伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

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第四章

リンクコンテナ

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 無事に新しい青の森の素材で作ることができるポーション類の改良が終わった。どれも極めて良好なできである。重畳、重畳。

 ポーションの作成を終えると、すでに時間は夕飯時になっていた。急いでダイニングルームに向かうと、リリアと一緒に夕飯の準備を始めた。
 ダラダラと今日一日を過ごしていたらしいアベルとマリアの二人組もお風呂の準備を始めてくれた。

 その後、みんなで夕飯を囲んだあとでゆっくりと風呂につかった。やっぱり自分の家の風呂は最高だな。風呂で何をしてもいいのがとても良い。

 風呂から上がったあとはお待ちかね、新しい魔道具の開発だ。すでに時刻は夜になっているが、そんなの関係ねぇ。作りたい時が作り時。やるなら今しかねぇ。

 まずは試作品だ。トランシーバータイプにして、二つ一組で試してみることにしよう。これなら、俺とリリアに一つ、アベルとマリアに一つずつ持たせておけば、取りあえずは大丈夫なはずである。

 使う魔方陣は転移の魔方陣を使う。この魔方陣は、人や物を遠くまで運ぶことができる代物のようである。
 某キャラクターのどこでも行くことができる不思議なドアがあったら便利だろうな、と思って『ワールドマニュアル(門外不出)』で調べていたら、この転移の魔方陣にたどり着いた。

 だがこの魔方陣はとても厄介な代物であった。何を転移するかを一つ一つ魔方陣に追加して描き込まなければならないのだ。
 例えば、商隊を転移させようとすると、人間、馬車、荷物、水、食べ物などなどを追加していかなければならないのだ。もちろん記入漏れがあれば、もれなくそれだけ転移しないことになる。
 
 これは危険だ。人間を転移させるにしても、髪、爪、内臓など部位ことで決まった文字列があるようであり、万が一描き間違えたら、とんでもないことになる。想像したくはないな。

 だが、そこで閃いた。それならば、声だけ転送するようにすればいいのではないか。声だけ転送する魔方陣なら、それほど大きなサイズにはならないし、必要とする魔力もほんの少しで済むはずだ。これならば、十分実現可能である。

 それに気がついた俺は居ても立ってもいられなくなり、こうして工房に籠もることになった。もちろん心は未知の探求にワクワクしている。

 俺が工房でイソイソと魔方陣の準備をしていると、リリアが監視にやって来た。ご苦労様です。

「今度は何を始めるつもりなの?」
「ほら、さっき言ってた、離れていても会話ができる魔道具の開発だよ」
「本当にそんなことできるの?」

 なおも疑うリリアに俺は今回の計画を話した。これには当然リリアは驚いた。

「まさか転移の魔方陣なんてものが存在していたなんて。これが世に知れ渡ったら大変なことになるわよ」
「大丈夫だよ。声以外の文字は公開する気はないからな。どう頑張っても、声以外を遠くに届けることはできないよ。何せ、描き込む要素が多すぎるからな……」

 それもそうかと、リリアはうなずいた。俺がその要素のいくつかを紹介したら、それは無理だと納得してくれた。

 リリアの監視の下、まずは声だけ転移する魔方陣を作成した。これの大きさ次第で、魔道具のデザインを決めることになる。
 でき上がった魔方陣はスマートフォンくらいのサイズになった。声だけでこの大きさ。全要素を詰め込んだら、一体どれくらいの大きさになるのか。

 しかもこの魔方陣は、己の器用さにものを言わせて極限まで小さく描いている。一般的なサイズで描こうとすると数倍の大きさになるだろう。

 ひとまずはこの魔方陣を二つ用意し、リリアと通信試験をすることにした。
 まずは両方の魔方陣を魔力でリンクさせる。この魔力をリンクさせたもの同士でのみ、声を転送することができる。

「それじゃ、リリア、これを持っていてくれ。俺が向こうから小声で話しかけるから、聞こえるかどうかチェックしてくれ」
「え? わ、分かったわ」

 俺は前世で遠距離通信については経験があるが、リリアは初体験。戸惑うのも無理はないか。大丈夫だよ、とリリアに笑いかけてから、部屋の隅へと移動した。
 さっそくボソボソと小声で話しかける。

「すごい! どうなってるの、これ」

 リリアが部屋の隅にまで届く音量で叫んだ。どうやら俺の声は向こうへと届いたようである。

「次はリリアの方から話かけてみてくれ。魔力をその魔方陣に込めて話しかけるだけでいいからな」

 向こうで、リリアがコクコクとうなずく姿が見えた。しばらくすると、手元の魔方陣からリリアの澄んだ声が聞こえてくる。

「あーあー、聞こえてますかー?」
「おう、バッチリ聞こえているぞ」
「返事が聞こえてきたわ!」

 いや、リリアさん。そこで叫んだら、部屋の隅に居ても聞こえるからね。驚くのは分かるけど、試験としてはイマイチだからね?
 そんなやり取りを繰り返して試験を終えた。問題ないようである。

 取りあえずは試作品なので、魔方陣が入るくらいの大きさの金属製のケースを作った。声が伝わり安いように、一部には小さな穴を開けてある。見た感じ、トランシーバーである。アンテナはないが。

「これでひとまずは完成だな。ここのボタンを押している間だけ、話すことができる仕組みになっている。名前は、そうだな、「リンクコンテナ」にしようかな」
「ここに小さな魔石を入れられるようになっているのね。これなら魔力がない人でも使うことができるわね」

 リリアもさすがに興味を示してくれたようで、リンクコンテナを色々な角度から確認していた。

「でもこれって、どうやって相手が気づくようになっているの?」
「フッフッフ、リリア、そいつをしっかりと握っておいてくれよ」

 そう言うと、リリアが持っているものと対になっているリンクコンテナに魔力を流した。ブルブル、という小さな振動音がリリアの手元から聞こえてきた。

「何これ、気持ち悪い!」

 リリアは今にも投げ出しそうな感じでリンクコンテナを手のひらの上にのせている。

「おい、投げ捨てるなよ! その状態でさっきのボタンを押すんだ」

 リリアがボタンを押すと、振動は止まった。そしてリリアの持つリンクコンテナから俺の声が聞こえてきた。

「ハロー、ハロー」
「……なるほど。こんな仕組みになっているのね。ところで、ハローって?」
「あっちの言葉でこんにちわって意味だよ」
「そうなのね。それにしても、さっきリンクコンテナが震えたのも魔方陣の一種なの?」
「その通り。震える魔方陣を追加しておいたのさ」
「その魔方陣、本来は何に使うつもりだったのかしらね」

 あきれた様子でリリアがつぶやいた。確かにそうかも知れないな。何に使うか分からない魔方陣は数多くあるようだ。使うがわとしては色々と工夫のやりがいがあってうれしい限りなんだがな。

「さて、取りあえず試作品は完成でいいかな。あとは使ってみてから、調整していくことにしよう」
「アベルとマリアが見たら、きっと驚くわよ。でもこれは、今のところは様子を見ておいた方が良いかも知れないわ」

 リリアが心配そうに眉をひそめた。同感だな。もっと他の人からの意見を聞いてから公表するかどうかを決めることにしよう。

「分かったよ。今のところはこの二つだけにしておくよ」

 俺の言葉にひとまず納得してくれた様子のリリアを促して自室へと戻った。
 明日からはミスリルの剣の作成に入る。昼間はまた、リリアを置いてけぼりにすることになってしまう。何だか悪い気がしてならないな。
 それなら、せめて夜くらいはしっかりと二人っきりの時間を過ごすことにするかな。
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