伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

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第三章

ゴブリンキング

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 これまでの襲撃の周期から言って、そろそろゴブリン達がこの砦に襲撃してくる頃合いだろう。もしズレたとしても、明日、明後日には来るのは間違いない。

 ゴブリン襲来のときにゴブリンキングの動きに何か変化はないか? そう思ってレーダーで監視していると、奴らに動きがあった。急いでアベルに砦のランナル隊長を呼んできてもらった。

「見て下さい。ゴブリンキングやゴブリンジェネラルと思われる点がこちらに向かって動き出しました」
「これは一体……そうか! アイツらは森の外縁まで出張ってきて、ゴブリン達に指示を出していたのか」

 なるほど。知能が無いと言われているゴブリン達は、ギリギリまで指示を出さないと、いかにゴブリンキングと言えども指示に従わないのだ。いや、指示を忘れているだけかも知れない。

「これはチャンスだぞ。ゴブリンの襲来を退けてすぐに討って出れば、森の外縁でゴブリンキングを討伐できるかも知れん!」

 ランナルはすぐに砦防衛の指示を出した。相手が来るのが分かっているので迎え討つ準備はすぐに整った。そして……。
 西の砦に来てから何回目になるかは分からないが、ゴブリン達の襲撃があった。二度、三度と無謀な突撃を繰り返すゴブリン達を退けると、ようやくその波は収まった。

「ダナイ! すぐにゴブリンキングの居場所の確認だ!」

 ランナルが声を上げた。

「さっきまでと同じ方角の森の外縁部にまだ反応があります!」

 アンテナと金属探知機を駆使してゴブリンキング達の位置を確認する。襲撃が失敗したのを確認したのだろう。森の奥へと光点が移動している。
 それを確認したランナルはすぐに指示を出した。

「お前達、作戦通りにすぐに出撃だ! 油断するなよ!」

 おお! ランナルの檄に兵士と冒険者達が応える。すぐに砦の西門が開き、兵士と冒険者を乗せた馬車が出発した。急いで乗り込んだが、先頭ではなく、数台後ろの馬車になってしまった。

「そんな顔するな、アベル。ちゃんと出番はあるさ」
「分かってるさ。分かってるけど……」

 本当は先頭の馬車に乗りたかったのだろう。しかし、それは危険でもある。勇気と無謀は別だ。アベルには勇敢な男にはなってもらいたいが、無謀な男にはなってもらいたくない。そのため、アベルには待ってもらっていたのだ。

 森の外縁部で馬車から降りると、他の冒険者と共に森の中へと入って行った。森の奥からはすでに怒号が上がっている。

「そっちに行ったぞ、逃がすな!」

「向こうだ、向こうにいるぞ!」

 声のする方向へ右往左往しながらも前へと進んだ。そのとき、前方に巨漢のゴブリンが見えた。あれがおそらくゴブリンキングなのだろう。ゴブリンより一回り大きい、ではない。まるで大岩のように大きかった。大きさだけなら先のドラゴンに近いものがあった。

 その近くにはゴブリンキングより一回り小さいが、しっかりとした体格をしたゴブリンが数体、守るように金属製の武器を振り回している。どうやらどこかから奪った武器のようで、人の手で作られていることが遠目でも分かった。

「ジェネラルだ! まずは周りのゴブリンジェネラルを倒せ!」

 どこかで叫び声が上がる。何人かがゴブリンジェネラルに向かうとすぐに戦闘が始まった。ゴブリンはまさに雑魚そのものだったが、ジェネラルは違った。手に持った武器と人よりも一回りも大きい体で、これまでにない抵抗を見せた。

「気を抜くとやられるぞ!」

 誰かが叫んだ。周囲に残っているゴブリンを倒しながらも戦闘は続いて行く。

「向こうが苦戦しているみたいだ。助けに行くぞ」

 三人にそう言うと、素早くゴブリンジェネラルに近づくとがら空きになっている側面にハンマーを叩きこんだ。さすがのゴブリンジェネラルもドワーフの力には抵抗できなかったようだ。激しいダメージを受けて、後ろに飛び退いた。そこにアベルの剣が走り、頭と胴体を切り離した。

「助かった。さすがは「必殺のアベル」だ。あの大きさのゴブリンを一撃で仕留めるとはな」

 アベルの名前はそこそこ知れ渡っているようである。少し照れがあるものの、アベルも満更でもなさそうである。そのとき、声が上がった。

「ぐおおお!」
「しっかりしろ! 下がれ、奴の棍棒に当たるとミンチになるぞ」

 どうやら負傷者が出たようだ。声がする方向ではゴブリンキングに張り付いた兵士や冒険者が攻撃を加えていた。しかしゴブリンキングはその攻撃をものともせず、巨大な棍棒を片手で軽々とブンブン振り回していた。

