伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~

えながゆうき

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第四章

黒幕

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 穴から出てきたエンシェント・エルフたちの手には、例の魔法銃もどきが握られていた。見たところ、マスケット銃のような形をしている。筒の部分が長いのだ。
 しかし、全員分はないようであり、持っているのは四人ほどであった。

 エンシェント・エルフはどれも同じような見た目をしていた。全員が随分と年を取っており、シワだらけの顔に、やせ細った体をしてる。身につけている服も随分とくたびれたものだった。
 どうやら全員がもれなく高齢者のようである。子孫は残せそうにないな。

「代表者はいないのかね?」

 ベンジャミンが再び訪ねたとき、エンシェント・エルフの持つ魔道具がこちらに向けられた。
 とっさに隊長がベンジャミンの前に立ち、防御態勢を取った。他の捜索部隊のメンバーもそれに続く。

 エンシェント・エルフが引き金を引いた、そのとき。

「ウインド・シールド!」
「風遁、暴風防壁!」

 目の前に風の盾と壁が立ち塞がり、放たれた魔力の弾をはじき返した。

「な、何だと!?」
「なぜアイツらは魔法が使えるんだ!?」

 驚きを隠せず、口を閉じることも忘れてエンシェント・エルフが騒ぎだした。
 もちろんこちらの陣営も騒ぎだした。

「り、リリアちゃん、ダナイちゃん、あなたたち、何で魔法が使えるの?」

 どうやらエリザは魔法が本当に使えないのか試したようである。そして、「やっぱり使えない」と結論付けたのだろう。

「いやぁ、まぁ、こんなこともあろうかと思いましてね? なぁ、リリア?」
「ええ、そうね。秘密よ、秘密」

 オーケー、リリア。この件についてはこれ以上話さないことにしよう。俺たちが話している間に、マリアは攻撃を開始していた。

 腰のホルダーから魔法銃を引き抜くと、あっという間にエンシェント・エルフが持っていた魔道具を撃ち抜いた。
 無残にも、マスケット銃は真っ二つに折れていた。あんな細いところを正確に撃ち抜くとは、どうやらマリアの腕はとんでもないことになっているらしい。

「ま、まさか、同じ魔法筒だと!?」
「バカな、あれは連続では使えないはずだぞ」

 ザワザワとその場が騒然となっていく。これでエンシェント・エルフの武器は無くなった。安全に交渉ができるはずだ。
 
「一つ教えてもらいたい。病原体をまいたのはあなたたちですか? そのような技術を持っているとは、とても思えないのですが」

 静かに、しかし、聞く者によっては恐ろしい響きを持った声が聞こえてきた。こりゃ、ベンジャミンは怒らせてはいけないタイプの人間だな。

「な、なぜそれを!?」
「だから言ったのだ。この間きた連中は我々を調べにきたのだ、とな」
「そんなはずはない。あれをまいたのは使い魔だぞ。私たちまでたどり着けるはずはない」

 どうやら口げんかを始めたようである。そしてどうやら彼らが黒幕だったようである。
 しかしこれがエルフ族の祖先だとは、ちょっとガッカリだな。

「なぜそのようなことをした?」
「知れたことよ。我らエンシェント・エルフの栄光を取り戻すためだ」
「しかり! 魔法も使えぬ出来損ないを駆逐し、我らがこの世界の神になるのだ」

 何を言っているんだ、こいつらは。何かヤバい思想を植え付けられているようである。絶滅寸前まで追い詰められて、どうかしてしまったのだろうか?

 と、残念な人を見るような目で見ていると、その内の一人が何やら怪しい動きをしていることに気がついた。

「おい、後ろのアンタ。何をするつもりなんだ?」

 俺の言葉に、その人物に一斉にみんなの視線が集まった。

「長老? 一体何をするつもりなんですか? 長老からも、我らのことを理解せぬ愚か者どもに、何か言ってやって下さいよ」

 どうやらこいつが、このエンシェント・エルフたちを取りまとめている人物のようである。
 長老は、フウ、と息をはいた。

「愚か者はお前たちだ。なぜヤツらの質問に答えるのか。口を開くなと言っておいたはずだぞ」

 長老がそう言うと、突然、先ほど口を挟んだエンシェント・エルフが喉元を押さえて苦しみだした。

「お、おい、どうした!? しっかりしろ!」

 他のエンシェント・エルフも駆け寄ったが、どうにもならないようである。それもそうか。あちらも魔法が使えないはずだからな。……なら何で、長老は使えたんだ? いや、もしかして、魔法じゃなかったりするのか?

