様は、レオ様はどこ行ったのよ!
私がソワソワしているのに気がついたのだろう。王妃様が「ごめんなさいね、今日、レオンハルトはここには来ないのよ」とのほほんと笑った。ガッデム!
「王妃様、こちらが先日頼まれたシュークリームのレシピになりますわ」
私は目配せし、この日のために丁寧に、慎重に書き上げたレシピを王妃様の使用人に渡した。
「覚えていてくれたのね。ありがとう、モニカさん」
王妃様が大事そうにそれをしまうと、お茶でもどうぞ、とお菓子を薦めてくれた。
本日の自分の仕事は終わったと、ホッと一息をついた。王妃様が自らいれて下さったお茶がとても美味しい。
……王妃様が自らいれたお茶。
畏れ多くて、それ以上考えるのを止めた。
今私は混乱の極みにあった。
レオ様に頼まれて作った手作りシュークリーム。
レオ様はとても喜んでくれて、それはもう天にも昇るほど嬉しかったのだが、レオ様と初めてのキ、キスをしそうになったところで王妃様から声がかかった。
間近で見る王妃様は美しく、とても私と同じ年齢の子供がいるとは思えないほど若々しかった。
私よりも少しだけ年齢が上のお姉さん、と言っても差し支えないくらいだ。
私のお母様も若くて美しく見えるが、王妃様には敵わないだろう。
思わず見惚れている私に、さらなる追い討ちがきた。
「モニカさん、私もこのシュークリームと言うお菓子を頂いてもいいかしら?」
「も、もちろんです! どうぞお召し上がり下さい!」
えええ! 王妃様が私の作ったお菓子を食べるの!? とてもではないが、雲の上の存在である王妃様に食べていただけるような代物ではないのに。
あ、でもレオ様には食べさせたわね……。
私の葛藤をよそに、王妃様はひょい、ぱくり、とシュークリームを食べた。
その瞬間。
「うまぁぁい! 何これ、美味し過ぎるわ! どうなっているのかしら? 信じられない美味しさだわ! もう1つ頂いてもいいかしら?」
「え、ええ、どうぞ」
王妃様は信じられない言葉を口にした。
美味しい? 私の作ったお菓子を美味しいと言ってくれた? なんだか私のことを認めてもらえたようで、心の曇りがすっきりと晴れ渡っていくのを感じた。
それから色々あり、両親に「隠しておけ」と言われていた、シュークリームを私が作ったことがバレた。
だがここで一言いわせてもらえれば、バラしたのは私ではなく、レオンハルト殿下だ。
まるで自分のことのように自慢するレオ様を見て、なんだかもの凄く恥ずかしくなった。
これはひょっとして、好きな人から直接自慢されたから恥ずかしいのではないだろうか。
もしかして、そうなの?
「モニカさん、このシュークリームの作り方のレシピをぜひ教えてもらえないかしら? ああ、いえ、どうしても秘密なら、別に断ってもいいのよ?」
「も、もちろん喜んでお教え致しますわ」
おっと危ない。ちょっとボーッとしてたわ。
まだ、お茶会は終わってないのだ。そのことについて深く考えるのはまだ止めておこう。
王妃様はよほどシュークリームを気に入ってくれたのだろう。
私が作ったことはレオ様がバラしたし、レシピを公開するくらい、いまさら問題はないだろう。
「ありがとう、モニカさん。レシピは、私がモニカさんをお茶会に招待するときまでに準備してもらえればいいから、急がなくてもいいわよ。もちろん、事前に招待状を送るわ」
「はい」
はいぃぃい!? 今、王妃様、なんて言った? 私がモニカさんをお茶会に招待するまでに? 私を? 王妃様のお茶会に?
ナンデ! ううう、返事をしてしまった手前、断れない。レオ様とのお茶会でもまだ緊張するのに、王妃様のお茶会だなんて、とんでもない!
私は憂鬱な思いを抱えたまま帰路についた。そして、帰ってすぐにシュークリームのレシピの準備をした。
あまりの私の剣幕に、両親は何かあったかとオロオロしていたが、今はそれどころではない。こちらは王妃様から勅命を受けているのだ。何事よりも優先されるのだ。
後日、本当に王妃様からのお茶会の招待状がカタルーニャ公爵家に届いた。
母宛てだと思っていた両親と使用人は、私宛てだと知って度肝を抜かれていた。
王妃様からの呼び出しとは一体何をやらかしたのか、誰もが聞いてきた。
仕方がないのであらましを説明すると、両親は深いため息をつき、粗相だけはないように、と私を送り出した。
なんだかちょっぴり傷ついた。そんなに信用がないのか、私。
「本日はお呼びいただきまして、誠にありがとうございます」
「モニカさん、忙しいところを呼び出したりしてごめんなさいね。ほら、遠慮せずに座ってちょうだい」
ニコニコと優しい笑顔をこちらに向けて、王妃様が椅子を勧めてくれた。私は使用人達の手を借り、椅子に座った。
今いる場所は、これで三回目となる王妃様自ら手掛けた庭園だ。
そこに、王妃様と二人っきり。
王妃様と差しって、メンバーがおかしくない!? レオ様は、レオ様はどこ行ったのよ!
私がソワソワしているのに気がついたのだろう。王妃様が「ごめんなさいね、今日、レオンハルトはここには来ないのよ」とのほほんと笑った。ガッデム!
「王妃様、こちらが先日頼まれたシュークリームのレシピになりますわ」
私は目配せし、この日のために丁寧に、慎重に書き上げたレシピを王妃様の使用人に渡した。
「覚えていてくれたのね。ありがとう、モニカさん」
王妃様が大事そうにそれをしまうと、お茶でもどうぞ、とお菓子を薦めてくれた。
本日の自分の仕事は終わったと、ホッと一息をついた。王妃様が自らいれて下さったお茶がとても美味しい。
……王妃様が自らいれたお茶。
畏れ多くて、それ以上考えるのを止めた。
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