伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

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第四章

ミスリルゴーレム①

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「良い考えって、何かしら?」

 すでに疑いモードのリリアは、俺がやらかす前に先手を打ちたいようである。見た目は静かなまなざしで聞いているが、その声には有無を言わせぬ迫力があった。

「お、おう。もちろんだ。これはリリアにも協力してもらわないといけないからな」
「協力? 私でできるなら何でもするけど……」

 リリアがそう言うと、それを聞いていたマリアがニヤニヤと笑った。その笑いはマリアがイタズラを仕掛けるときの表情とまったく同じであった。

「何でもってことは、ダナイからエッチなお願いがあっても聞くんだよね?」

 ニヤニヤ。それを聞いたエルフの作業員たちはギョッとした顔をした。それもそうか。俺とリリアが夫婦だなんて、知らないだろうからな。これを知ったら、他の人と同様に目を飛び出さんばかりに驚くことだろう。

「マリア、あなたね……。言っておくけど、アベルと違って、ダナイはそんな嫌らしいお願いはしないわよ。ねえ、ダナイ?」
「もちろんだ」

 ちょっと惜しい気がしているのは、きっと気のせいだ。惜しくない、惜しくない、全然惜しくない。

「ちょっと! 俺を出汁にするのはやめてよね!」

 さすがのアベルも非難の声を上げた。よっぽど嫌だったらしい。そんなアベルとマリアをよそに、今回の作戦について話した。

「俺がありったけの魔力をミスリルゴーレムにそそぎ込むから、それが終わったのを確認したら、ミスリルゴーレムを高温の状態にしてくれ。そうすれば、ミスリルを加工するときと同じ状態になっているはずだ。そうなれば、おそらくミスリルも柔らかくなっているはずだ」
「なるほど。その状態で切れば、魔鉱の剣でも切れる状態になっているってことだね」

 作戦を理解したアベルが確認してきた。この作戦なら、何とかミスリルゴーレムを切ることができるだろう。もし切れなくても、アベルの魔法剣がミスリルゴーレムを切り裂いてくれるはずだ。
 魔鉱の剣は使い物にならなくなるだろうが。

「それで、ミスリルゴーレムって、他のゴーレムと同じ構造をしているの?」

 マリアが確認のために聞いてきた。一日につき、チャンスが一回であることを理解しているようである。うん、マリアもBランク冒険者らしくなってきたな。ちゃんと考えているな。

 一人うなずいていると、それに気がついたマリアが膝蹴りをいれてきた。どうやら、勘も鋭くなっているようである。

「ああ。普通のゴーレムと同じだよ。中心に位置する核を壊せば大丈夫だ。その点に関しては、俺たちが攻撃したときに確認しているよ。もっとも、硬すぎて壊せなかったけどね」

 それを聞いたリリアはあごに手を当てて考え込んだ。何か疑念があるのかと、みんなが注目した。

「核と、体は一体化しているのかしら? それとも、独立している? もし一体化してなければ、ダナイの魔力が核まで届いていない可能性もあるわ」
「それもそうだな。核が独立しているなら、その部分だけは、アベルが気合いで切るしかなくなるな」