 その異様な様子に、ベンジャミンたちも気がついたようだ。先ほどよりも険しい表情になっている。

「何者だ、お前は」

 ベンジャミンの問いに長老は静かに笑った。

「エンシェント・エルフの頭に蓄積された知識は目を見張るものがあったが、それ以外はまったく使い物にならなかったな」

 吐き捨てるように言う長老。その様子に、エンシェント・エルフたちもいつもの長老ではないことに気がついたようである。

「おい、お前。本物の長老をどこへやった?」

 クックックと笑う長老。

「こいつがそうだよ。もっとも、すでに意識はないがね」
「まさか、長老の体を乗っ取ったのか!? 何者なんだ!」

 驚いた他のエンシェント・エルフたちはその場から大きく下がった。

「こいつの知識を使って病原体を作り出すまでは良かったんだがなぁ。うまくエンシェント・エルフを隠れみのにできると思ったんだが、とんだ誤算だったな。まさかこれほどマヌケなヤツらだったとはな」

 長老が黒い霧に包まれたと思ったら、コウモリのような羽を持つ、真っ黒な人型のゴーストがいた。
 本来顔があるべき場所には何もなく、のっぺらぼうである。

 それを見たリリアとマリアとエリザが俺にしがみついてきた。まぁ、分からんでもない。不気味だもんな。
 そんな黒いヤツは、冥土の土産なのか何なのか、自分語りを始めた。

「俺は魔王に仕える四天王の一人だ。エンシェント・エルフどもを使って世界に混乱を巻き起こすはずだったのだが……どうやら使い者にならなかったようだ」
「四天王……だと!? エンシェント・エルフの繁栄を取り戻す布石というのはウソだったのか!」
「いや、それ以前に長老はすでに亡くなっていたのだ。すべてがデタラメだったのだろう」

 突然の黒幕宣言に、場の空気は一気に変わった。
 エンシェント・エルフたちは完全に戦意を喪失しており、その場でガックリとうなだれている。
 俺たちの方は、いきなり現れた四天王に驚きを隠せなかった。

 魔王に仕える四天王だって? そんなヤツらが本当にいるのか?

 ……うん。いないな。アイツが言っていることは、「自称魔王軍四天王」のようである。その妄想は一体どこから出てきたんだ。だから名乗りを上げなかったのか。
 本物が出てきたら、利権の問題とかでもめそうだもんな。

「お前は、魔族なのか?」
「その通りだよ」

 何が面白いのか、クックと笑う自称四天王。魔族はどうやらゴーストの上位互換のようである。色が白から黒になっているだけのようである。弱点もゴーストと同じらしい。

 自称四天王の魔族宣言に動揺が見られた。どうやらこの世界の住人には危険な存在として認識されているようである。このままこの空気に飲まれるとまずいかも知れない。

「それで、自称四天王様は何をなさるおつもりで? まさか、我ら勇者様ご一行と戦うおつもりですかな?」

 目には目をウソにはウソを、である。
 俺の勇者宣言に明らかにうろたえる自称四天王。良いのかそれで。そんなんでよく四天王を名乗ろうと思ったな。
 こりゃきっと、アイツは四天王でも最弱だな。

「ゆ、勇者……だと?」
「そう。勇者だ。自称四天王のアンタとは違うのだよ!」

 まぁ、こちらも自称勇者様ご一行なんですけどね! バレなきゃウソにはならない。
 そんなことよりも、今はこちらの体勢を立て直すのが大事だ。それができれば後は何とでもなるだろう。
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