 慌てて負傷兵に近寄ると、金属製のプレートアーマーがへしゃげていた。

「しっかりしろ!」

 ウウウと唸る兵士に声を掛けながら鎧を引き剥がすと、酷い有様だった。すぐにリリアがダナイ特製回復ポーションをふりかけた。
 瞬く間に傷が無くなった。その様子を見て、近くにいた兵士達が瞠目した。

「な、何て回復力だ……」
「そんなにポーションの数はないぞ。長期戦は不利だ」
「それじゃ、早急に片付けないとね。俺も行ってくるよ」

 アベルはゴブリンキングへと向かって行った。ゴブリンキングを守るように周りにいたゴブリンジェネラルは上手い具合に分断されていた。今ならゴブリンキングに集中できる状況になっている。

 アベルが攻撃する好きを作るべく、攻撃を加える。

「コイツをくらいな!」

 全力でゴブリンキングを殴ったが、皮膚が硬いのか、ゴブリンジェネラルほどの手応えはなかった。しかし、確実にダメージはあったようで、こちらに注意が向いた。襲いかかってきた棍棒を何とかかわす。頭上をブオンという不吉な音がかすめた。
 こりゃ直撃するとお陀仏だな。さすがに即死してしまえば回復ポーションを使っても意味が無いだろう。再び襲いかかってきた棍棒をリリアの魔法が弾いた。そこにマリアが放った魔弾が突き刺さる。

 ゴブリンキングについた傷は浅かった。巨体になればなるほど、点の攻撃である魔法銃による攻撃の効果はどうしても薄くなってしまう。マリアは魔弾を氷の弾丸に切り替え、再び発射した。当たった箇所がピンポイントで凍りついた。凍りついた箇所の動きが目に見えて鈍くなった。

「いいぞマリア。その調子でアイツの動きを鈍らせるんだ!」
「任せてちょうだい!」

 その後はリリアとマリアの氷魔法による攻撃で着実にゴブリンキングの動きを鈍らせていく。イライラしたゴブリンキングが二人に向かうのを打撃を与えて挑発し、こちらに注意を向ける。

 ゴブリンよりかは賢くなっているとは言え、感情を抑えることはできないようだ。目の前をウロチョロする虫が気になって仕方がないようだ。釣られてこちらへと攻撃を仕掛けてくる。
 周囲に展開している兵士や冒険者達も攻撃を加えているが、ほとんど効果はないようである。それどころか、斬りかかった武器が破損して後退を余儀なくされている。

 鉄製の武器や普通の魔鉱の武器では歯が立たない。これはもうアベルの魔法剣に頼るしかなかった。アベルもそれは分かっているようであり、無闇に斬りかからずに慎重に必殺の一撃を狙っていた。

 あの巨大な棍棒が邪魔だ。あれさえ何とかできればアベルが攻撃する隙が生じるのに。

「リリア、アイツの棍棒の動きを何とか抑えられないか?」
「そうね、風魔法で抑え込んでみるわ」
「頼んだぜ!」

 なるほど、風魔法で押し返せば、あのプラスチック製のバットを振るかのような攻撃も一時的に止まるかも知れない。ここは俺とリリアの魔法の合わせ技だ。
 ハンマーを構えてゴブリンキングの近くに行くと「またお前か」と言うかのような目でこちらを見ると、棍棒を叩きつけてきた。
 ゴブリンキングは自分の体の動きが鈍っていることに気がついていないのだろう。最初の頃とは比べものにならないほど緩慢になった動作で棍棒を振り下ろしてきた。

「ウインド・クッション!」
「ダナイ忍法、風遁、エアバッグの術!」

 リリアとの合わせ技により、空中でゴブリンキングの棍棒がピタリと止まる。その棍棒の根元に全力でハンマーを叩きつけた。

「砕け散れ!」

 ベキッ! っと甲高い音を立てて巨大な棍棒が根元からへし折れた。それを見て、茫然となるゴブリンキング。その隙を見逃さず、アベルが斬りかかった。
 それに気がついたゴブリンキングはさっきまでと同じ感覚で棍棒を振った。しかし、その棍棒はすでに折れている。折れた棍棒が空を切ったところに、アベルの剣がまるで何も無い空間を切るかのように、静かにゴブリンキングの首を刎ねた。

 ゴブリンキングは光の粒となって消えた。その後には大きな魔石が残された。
 ワアア! と周囲から大きな歓声が上がる。
 
 その後すぐに、親玉が倒され逃げ腰になったゴブリン達は一匹残らず討伐された。負傷が少なかった者達はそのまま前進し、ゴブリンキングが根城としていた場所を更地に変えた。そこには予想通りにゴブリンクィーンがおり、無事に討伐されたそうである。

 この話は砦に戻ったときに守備隊長から聞いた。こうして長きにわたって続いていた西の砦の防衛戦は終結したのだった。
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