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モニカ令嬢のシュークリーム②
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「レオンハルト、モニカさんに何をやっているのかしら?」
バッとモニカが俺から距離を取った。声のした方向を見ると、お母様が扇子を口元に当ててこちらを見ていた。
なんという絶妙なタイミング。まるで見ていたかのような……見ていたな、これは。
チラリと使用人を見ると、知っていたのだろう、明らかに目を逸らされた。ガッデム!
「お母様、いくらお母様でも私達の逢瀬を盗み見するのはどうかと思いますが?」
今すぐにでも小一時間問い詰めたい衝動を何とか抑えながら、笑顔でお母様を非難した。
口元に扇子を当てたお母様の表情は分からない。
「あらあら、いい匂いにつられて偶然やって来ただけよ。盗み見なんてしていないわ」
ね? と使用人達に言うと、使用人の全員が揃って首を縦に振った。
大変怪しいが、口を割る使用人はいないだろう。
くそう、もうちょっとだったのに。
「モニカさん、私もこのシュークリームと言うお菓子を頂いてもいいかしら?」
「も、もちろんです! どうぞお召し上がり下さい!」
もの凄く緊張しているのが分かる口調で言うと、背筋を伸ばしてその場に起立した。
その姿は令嬢というよりかは軍人そのものだった。
お母様の目が一瞬見開いたが、すぐに使用人がいつの間にか用意した椅子に座ると「モニカさんもお座りになって」と言い、モニカを座らせた。
王妃殿下と話すのは初めてなのだろう。張りついた笑顔をしている。
お母様もさすがにその事に気がついたようだ。
「モニカさん、そんなに緊張しなくてもいいのよ。それとも、お母様、嫌われちゃったかしら?」
「そうみたいですね」
俺はしれっと言った。
「ちょっとレオンハルト、チューしようとしているのを邪魔されたからと言って、それはないんじゃないの? 大体、こんなに使用人が周りにいるところでチューしようだなんて、デリカシーが欠けてるわ。やるなら自分の部屋にお持ち帰りしてからにしておきなさい!」
言われてみれば、確かにデリカシーがなかったな、と思いモニカの方を見ると、耳まで真っ赤にしてフリーズしていた。
もしかしなくてもモニカは免疫がないのかも知れない。これはこれで攻め方を考えないといけないな。
そんな風に考えている内に、お母様がシュークリームを口にしたようだ。
「うまぁぁい! 何これ、美味し過ぎるわ! どうなっているのかしら? 信じられない美味しさだわ! もう一つ頂いてもいいかしら?」
「え、ええ、どうぞ」
モニカが引きつった笑顔をしている。そしてお母様が残念なお母様になっている。
まあ、それほどまでにモニカが作ったシュークリームが美味しかった訳だ。実際に絶品だしね。
「ちょっとお母様! 私の分まで食べないで下さいよ! いくつかは大事に取っておくつもりなんですからね!」
「まあ、そんなケチなこと言わないでちょうだい。また買えばいいのだし。……ところで、このシュークリーム、どこで買ったのかしら?」
さすがにお母様も気がついたようである。
このシュークリームが世に出回っていない事に。
「えっと、あの」
モニカは言って良いものか、悪いものか悩んでいる。
きっと公爵家でシュークリームを作っている時に、自分が作ったと言わないようにと口止めされているのだろう。
ならば、ここは俺の出番だな。
「フッフッフ、知りたいですか、お母様? このシュークリームは、モニカ嬢が私のために、特別に、作ってくれたのですよ!」
「な、なんですってー!!」
こうしてモニカは、王妃殿下たっての希望により、その秘伝のレシピを公開する事になった。
そして王妃殿下はすぐにお菓子職人にシュークリームを作らせて、お茶会の度にモニカ令嬢が考案した新しいスイーツだと言って、我が事のように自慢していた。
後にこのシュークリームのレシピは一般公開され「モニカ令嬢のシュークリーム」として、末長く愛される事になった。
当の本人は、どうしてこうなった、と頭を抱えていた。
バッとモニカが俺から距離を取った。声のした方向を見ると、お母様が扇子を口元に当ててこちらを見ていた。
なんという絶妙なタイミング。まるで見ていたかのような……見ていたな、これは。
チラリと使用人を見ると、知っていたのだろう、明らかに目を逸らされた。ガッデム!