 ミスリルゴーレムを間近で見たであろう作業員に目を向けた。彼らは思い出すように、それぞれ、頭をたたいたり、腕を組んだりしている。

「核と体は独立している可能性が高いな。そのつもりで核に攻撃を加えた方がいいだろう。核はそれほど大きくない。ミスリルを切れるのなら、十分に切ることができると思う」

 その言葉に、俺たちはうなずいた。核の部分だけは、アベルと魔鉱の剣だよりだな。アベルの腕なら間違いなく切れる。魔鉱の剣にどのくらいの負担がかかるかは分からないが。

 魔鉱の剣に負担がかかる状況になったが、アベルは気にしていない様子である。青の森の問題をできれば解決してあげたいと思っているのだろう。アベルは優しいからな。

「よし、それじゃ決まりだな。うまく行くかは分からないが、取りあえずやってみよう。ダメだったら、またそのときに考えよう」
「我々も手伝いますよ」

 話を聞いていた作業員たちが立ち上がった。ありがたい話ではある。

「だめだ。俺たちはBランク冒険者。いわば、戦闘のプロだ。何があっても対処できるが、あんたたちはそうじゃないだろ?」

 俺の言葉に黙り込んだ。確かにそうだ、と思っているのだろう。それ以上、口を挟む人はいなかった。


 作業員の許可をもらい、薄暗い鉱山の中へと入って行った。
 入り口の照明装置を起動させると、トンネルの天井についている魔道具のランプに明かりがついていった。
 思ったよりもハイテクな鉱山のようだ。通路には人が通るところと、トロッコのレールが敷設されていた。目的地の近くまでは、このトロッコで行くことができるらしい。

 案内してくれる作業員に従って、トロッコへと乗り込んだ。トロッコに乗るのはみんな初めてだったようであり、どのような動きをするのか分からず、緊張している様子だった。
 俺は電車に乗ったことがあるので、どういう構造になっているのかは大体分かる。さすがにどのくらいの速度が出るのかまでは分からなかったが。

「それじゃ、トロッコを動かします。それなりの速度が出ますので、台車から手や頭を出さないようにして下さいね」

 神妙に三人がうなずく。リリアは早くも俺にしがみついてきた。馬が疾走する速度と同じくらいしかスピードは出ないと思うのだが、初めて経験することなのでしかたがないか。
 それはそうと、一つ、気になることがあった。

「なぁ、鉱山の中にはミスリルゴーレム意外の魔物はいないのか?」

 大体こういうダンジョン的な場所には魔物が住み着いているのではないだろうか? それとも単に、俺のゲーム脳がそう考えさせるだけなのか。

「そうですね、コウモリくらいはどこかに住み着いているかも知れませんが、それ以外の魔物は生息していませんよ。まぁ、廃坑になった場所なら魔物が住み着いているところもあるみたいですけどね」

 なるほど、しっかりと管理されている鉱山なら大丈夫ということか。安心した。ミスリルゴーレムとやり合っているときに、別の魔物が乱入してきたりしたら厄介だからな。

「それじゃ、動かしますよ。少し揺れるので、気をつけて」

 ……少し揺れる、ではなかった。ガンガン揺れた。揺れの少ない馬車に乗っていたこともあり、この久しぶりに体感する揺れは、思った以上にキツかった。それに、トロッコの速度もなかなか速い。馬に乗るのとは勝手が違うため、リリアが涙目でしがみついていた。
 行きが下り坂だったのも良くなかったのかも知れない。トロッコの終点についたときには、みんなグッタリとしていた。

「私はここで帰りを待っていますので、無理そうならすぐに戻って来て下さいね。ミスリルゴーレムは大広間にいますが、そこから伸びている細い通路にはさすがに入ってこれません。ですので、そこまで逃げ切れれば大丈夫です」
「ありがとう。善処するよ」

 こうして俺たちは作業員と一緒に一息つくと、大広間へと向かって行った。
 大広間へと続く通路にはたくさんの枝葉が伸びていた。しかし、エルフ族の性格なのか、枝となるトンネルの入り口には必ず看板が掲げてあり、どこに通じているのかが明確に書かれていた。
 すでに掘り尽くされた通路には、しっかりと立ち入り禁止のくいが立っている。

「この通路の先がコウモリの巣になっているのかも知れないね」

 この先、閉鎖、と書かれた看板がある通路をアベルが刺した。その通路には魔道具のランプは設置されていない。ただの暗い横穴が続いているだけである。

「そうかも知れねえな。随分と奥まで続いているようだな。先が見えねぇ」
「ほんとだ。……お化けとか、出ないわよね?」

 お化けが苦手なマリアが声を潜めて聞いてきた。一瞬、脅かそうかと思ったが、これから大事な戦闘があるのでやめておいた。

「いない、いない。さっきコウモリしかいないって言っていただろう?」

 俺の言葉にホッと胸をなで下ろすマリア。良かった。余計なことを言わなくて。
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