伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

文字の大きさ
54 / 137
第三章

天才錬金術師ダナイ

しおりを挟む
 王都観光は予想通り、一日では終わらなかった。王都には闘技場や劇場、図書館など、様々な設備がそろっており、武器や防具、魔道具、錬金薬の工房、それらを流通させている商会などがひしめき合っていた。

「さすが王都だな。見たことがないものばかりだったぜ」
「そうだね。どれもイーゴリの街では見られないものばかりだよ。そう考えるとイーゴリの街もまだまだ発展の余地があるんだなって思ったよ」

 予想以上の王都の発展っぷりにアベルが感慨深そうに言った。上には上があることを知ることは成長に繋がる。良い体験ができたようである。
 
 その日の王都観光は無事に終わり、四人はライザーク辺境伯のタウンハウスに帰ってきていた。昼食は城下町で済ませたが、夜はライザーク辺境伯達と共に晩餐をすることになっている。

「王都はどうだったかね?」
「思った以上に色々な設備があって驚きました。それに、たくさんの種族が集まってきているみたいですね」

 ハッハッハとライザーク辺境伯は笑った。そうだろう、そうだろう、と。

「私も初めてトカゲ族を見てな、まさかこんな場所にまで訪れるとは思ってもみなかったよ。それに、滅多に姿を見せないドワーフ族を何人も見かけたよ。おそらく、国王陛下にお礼を言いに訪れているのだろう。どれも身分が高そうな装いをしていたからな」

 ダナイは昼間見たドワーフ族を思い出した。アレで装いを整えている……だと……? 普段はどれだけなんだと頭を抱えそうになった。ダナイはドワーフとしては異端児であることは間違いなかった。

 豪華な晩餐が終わると、一度に何人も入ることができそうな大きくて豪華な風呂へと向かった。マリアがしきりに「四人で一緒に入ろうよ」と誘ってきたが、リリアがピシャリと断った。

「マリアはアベルと入りなさい。私はダナイとゆっくりお風呂に入るから」

 お義姉さんに断られて口を尖らせていたが、アベルに連れられて部屋へと戻って行った。マリアがあんなことを言うのも無理はない。

「広すぎるよな、ここの風呂」
「確かに広すぎて落ち着かないわね。でも、それとこれとは別よ」

 二人は大きな湯船にポツンと隣り合わせで入っていた。そのうち、ダナイがリリアを前で抱える形に落ち着いた。身長差の都合上、お姫様だっこの状態になっている。ダナイの目の前には二つの双丘がプカリと気持ちよさそうに浮かんでいた。
 それを凝視しないように気をつけながら。

「いよいよ国王陛下と面会だな。リリアは大丈夫か?」
「そうね、早かれ遅かれこうなるような気がしていたから、今から慣れておくしかないわね」
「何か、すまねぇ……」
「良いのよ。聖剣を作るためにはきっと多くの人から力を借りることになるわ。国王陛下の力を借りられるのなら、これほど力強いことはないわよ」
「ああ、間違いないな。何としてでも、良い関係を築かないとな」

 二人は押し黙ったまましばらく考え込んでいたが、ついには我慢ができなくなり、よその風呂にもかかわらずイチャイチャし始めた。


 数日後、あくまでも個人的な面会であるとして、国王陛下に会う日がやって来た。
 この日は朝から準備に大忙しだった。ライザーク辺境伯の使用人の力を借りて、髪や服装を整えた。美しく整えられたリリアとマリアは見事の一言。カメラがあれば撮影したのに! と深く深く思ったダナイは何とかこの世界でもカメラが作れないかとあれこれ考えていた。全ては自分の欲望のためである。

 もちろんダナイとアベルもすっかりと整えられていた。ダナイのモフモフはどうやらリリアだけに評判が良いだけではなかったようである。使用人が代わる代わるキャーキャー言いながら整えてはモフっていた。
 
 それをリリアが「あのモフモフは私のものだ」と言う目で睨みつけていたのは言うまでもない。その後のリリアのモフモフにより、せっかく整えられたダナイのモフモフはいつものモフモフへと戻っていた。

 準備が整った一行はライザーク辺境伯を先頭に王城へと向かった。
 間近で見る王城は岸壁にそそり立つ氷山のように大きく、今にもこちらに倒れかかって来るかのような迫力と圧迫感があった。遠くで見ると唯々美しかっただけの城は、そこに存在しているだけで有無を言わせぬ圧倒的な権力を象徴しているかのようであった。

「何だか息苦しいわね」

 リリアの意見はもっともだ。初めて入場した王城の空気にみんな尻込みしていた。このまま国王陛下に会うなんでとんでもなかった。ライザーク辺境伯はそんな萎縮している四人に気がついたようだった。