「お母様、いくらお母様でも私達の逢瀬を盗み見するのはどうかと思いますが?」
今すぐにでも小一時間問い詰めたい衝動を何とか抑えながら、笑顔でお母様を非難した。
口元に扇子を当てたお母様の表情は分からない。
「あらあら、いい匂いにつられて偶然やって来ただけよ。盗み見なんてしていないわ」
ね? と使用人達に言うと、使用人の全員が揃って首を縦に振った。
大変怪しいが、口を割る使用人はいないだろう。
くそう、もうちょっとだったのに。
「モニカさん、私もこのシュークリームと言うお菓子を頂いてもいいかしら?」
「も、もちろんです! どうぞお召し上がり下さい!」
もの凄く緊張しているのが分かる口調で言うと、背筋を伸ばしてその場に起立した。
その姿は令嬢というよりかは軍人そのものだった。
お母様の目が一瞬見開いたが、すぐに使用人がいつの間にか用意した椅子に座ると「モニカさんもお座りになって」と言い、モニカを座らせた。
王妃殿下と話すのは初めてなのだろう。張りついた笑顔をしている。
お母様もさすがにその事に気がついたようだ。
「モニカさん、そんなに緊張しなくてもいいのよ。それとも、お母様、嫌われちゃったかしら?」
「そうみたいですね」
俺はしれっと言った。
「ちょっとレオンハルト、チューしようとしているのを邪魔されたからと言って、それはないんじゃないの? 大体、こんなに使用人が周りにいるところでチューしようだなんて、デリカシーが欠けてるわ。やるなら自分の部屋にお持ち帰りしてからにしておきなさい!」
言われてみれば、確かにデリカシーがなかったな、と思いモニカの方を見ると、耳まで真っ赤にしてフリーズしていた。
もしかしなくてもモニカは免疫がないのかも知れない。これはこれで攻め方を考えないといけないな。
そんな風に考えている内に、お母様がシュークリームを口にしたようだ。
「うまぁぁい! 何これ、美味し過ぎるわ! どうなっているのかしら? 信じられない美味しさだわ! もう一つ頂いてもいいかしら?」
「え、ええ、どうぞ」
モニカが引きつった笑顔をしている。そしてお母様が残念なお母様になっている。
まあ、それほどまでにモニカが作ったシュークリームが美味しかった訳だ。実際に絶品だしね。
「ちょっとお母様! 私の分まで食べないで下さいよ! いくつかは大事に取っておくつもりなんですからね!」
「まあ、そんなケチなこと言わないでちょうだい。また買えばいいのだし。……ところで、このシュークリーム、どこで買ったのかしら?」
さすがにお母様も気がついたようである。
このシュークリームが世に出回っていない事に。
「えっと、あの」
モニカは言って良いものか、悪いものか悩んでいる。
きっと公爵家でシュークリームを作っている時に、自分が作ったと言わないようにと口止めされているのだろう。
ならば、ここは俺の出番だな。
「フッフッフ、知りたいですか、お母様? このシュークリームは、モニカ嬢が私のために、特別に、作ってくれたのですよ!」
「な、なんですってー!!」
こうしてモニカは、王妃殿下たっての希望により、その秘伝のレシピを公開する事になった。
そして王妃殿下はすぐにお菓子職人にシュークリームを作らせて、お茶会の度にモニカ令嬢が考案した新しいスイーツだと言って、我が事のように自慢していた。
後にこのシュークリームのレシピは一般公開され「モニカ令嬢のシュークリーム」として、末長く愛される事になった。
当の本人は、どうしてこうなった、と頭を抱えていた。
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