伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

文字の大きさ
15 / 137
第一章

素晴らしき魔道具の世界①

しおりを挟む
 包丁作りも順調にこなすようになったダナイ。鍛冶屋ゴードンの売り上げも上がり、ダナイにも給金が入るようになった。

 始めは無理を言って弟子入りしたのだから給金などいらないと突っぱねていたダナイだったが、それではこちらが困るとゴードンと押し問答をした挙げ句、イザベラの仲裁によって給金が支払われることになった。

 金額はゴードンが最初に示した額の半分であり、それならば、とダナイが折れた格好である。いい大人の意地の張り合いにさすがのイザベラも呆れているようだった。

 そんなこんなでもらった給金で、ダナイは宿に初めて泊まったときから気になっていたランタンを購入した。そのランタンは魔道具販売店で取り扱っており、店には他にも日本で言うところの電化製品のようなものがたくさん並んでいた。ダナイがそれらに興味を持ったことは言うまでもない。

 色々と目移りしたが、当初の予定通りランタンにした。値段もそれほど高くはなかったし、暗闇を照らす道具は今後もお世話になると思ったからだ。

 部屋に戻ったダナイはさっそくそれを分解してみた。分解用の道具は鍛冶仕事でも使っていたため、自分用の道具をすでに持っていた。逸る気持ちを抑えて慎重に分解していった。

「何だこりゃ?」

 可能な限り分解したところ、土台の上部に迷路のようなものが描かれた金属製の板が張り付いていることに気がついた。土台の部分に何か秘密があることを確信したダナイは、さらに慎重な手つきで土台部分を分解した。

 土台の中には魔石と細い針金が入っていた。針金はどうやら銅のようなものでできていた。これは電気を流すための銅線に違いないとダナイは理解した。

「魔石が電池の役割を果たしているみたいだな。ちょっと調べてみるか」

 ダナイは『ワールドマニュアル(門外不出)』を使って魔石について調べた。その結果、魔石は魔力が結晶化したものであることが分かった。ついでに板に描かれていた迷路について調べると、どうやらそれは魔方陣と呼ばれる魔法を発動させるための回路であることが分かった。

「なるほど、色んな魔方陣があるみたいだな。これで魔法が使えない人でも魔法に似たようなことができるようになっているのか」

 そう言えば師匠もライターみたいなので火をつけていたな。あれも魔道具だったのか。それじゃ、夜の道を照らしている街灯も魔道具か。そりゃ、魔石がいくらでも売れるわけだ。ダナイは一人納得していた。

 ランタンの魔道具に使われていた魔方陣は魔力が流れると光を発生させる魔方陣だった。摘まみの部分は魔力の流れを通したり、遮断したりすることでスイッチの役目を果たしていた。

 中身は意外と簡単な構造をしているな、とダナイは思った。元いた世界ではもっと優れた電化製品が数多くあった。これくらいなら自分でも作れるのではないだろうか?
 
「俺も何か作ってみたいな」

 見た感じでは今持っている自分の道具でも作れそうな感じであった。板金の技術を使えば、入れ物を作るのはそれほど難しくはないはずだ。

 ううむ、と悩んだ挙げ句、もう一度魔道具を売っている店を訪ねてみることにした。商品を見ることで何かヒントが得られるかも知れない。ほんの軽い気持ちでダナイは店へと向かった。

「改めて見ると、なかなか面白いものがあるな。これは風が出る魔道具か。これがあれば、ふいごで風を送る手間が省けそうだ。工房に備え付ければ作業が捗るぞ。こっちはライターだな。師匠が持っているのと似ているな。良く見ると、ちょっと大きすぎるような気が……」

 ダナイはその後もブツブツと独り言をいいながらくまなく見て回った。その結果、あまり複雑な構造をしたものがないことと、どれもサイズが少しばかり大きいことが分かった。

「小さくなればもっと便利なのにな。なんで小型化を検討しないのかな?」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...