「ハハハ、最初はみんな同じ気分になるものさ。恥じることは何もない。今でこそ私はそこまでのプレッシャーを感じなくなったが、クラースもまだまだのようだからな」

 そう言ってチラリとクラースを見た。次期ライザーク辺境伯であるクラースも顔色は優れなかった。
 一行はクネクネと曲がる長い廊下を通り抜け、応接室へと案内された。その頃にはここがどの辺りで、どのようにしてここまで来たのかは全く分からなくなっていた。
 
 使用人が出してくれたお茶とお茶菓子を食べながら、緊張した面持ちで待つこと小一時間ほど。ようやく面会の時間になったようである。一人の男が入ってきた。

「おお、アレクシスじゃないか」
「久しいな、ダスティン」

 どうやらライザーク辺境伯とは旧知の仲のようである。お互いに名前で呼び合い、懐かしそうに話していた。

「おっと、これは失礼。私はこの国の宰相、アレクシス・ツェベライだ。よく来てくれた。国王陛下がうるさくてな」

 そのぞんざいな口ぶりに、国王陛下の右腕なのだろうと理解した。それぞれ軽く挨拶を済ませると、国王陛下が待つ部屋へと向かった。

 これまでとは趣が違う扉の前へとやってきた。さっきまでは「お客様用」とばかりに見栄を張ったような豪華な扉や、装飾のある場所だった。しかし今は、一変して厳かでどこか神聖な場所のような雰囲気だった。

 ライザーク辺境伯の顔が引き締まっている。どうやらここは城の中でも最奥、王族だけが出入りすることができるプライベートスペースのようである。
 宰相のアレクシスがその扉をノックすると、音も立てずに扉が開いた。

「よくぞ来てくれた。この国を救ってくれた英雄殿。私がアルベルト・オリヴェタンだ。隣は私の孫のレオンだ」

 部屋の中に入るとすぐに、国王陛下が両手を挙げて歓迎してくれた。ガチガチに緊張している四人をライザーク辺境伯が実に丁寧に紹介してくれた。それにしても、いきなり英雄殿とは。なかなか刺激的な挨拶である。恐縮するもの無理はないだろう。

「あの、英雄殿はちょっと……」

 恐縮するダナイに、国王陛下がさらなる追い打ちをかけた。顎に生えた立派なお髭を撫でながらフムフムと頷いた。

「そうか、そうか。この国を救った英雄と言っても差し支えないと思っていたが……そうだな。やはり手始めは「天才錬金術師ダナイ」の方が良いかも知れないな」

 ウンウンと両サイドにいる孫と宰相も頷く。ダナイはそれを聞いてアベルとマリアを見た。相変わらず二人は明後日の方向を向いていた。さすがに口笛は吹いていなかったが。
 リリアを見ると「諦めなさい」と小さく首を振った。どうやらその件については諦めるしかないようである。後でアベルとマリアにはしっかりと言い聞かせておかなければならないな、とダナイは決意した。

「わざわざ遠くより呼び出してしまって済まない。どうしても、そなた本人にお礼が言いたくてな。ありがとう。天才錬金術師ダナイの作った魔法薬によって、我が孫の命が救われたよ。それだけではない。この国の多くの人が救われた。皆に変わって礼を言わせてもらうよ」
「とんでもありません。当然のことをしたまでです。お礼を言われるまでもありません。ここまで速やかに薬が量産され、必要な人達に提供することができたのは、国王陛下やライザーク辺境伯様、それに尽力してくれた各ギルドのお陰です。私のしたことは些細なことに過ぎません」

 恐縮しきったダナイは少し早口になってしまったが、この成果が自分だけの力でないことを真摯に国王陛下に訴えたのであった。それを聞いた国王陛下、隣に座る宰相も穏やかな顔で聞いていた。

「ライザーク辺境伯からこの魔法薬の情報を無料でもらったときは大変驚いたものだ。なにせ、世界の盛衰を握ることのできる代物だったのだからな」

 アレクシスはそう言いながらライザーク辺境伯を見た。どうやら最初にアレクシスに魔法薬の相談をしたようである。
 
「私も最初に錬金術ギルドから情報が送られたときは驚きましたよ。魔法薬の秘伝が交渉する暇も無く、ポン、と渡されたのですからね。ですが、制作者本人の意向だ、と聞いて私もその高貴な意志に従うことにしたのですよ」

 そうしてダナイから始まった意志は次々に受け継がれ、結果としてこの国を救うことになったのだった。

「皆はこの国にこれまであまり見なかった種族が集まっていることに気がついておるかな? どの種族もあの魔法薬のお礼に来ておるのだよ。私の手柄ではないのだがね」

 国王陛下は苦笑していた。しかし、その采配をしたのは国王陛下であることは事実。お礼を言われるだけのことをしているだろう。

「どの国からもありがとうの言葉しか聞かなかったよ。お陰で、停戦状態だった隣国とも再び和平を結ぶことになった。この国にとって良かったことはそれだけではないぞ。国交のなかった国とも知り合うことができ、良い関係を結べそうなのだよ。これでしばらくは平和な日々が訪れることだろう」

 再び礼を言われ、ダナイは恐縮しきってしまった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...